情報フロンティア学部 心理科学科

渡邊伸行 研究室

WATANABE Nobuyuki
LABORATORY

コミュニケーションに関わる人のこころの働き

人と人、人と機械のコミュニケーションにおけるこころの働きについて、主に認知心理学実験や感性評価の手法を用いて検討しています。私たちは人と接する際、相手の顔を見て、その人のプロフィールや感情などを把握します。機械(PCやスマホも含む)を操作する際、使い方がわからなかったり、機械の反応が遅いと、私たちはイライラしたりします。日常のコミュニケーションで経験する身近な疑問に焦点を当て、研究しています。

キーワード

  • コミュニケーション
  • 感情
  • ヒューマンインタフェース
  • 似顔絵捜査

研究紹介

RESEARCH

顔面表情認知過程の実験心理学的検討

研究内容

私たちは相手の顔を見て、「笑っている」、「怒っている」など感情を判断します。人が他者の顔からどのような情報を知覚し、その情報に基づいてどのように感情を判断するのか、という表情認知過程について、主に認知心理学実験を通して検討しています。最近では、顔以外のしぐさ、姿勢、服装、などといった、顔以外の表情認知に関わる情報 (文脈情報) に着目し、そういった情報が表情認知にどのような影響を及ぼすのか、ということを検討しています。

顔の感性評価

研究内容

顔は、その人に関する様々な情報の提示装置としての役割を担っています。私たちは顔を見て、その人が誰であるかを判断します。相手が知らない人である場合は、その人の性別、年齢、国籍などを顔から判断します。時には「怖そう」とか「やさしそう」といった性格を推測します。また髪型や髪の色、化粧、メガネなどで、私たちは自分の顔を演出することができます。さらに、他者の顔に表れる表情を見て、その人の感情や反応を伺ったり、時には嘘を見抜くこともあります。以上のように、私たちは他者と顔を合わせることで、お互いの顔から様々な情報を読み取り、円滑なコミュニケーションを行うことができます。

本研究室では、感性評価の手法を用いて、顔の情報を可視化・定量化する試みを行っています。主に4年生のプロジェクトデザインⅢ (卒業研究) で、様々な顔の画像を撮影し、その画像から何が読み取れるか、主にセマンティック・ディファレンシャル (SD) 法を用いて検討しています。これまで4年生や大学院生と取り組んだ研究では、笑顔、目の細さ、涙袋、カラーコンタクトレンズ、前髪、髪型、就活メイク、ヴィジュアル系バンドのメイク、求心顔と遠心顔、などなど、様々な顔画像を作成し、顔の物理的な変化によって、見た目のどのように変化し、またそれが見る側の心理にどのような影響を与えるか、ということを検討してきました。

似顔絵捜査におけるコミュニケーションの検討

研究内容

警察の捜査手法の一つである、似顔絵捜査に焦点を当てた研究を行っています。実際の似顔絵捜査において、目撃者は目撃した顔の特徴を言葉で伝えます。似顔絵捜査員は目撃者の証言に基づいて、似顔絵を描き上げます。簡単に説明すると以上のようになりますが、実際はとても大変な作業です。他者の顔の特徴を、言葉で伝えるのは、とても難しい作業です (家族や友達、恋人の顔の特徴、言葉で説明できますか?)。また、一瞬だけ顔を目撃したとして、その顔をどの程度、正確に覚えていられるでしょうか。実際に似顔絵捜査員に説明しているうちに、顔の記憶も変わってしまう恐れがあります。似顔絵捜査員は以上のことを踏まえ、目撃者からの顔の情報の聞き出し方や、似顔絵の表現の仕方など、様々な工夫をしながら、目の前にいない人物の似顔絵を描こうとするのです。

石川県警察の似顔絵捜査官の方々にご協力いただいて、捜査用似顔絵を描く過程で、どのようなコミュニケーションが行われているか、検討を行っています。人の顔の特徴を言語化する過程について検討することで、私たちは顔をどのように記憶しているか、それをどのように言葉で表現するか、という顔の記憶に関わる研究を行うことができます。一方で、どのような質問の仕方、あるいはどのような表現の仕方であれば、顔の特徴を共有できるか、など、似顔絵捜査に役立つ知見も見出していきます。

SNSにおけるコミュニケーション

研究内容

SNS (Social Networking Service) のお陰で、私たちは他者と顔を合わせなくても、容易にコミュニケーションを取ることができるようになっています。顔が見えないSNSでは、文字だけでコミュニケーションを行っていると、自分の意図とは違う伝わり方をしてしまうなど、誤解が生じることがあります。それを防ぐために、私たちは顔文字、絵文字、スタンプなど、顔の代わりとなるような非言語情報を加えることで、自分の気持ちや考えを他者に誤解なく伝えようとします。

顔の見えないコミュニケーションであるSNSに焦点を当てた研究にも、取り組んでいます。顔文字や絵文字、ユーザのアイコン画像が、メッセージにどのような意味を加え、それがユーザにどのような印象を与えるか、といった研究を行っています。

教員紹介

TEACHERS

渡邊伸行  教授・博士(心理学)

略歴

1996年
3月
埼玉県立川口北高等学校 卒業

2001年
3月
日本大学 文理学部 心理学科 卒業

2003年
3月
日本大学大学院 文学研究科 心理学専攻 博士前期課程 修了

2006年
3月
日本大学大学院 文学研究科 心理学専攻 博士後期課程 修了

2006年
4月
日本大学文理学部 情報科学研究所 ポスト・ドクター(PD) 

2008年
4月
金沢工業大学 感動デザイン工学研究所 特別研究員(KIT-PD) 

2009年
4月
金沢工業大学 情報学部 情報フロンティア系 心理情報学科 講師 

2012年
4月
金沢工業大学 情報フロンティア学部 情報フロンティア系 心理情報学科 講師 

2016年
4月
金沢工業大学 情報フロンティア学部 情報フロンティア系 心理情報学科 准教授 

2018年
4月
金沢工業大学 情報フロンティア学部 心理科学科 准教授 

2021年
4月
金沢工業大学 情報フロンティア学部 心理科学科 教授 

専門分野

専門:顔認知、似顔絵捜査、ヒューマンインタフェース、表情

学生へのメッセージ

学生の皆さんに大学4年間で身につけてほしいのは、「相手の立場で考える」という視点です。ものづくりに関する国際標準化 (ISO) 規格の中に、「人間中心設計 (Human Centered Design (HCD)」という考え方があります。ものを使うユーザ (人間) の立場で、どのような仕様にすると使いやすく、誤り (エラー) を防げるか、ということを配慮した設計を指します。そういう設計を実践するには、人の五感の特性、知覚、学習、記憶、といった、人のこころの働きについて理解しておく必要があります。ものづくりに限らず、日常生活においても、どのように情報を伝えれば、相手に誤解を与えないか、あるいは相手に不快な思いをさせないか、といった配慮をすると、コミュニケーションはより円滑なものになります。心理学を学んで、人のこころの働きの理解を深め、「相手の立場で考える」という視点を身につけましょう。そのお手伝いを、授業やゼミを通してしていきます。

担当科目

プロジェクトデザイン入門(実験)(心理科学科)  専門教養特別科目(心理学入門)  心理科学専門実験・演習B  進路セミナーⅠ  プロジェクトデザインⅢ(渡邊伸行研究室)  実践ウェルビーイング  プロジェクトデザイン実践(実験)(心理科学科)  感情・人格心理学  進路セミナーⅡ  情報デザイン研究(渡邊伸行)  認知・感情心理学特論  

オリジナルコンテンツ

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