建築学部 建築学科

西村督 研究室

NISHIMURA Toku
LABORATORY

構造物が崩壊するメカニズムと合理的な形態と動きを探求

構造物が崩壊するメカニズムを研究しています。現代的な空間構造や伝統的木造建築物を対象に、どのような条件で建物が安定性を失うかを調べ、建物が崩壊する仕組みを明らかにします。また、自然界に存在する動植物の形態や動きを学び、力学的に合理的な形態を生成する方法や構造体の形状が大きく変化する施工過程を想定し、指定した位置に形状を制御する方法の研究にも取り組んでいます。

キーワード

  • 空間構造
  • 建物が崩壊する仕組み
  • 形と力と動きのデザイン

研究紹介

RESEARCH

衝撃力を受ける置屋根支承部の損傷解析

研究内容

鉄骨屋根の屋内運動場が近年の地震で、屋根トラス部材の座屈、接合部の破断、支承部下のRC梁の側方破壊、支承部アンカーボルトの破断が生じている。損傷の原因は、地震時に屋根が許容変位を超え、アンカーボルトとベースプレートが衝突し、想定していない力が支承部およびその近傍の部材に生じたためである。
本研究テーマは、支承部が衝撃力を受けた際、アンカーボルトの破断、コンクリートの破砕を考慮した損傷解析に取り組む。
【研究報告】
■西村督, 矢沢諒平,:既存置屋根式トラス支承部の損傷防止を目的とする粘性系ダンパーの配置 その1 被災状況と地震応答解析, 日本建築学会大会学術講演梗概集, 構造Ⅰ, pp.779-780, 2020.9
■矢沢諒平, 西村督:鉄骨置屋根支承部の地震時応答に関するモデル化, 構造工学論文集,Vol.67B, pp.161-172, 2021.3
■西村督,矢沢諒平:地震時応答における置屋根支承部のアンカーボルトとベースプレートとの衝突解析, 日本建築学会北陸支部研究報告, 第64号, pp.77-80, 2021.7

最適化手法による既存置屋根支承部の損傷防止を目的とする粘弾性ダンパーの配置計画

研究内容

鉄骨屋根の屋内運動場が近年の地震で、屋根トラス部材の座屈、接合部の破断、支承部下のRC梁の側方破壊、支承部アンカーボルトの破断が生じている。損傷の原因は、地震時に屋根が許容変位を超え、アンカーボルトとベースプレートが衝突し、想定していない力が支承部およびその近傍の部材に生じたためである。
本研究テーマは、最適化手法を用いて屋根架構の損傷を防止する粘弾性ダンパーの配置を検討する。
【研究報告】
■矢沢諒平, 西村督:最適化手法による鉄骨置屋根支承部の地震時応答制御を目的とした粘性系ダンパーの配置, 日本建築学会北陸支部研究報告集, 第64号, pp.81-84, 2021.7
■矢沢諒平, 西村督:既存置屋根式トラス支承部の損傷防止を目的とする粘性系ダンパーの配置 その2 ダンパーの配置計画, 日本建築学会大会学術講演梗概集, 構造Ⅰ, pp.781-782, 2020.9
■矢沢諒平, 西村督:既存置屋根式トラス屋根支承部の損傷防止を目的とする粘性ダンパーの配置計画, 日本建築学会北陸支部研究報告集, 第63号, pp.28-35, 2020.7

風外力を受ける空気膜構造の動的挙動

研究内容

軽量な膜構造の中でも空気膜構造は、内圧によって剛性を確保し、形状を維持する構造である。設定用外力レベルを超える強風を受けた場合、膜構造は大きく変形し、その変形に伴って外力分布が変動する可能性を有する。
構造体の変形によって外力分布が変化する場合、構造全体が安定性を失う限界外力レベルと内圧との関係を調査する。
【研究報告】
■無量井秀敏, 西村督:変形に依存する風圧分布を考慮した変動風圧下での空気膜構造の動的応答性状, 日本建築学会北陸支部研究報告集, 第61号, pp.42-45, 2018.7

AI手法によるテンセグリティー構造、展開構造の形状制御

研究内容

テンセグリティー構造は初期応力により、剛性を確保し圧縮材同士が接合されていないという特徴を有する。この構造は動物の骨格(圧縮抵抗要素)と筋肉(引張抵抗要素)の構成、骨格間の接合方法と共通点を有することがBiomechanicsの研究分野で示されている。テンセグリティー構造は空間を構築する構造システムだけでなく、動く構造として適切な構造システムと考えられる。形状制御のパラメータを材長とすると材長の変化に伴い、軸力も変化するが引張材が弛緩すると剛性が急激に低下し不安定状態に、更に崩壊してしまう場合がありうる。
本プロジェクトでは構成要素の材長を変化させ、安全で合理的にテンセグリティー構造の形状を指定した位置に移動するための形状制御法をAI手法を応用して検討する。

可展機構を有する展開構造は、収納時に小さく折りたたみ、運搬が容易で、速やかに空間を構築することが可能である。展開時において部材に伸びが生じない変位を剛体変位という。展開構造に剛体変位モードが存在する時は、弾性変形を生じることなく折りたたみが可能である。折りたたみ過程で剛体変位モードの数が変化する運動学的分岐(kinematic bifurcation)が現れることがある。種々の展開後形状を有する展開構造を設計するために、運動学的分岐点が折りたたみ過程のどこで現れるか、また運動学的分岐点後に現れる複数の折りたたみ過程を把握すること重要である。本プロジェクトでは折りたたみ過程に存在する運動学的分岐点を予測し、その後の展開過程を追跡する手法をAI手法を応用して検討する。
【研究報告】
■福森郁斗, 西村督:ポテンシャル法による脊椎型テンセグリティー構造の障害物を回避する形状制御, 構造工学論文集, Vol.69B,pp.190-202,2023.
■I.Hukumori, T.Nishimura, C.L. Oh, K.K. Choong, J.-Y. Kim : Shape control of tensegrity model mimicking human spine by the potential method, Proceedings of the IASS 2022 Symposium affiliated with APCS 2022 conference, "Innovation Sustainability Legacy", pp.2173-2184, 2022.9
■Oh Chai Lian, Kok Keong Choong, Toku Nishimura, Jae-Yeol Kim: Multi-Directional Shape Change Analysis of Biotensegrity Model Mimicking Human Spine Curvature, Applied Sciences, Vol.12, No.5, 2377, 2022. https://doi.org/10.3390/app12052377
■Chai Lian Oh, Kok Keong Choong, Toku Nishimura, Jae-Yeol Kim, Omid Hassanshahi: Shape change analysis of tensegrity models, Latin American Journal of Solids and Structures, Vol.16, No.7, e221, 2019. https://doi.org/10.1590/1679-78255407
■T. Nishimura, S. Honda and M. Takayama: Random Search of Folding Path in Developable Structures, IASS-APCS 2012 Proceedings From Spatial Structures to Space Structures, CD-ROM (FF-078), 2012.5

テンセグリティー構造の地震時応答の推定法と耐震設計

研究内容

テンセグリティー構造は自己釣合応力と呼ばれる初期軸力で安定に形状を維持する張力構造である。地震動を受けたとき、テンセグリティー構造の張力材が緩むと、緩んだ部材の剛性が消失し、振動時の固有周期が変化する。固有周期から地震時応答を簡易に推定する方法としてモーダル解析がある。振動時に周期が変化する構造にモーダル解析を適用し地震時最大応答を推定し、変位、応力等の制約条件を満足するテンセグリティー構造の初期軸力設定を検討する。
【研究報告】
■Chai Lian Oh, Kok Keong Choong, Toku Nishimura, Jae-Yeol Kim: Form-Finding of Spine Inspired Biotensegrity Model, Applied Sciences, Vol.10, No.18, 6344, 2020. https://doi.org/10.3390/app10186344

過大な積雪による既存木造建築物の倒壊を想定した接合部耐力の解析と補強法

研究内容

積雪により鉄骨構造や木質構造の軽量構造の倒壊が報告されている。平成18年豪雪で倒壊した木造建物の倒壊原因を検討した結果、建物が捩れ座屈した可能性が報告されている。また梁の割裂破壊が座屈耐力の低下を助長したと指摘されている。
本テーマは木造建築物の柱のねじれや梁の割裂を予測するための解析モデルを考える。
また、梁の割裂破壊の進行を抑制する補強法を検討する。
【研究報告】
■西村督, 池本俊一, 後藤正美:過大な積雪荷重による木造建築物の倒壊挙動に関する考察, 日本建築学会構造系論文集, 第77巻, 第672号, pp.239-248, 2012.2
■西村督, 後藤正美:ほぞの長さをパラメータとしたほぞ仕口の捩り剛性と耐力評価に関する実験, 日本建築学会大会学術講演梗概集, C-1分冊, pp.401-402, 2014.9
■後藤正美, 西村督:蟻仕口の脆性破壊を防止する既存木造家屋の耐雪補強, 日本建築学会大会学術講演梗概集, 構造Ⅲ, pp.169-170, 2015.9
■西村督, 後藤正美:FRPシートを用いた小屋梁のせん断補強に関する載荷実験, 日本建築学会北陸支部研究報告集, 第59号, pp.671-674, 2016.7
■西村督, 後藤正美:FRPシートによる腰掛兜蟻仕口のせん断補強に関する考察, 日本建築学会大会学術講演梗概集, 構造Ⅲ, pp.83-84, 2016.8

BIMソフトと連携した伝統木造建築物の地震時応答評価

研究内容

伝統木造建築物の耐震性能を評価する際、線材、面材、接合部の剛性・耐力評価が困難な場合がある。例えば合掌造りでは木組みだけでなく、縄による部材間接合が存在する。建築設計で作成される3Dモデルと管理情報のデータベースから、耐震性能評価に必要な構造解析用データの作成が望まれる。
本テーマでは対象建築物を伝統木造合掌建物とし、地震時応答を評価するためのBIMデータの構築するとともに、BIMデータと構造解析ソフトとの連携方法を検討する。
【研究報告】
■浅野泰樹, 後藤正美, 西村督:南砺市合掌造りの耐震性能評価に関する研究 -その1 板壁及びはねがい壁の静的加力実験-, 日本建築学会大会学術講演梗概集, 構造Ⅲ, pp.379-380, 2021.9

強震動を受ける伝統木造建築物の限界状態における数理構造の解明

研究内容

近年の北信越地方で強震を受けて損傷、倒壊した伝統的木造建物が報告されています。その倒壊には、安定性を喪失する限界状態が起因していると考えられます。これまでに水平調和地動を受ける柱単体の実験、解析を行い、転倒と鉛直軸回りの回転運動が現れること、その発生原因が定常応答の臨界現象という仮説を提示しました。本研究では、その仮説の下で水平動を受ける伝統的木造架構を対象に、
(1)限界状態の数理構造を把握するための力学モデルの構築
(2)倒壊限界を予測する基礎理論の展開
(3)数理構造の妥当性を検証するための数値シミュレーション技術の開発
を実施します。
【研究報告】
■T.Nishimura: A Fundamental Experiment and Numerical Analysis on the Oscillations of a Cylindrical Column Subjected to Horizontal Harmonic Excitations, Proceedings of IASS Symposium: “Shell and Spatial Structures: Structural Architecture - Towards the future looking to the past”, IASS, CD-ROM(ID176), 2007.
■T.Nishimura: A Fundamental Study on the Nonlinear Behaviors of Rectangular Columns under Horizontal Harmonic Ground Excitations, Proceedings of the 9th Asian Pacific Conference on Shell and Spatial Structures, IASS, CD-ROM(APCS09-P0020), 2009.5
■T.Nishimura: A Bifurcation Phenomenon on the Oscillations of Columns Subjected to Horizontal Harmonic Ground Excitations, Proceedings of IASS Symposium: "Spatial Structures - ; Temporary and Permanent," IASS, CD-ROM (pp.1825-1824), 2010.11

空間構造の非線形問題に関する臨界点解析

研究内容

空間構造の形状は力の釣合、境界条件と関係します。石鹸膜の形状は境界条件に対して膜内の歪エネルギーを最小化する曲面(等張力曲面)、膜面積を最小化する曲面(極小曲面)を形成します。境界条件を満足する可能な曲面の集合にエネルギーや面積を対応させる汎関数の停留点は臨界点となります。また、折りたたみ機構を有する展開構造は展開過程で複数の展開経路が可能となる臨界形状(Critical Form)が現れることがあります。これら空間構造の非線形問題に表れる臨界点の性質を解析するテーマです。
【研究報告】
■西村督:非保存系の臨界挙動解析における動的安定限界の条件, 日本建築学会北陸支部研究報告集, 第47号, pp.24-27, 2004.7
■T.Nishimura: A Numerical Strategy for Predicting Dynamic Stable Limit in Non-Conservative Systems Using a Perturbation Procedure, Proceedings of IASS Symposium APCS Conference New Olympics New Shell and Spatial Structures, IASS, 2006.10
■西村督:増分摂動法を用いた固有経路の追跡および複素分岐点の予測手法, 日本建築学会大会学術講演梗概集, B-1, pp.349-350, 2004.8
■西村督, 山中郁美:擬似焼きなまし法を用いた膜曲面の極小曲面探索法, 第37回情報・システム・利用・技術シンポジウム論文集(論文), pp.85-90, 2014.12
■刀根一将, 西村督:トンネル法を用いた極小曲面探索法, 日本建築学会第41回情報・システム・利用・技術シンポジウム論文集(論文), pp.200-205, 2018.12
■T. Nishimura and N. Shirai: A perturbation procedure for prediction of bifurcation points on kinematic path, Proceedings of the IASS Annual Symposium 2016 “Spatial Structures in the 21st Century”, CS4G-5, ID 1230, 2016.9

空間構造の作品制作とデザインコンテストの参加

研究内容

■学内プロジェクト金澤月見光路にて空間構造の作品制作を行います。
■2017年度は上記の日本建築学会 形態創生コンテストに応募し全国入選作品に選出されました。
■機会があれば空間構造の現場見学会に参加します。

教員紹介

TEACHERS

西村督  教授・博士(学術)

略歴

1983年
3月
石川県立 金沢錦丘高等学校 卒業

1987年
3月
金沢工業大学 工学部 建築学科 卒業

1989年
3月
京都工芸繊維大学大学院 工芸学研究科 建築学専攻 修士課程 修了

1992年
3月
京都工芸繊維大学大学院 工芸科学研究科 機能科学専攻 博士課程 満期退学

1992年
3月
太陽工業株式会社 空間技術研究所 

1995年
4月
太陽工業株式会社 空間建築事業部 空間設計部  

2002年
7月
太陽工業株式会社 空間デザインカンパニー 大阪設計部 

2003年
1月
太陽工業株式会社 産業施設カンパニー 

2003年
4月
金沢工業大学 講師 

2007年
4月
金沢工業大学 環境・建築学部 建築系 建築学科 准教授 

2013年
4月
金沢工業大学 環境・建築学部 建築系 建築学科 教授 

2018年
4月
金沢工業大学 建築学部 建築学科 教授 

専門分野

専門:空間構造、数値解析、非線形問題、弾塑性解析、臨界点

学生へのメッセージ

■建築の各分野(意匠・計画・歴史、環境・設備、構造、施工)を偏りなく学ぼう。
■建築を学ぶ上で、自然の仕組みや地球環境、芸術、政治・経済を勉強することを奨めます。
■既存の建物だけでなく、建設途中の建物も見て、どのようにして建物が造られてゆくかを勉強すると有意義です。
■デッサン(素描)の能力は大切です。

担当科目

鉄骨構造  建築エンジニアリング総合演習A  進路セミナーⅠ  プロジェクトデザインⅢ(西村督研究室)  建築構造計画  建築構造設計  建築安全工学  建築エンジニアリング総合演習B  専門ゼミ(建築学科)  進路セミナーⅡ  建築構造研究(西村 督)  建築構造解析特論  建築構造設計演習  

オリジナルコンテンツ

ORIGINAL CONTENTS