工学部 航空システム工学科

廣光永兆 研究室

HIROMITSU Nagayoshi
LABORATORY

ジェットエンジンなどの推進系エネルギー変換装置を中心とした性能向上、環境適応性などの課題解決を目指す

本研究室では,航空機の主原動機であるジェットエンジンで生じている燃焼や熱、および音にかかわる諸問題(燃焼性能、燃焼廃棄物、エンジン騒音、エンジン内部の冷却不足etc.)を主題とし、対象の諸問題を解決するために必要な機能は何かについて考え、構成する要素部品の機能を抽出、細分化して一味加えて再構築することによって、新たな機能・価値を創造していくことを目標としています。

キーワード

  • ジェットエンジン
  • 微粒化・混合・燃焼
  • 伝熱・冷却
  • 防音・静音化
  • 環境適合性・高出力化・高効率化

ニュース&トピックス

NEWS & TOPICS

研究紹介

RESEARCH

素反応計算モジュールを組み合わせた仮想一次元燃焼器による最適設計ツールの構築

研究内容

カーボンニュートラルの実現のためには、熱機関の高効率化と低公害化のために燃料の性状に最適化された「燃焼器(化学エネルギーを動力等に利用可能な熱エネルギーに変換する装置)」の開発は非常に重要な課題と言えます。
 特に、カーボンを全く含まない水素やアンモニアなどの燃料は、これまで広く使用されてきた炭化水素燃料と化学反応の種類や速さなどが大きく異なり、燃料を十分に燃やしきるために必要な時間や有害排出物の生成量などがこれまでの燃焼器設計の知見では対応できないことが、非常に多くなっています。
 また、一方で、炭化水素燃料は単位質量あたりの発熱量や密度など、長距離かつ高速の移動のエネルギー源として非常に優秀なため、航空機用途としては、これからも長期にわたり使用し続けられることが予想されています。さらに、バイオ系燃料やe-fuelなど、二酸化炭素排出をキャンセル可能な燃料も登場しており、引き続きこれらの燃料に対応する燃焼器の開発も必要であると考えられます。

 燃焼に関係する現象は複雑かつ多岐にわたり、これまでは実績(データベース)に乏しい後発のメーカや研究機関が付加価値の高い燃焼器の概念設計を独自で行うことは難しい状況でした。しかし、燃焼器の概念設計のアプローチを大きく変え、目標に対して最適な現象の履歴の提案を行い、現象をハード設計に落とし込む方法により、その大きな壁を乗り越えられると考えています。

 本研究では、燃焼器の目標性能に対して、最適な現象の履歴を見出すツールを開発、構築することで、これまでにない性能(価値)を創出可能な燃焼器の原型を提案し、さらにカーボンフリー燃料(水素やアンモニアなど)、バイオ系燃料などの新しい燃料を含む多種多様な燃料群への対応を可能にすることを目標としています。

 具体的には、燃焼器内部で生じる現象の過程を、ラグランジュ的視点によるいくつかのモデル(モジュール)に変換し、それらのモジュールの組換の自由度を向上させることで、様々なパラメータの組み合わせパターン検討が可能なツールの構築を行っています。このツールに、遺伝的アルゴリズムを組み込んだ最適化手法を適用することで、従来のデータベース基準では創出できない燃焼器の提案を行うとともに、機械学習等を利用して、効率的な最適化機能を実装することで、より多様で新時代に適用可能な燃焼器の創出に寄与したいと考えています。

※本研究は、2022年度より科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)の助成を受けて実施しています(JSPS科研費課題番号 JP 22K03970)。また,本研究に使用している素反応計算モジュールには乱流燃焼解析コード「CHARIOT」の機能の一部を利用し、本研究向けのコードの変更についてはJAXA航空技術部門との共同研究の成果を用いています。

高速気流中でのヘルムホルツ吸音構造の圧力損失低減

研究内容

ジェットエンジンの主要騒音は高バイパス化に伴い、「ジェット騒音」から「ファン騒音」に遷移してきています。ファン騒音は減衰しにくい低周波数域の騒音であり、最も大きくなるのが離着陸時の時であるため、近隣住宅に対する騒音の影響が問題視されています。

この「ファン騒音」を低減する取り組みの一つとして、現在のジェットエンジンのファンダクト内には、ヘルムホルツ共鳴の原理を用いた吸音装置(吸音ライナ)が使用されており、10dB以上の高い吸音効果を発揮しています。

一方で、ファンダクト内の壁面には無数の丸い微小な孔が設置されることになり、ターボファンエンジンのバイパス流に対して圧力損失が発生します。バイパス流は高バイパスターボファンエンジンにおける推力となるものであるため、バイパス流への影響の少ない、低圧力損失でかつ高い吸音効果を持つヘルムホルツ型吸音装置の開発が求められています。
 本研究では、ヘルムホルツ共鳴を利用した吸音構造の圧力損失の発生個所や要因を詳細な可視化実験およびCFD解析により特定し、独自の低圧力損失構造の提案を目指します。(JAXAとの共同研究)

音波などの振動を利用した液体微粒化制御と微粒化性能の向上の研究

研究内容

航空エンジンなどに代表される内燃機関では、燃料を効率よく運用するために液体化した燃料を用います。
液体燃料を燃焼器内で燃焼させるためには、微粒化(細かい微粒子にすること)して、気化させながら酸化剤と混合する必要があり、その状態が燃焼状態を左右するため、微粒化状態が燃焼性能の大部分を決めるといっても過言ではありません。
この研究では、燃料の微粒化を任意に制御し、良好な状態を形成するために、音波を中心とした振動のエネルギーを利用する方法を提案することを目的としており、その成果を「燃料噴射弁」という燃焼器の要素に反映することを、目標としています。
主な調査対象は、以下です。
 ○液膜形成への影響
 ○液膜、液柱、液滴分裂への影響
 ○微粒化状態の評価・計測方法の確立

マイクロ波を用いた始動性向上(燃料着火性向上)技術の研究開発

研究内容

本研究では、電磁波(マイクロ波)の特性を利用し、制限の多い航空エンジン内における液体燃料の着火性能を向上させることで、最適な燃焼状態を得られやすくすることを目的としています。
利用するマイクロ波の特性として、以下を検討しています。
 ○金属表面への放射による放電現象の発生
 ○誘電加熱による燃料の昇温

教員紹介

TEACHERS

廣光永兆  教授・博士(工学)

略歴

1986年
3月
愛光高等学校 卒業

1990年
3月
慶應義塾大学 理工学部 機械工学科 卒業

1992年
3月
慶應義塾大学大学院 理工学研究科 機械工学専攻 修士課程 修了

1998年
3月
慶應義塾大学大学院 理工学研究科 機械工学専攻 博士後期課程 修了

1998年
4月
日本学術振興会 特別研究員 

2001年
4月
慶應義塾先端科学技術研究センター 研究員 

2001年
11月
石川島播磨重工業㈱ 

2006年
4月
石川島播磨重工業㈱ 航空宇宙事業本部 技術開発センター 要素技術部 主査 

2007年
4月
石川島播磨重工業㈱ 技術開発本部 基盤技術研究所 熱・流体研究部 主任研究員 

2012年
4月
㈱IHI 航空宇宙事業本部 技術開発センター 要素技術部 主査 

2017年
4月
㈱IHI 航空・宇宙・防衛事業領域 技術開発センター 要素技術部 主査 

2021年
4月
金沢工業大学 工学部 航空システム工学科 教授 

専門分野

専門:騒音低減、ガスタービン、低公害燃焼、微粒化、燃焼

学生へのメッセージ

夢中になってやるとどんなことでも面白くなりますよ!

担当科目

工業力学Ⅰ  熱流体工学  熱流体工学  進路セミナーⅠ  プロジェクトデザインⅢ(廣光永兆研究室)  航空文献調査入門  航空原動機  進路セミナーⅡ  EARTH&SPACE環境機械工学研究(廣光永兆)  ジェットエンジン特論  

オリジナルコンテンツ

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