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強く、軽く、環境にも優しいマイクロセルラープラスチックは夢の新素材


日本で初めてマイクロセルラープラスチックを紹介した新保先生
スーパーでよく見かける刺身や野菜などを入れた軽いトレイ(容器)が発泡プラスチック。プラスチックの内部に気泡を入れてあることで、軽く、かつ断熱性、緩衝性、吸音性、浮揚性に優れていて、様々な分野で使用されている身近な素材だ。だが、これら一般の発泡プラスチックは強度に欠けるのが欠点。それに対して、新保先生が研究しているマイクロセルラープラスチックは、内部に入れる気泡の直径を10ミクロン以下というとても小さなものにすることで、従来の発泡プラスチックにはなかった強度が得られる。「強度のある発泡プラスチックならずっと用途が広がるんですよ。これを使うことで、いろんな製品や構造材が軽量化、小型化できるようになります。しかも気泡をいれてボリュームをだすわけだから、元の材料は少なくてすむので資源節約、省エネルギーになるのです。そして作るための材料が半分でいいということは処理も半分でいいということですから環境にも優しいんです」。しかも、発泡させるためのガスも窒素や石油精製過程で放出される二酸化炭素の再利用などができ、発泡の際に新たな二酸化炭素を放出しないから環境に負荷を与えないという。マイクロセルラープラスチックは、まさに夢の新素材なのだ。新保先生は、マサチューセッツ工科大学留学中にこのマイクロセルラープラスチックに出会い、帰国後、日本で初めて紹介した先駆者である。
現在、新保先生の研究室ではさまざまな発泡プラスチックを作り、その強度や特性を調べている。「学生のアイデアは否定せずになんでもやらせてみます。そこから生まれてくるものもありますから」という新保先生。今後の研究では、発泡プラスチックの理論強度に挑戦していくことに加え、可視光線の波長よりも小さい気泡を入れた成形が可能になれば、透明発泡体、虹色発泡体、発泡繊維などが生まれる可能性もあるとか。画期的新素材の誕生に大いに期待したい。
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