工学部 機械工学科
斉藤博嗣 研究室
「つくる」技術と「こわれる」特性に着目して、構造材料としての繊維強化プラスチックの信頼性向上を目指す
・軽さと強さを併せ持つ複合材料構造をつくる技術と,それに伴う様々な学術的課題に取り組んでいる.
・複合材料構造の破壊挙動とその影響について,実験と数値シミュレーションによる解明に取り組んでいる.
・企業や研究機関との共同研究を積極的に推進している.
・複合材料の研究に取り組む研究室(中田研,田中研)とは合同行事(研究発表会,懇親会など)をおこない,互いに切磋琢磨し,また親睦を深めている.
キーワード
- 複合材料(FRP)
- ものづくり
- 成形
- 破壊
- 信頼性
ニュース&トピックス
- 2024.10.01米国で開催されるSAMPE Student Bridge Contestに2年連続招待出場へ
- 2024.09.10「物語の始まりへ」に天坂恒太さんが紹介されました
- 2024.06.19米国で開催されたCFRPブリッジの世界大会 「SAMPE学生ブリッジコンテスト」で優勝
- 2024.01.11高信頼ものづくり専攻・機械工学専攻チームがIHI/SAMPE Japan学生ブリッジコンテストで優勝
- 2023.05.09高橋和也さんが日本材料学会北陸信越支部支部奨学賞を受賞
- 2023.02.20学生チーム5人が「IHI/SAMPE Japan学生ブリッジコンテスト」で準優勝
- 2022.03.25髙橋和也さんが「日本機械学会 北陸信越支部 2022年合同講演会」で学生賞を受賞
- 2022.03.04「物語の始まりへ」に齋藤拓也さんが紹介されました
- 2022.02.10「IHI/SAMPE Japan学生ブリッジコンテスト」で優勝。参加カテゴリーで3連覇を達成
- 2021.08.25『文藝春秋』2021年9月号の「KITキャンパスレポート」に齋藤拓也さんが紹介されました
- 2020.11.30株式会社IHI・先端材料技術協会 主催の炭素繊維強化プラスチック 学生ブリッジコンテストで優勝
- 2020.10.08大学院高信頼ものづくり専攻の齋藤拓也さんが「第45回複合材料シンポジウム」で「優秀学生賞」を受賞
- 2020.04.07斉藤教授へのインタビューが「小泉成史の金沢工業大学インタビュー」に掲載
- 2020.03.13『文藝春秋』2020年4月号の「KITキャンパスレポート」に片山祐樹さんが紹介されました
- 2018.05.31「物語の始まりへ」に古澤佳樹さんが紹介されました
研究紹介
FRP成形における強化繊維の樹脂浸透性におよぼす影響因子の解明
研究内容
高い強度を持つ繊維と,形状に高い自由度を持つ樹脂で構成される繊維強化プラスチック(FRP)では,繊維の間に樹脂が染み込まなければ,さらには繊維と樹脂が接着しなければ,構造材料としてのFRPとはならない.特に,気泡の混入や,繊維と樹脂のはがれおよび引き抜けは,FRPの特性を著しく低下させる要因となる.そのため,本研究室では,樹脂に対する強化繊維の浸透性におよぼす影響因子の解明とその影響の実験的評価をおこない,FRP成形におけるより効率的な成形条件の確立を目指す.さらに,よりミクロスケールの視点から,繊維およびその表面構造を構成する分子と樹脂の分子の相互作用を考慮した,分子シミュレーションによる繊維/樹脂界面のぬれ性評価をおこない,実験的評価との相関性を検討する.
FRPの繊維/樹脂界面引張強度の実験的評価
研究内容
高い強度を持つ繊維と比較的強度の低い樹脂で構成されるFRPでは,一般に最も強度の低い繊維と樹脂の界面から破壊が生じ,それを起点に層間や層内へと破壊が伝播し,最も強度の高い繊維が破断して最終破壊に至る.そのため,破壊の起点となる繊維/樹脂界面強度の評価は,材料および構造の信頼性を確立する上で不可欠な要素である.一方で,界面せん断強度は実験的な評価法が確立されているものの,界面引張強度は未だ評価法が十分に検討されていない.特に,今後自動車等への適用が期待されている熱可塑性樹脂と炭素繊維の界面引張強度は,十分な評価結果が示されていない.そこで,本研究室では,従来提案されている界面引張強度評価法であるCruciform試験法や,新たな評価法を検討し,様々な材料系における繊維/樹脂界面強度を評価している.
FRPの層間破壊特性におよぼす繊維配向角の影響評価
研究内容
高い強度と剛性を有するFRPは,航空機構造や自動車等に適用が進められている.これらの実構造に用いられるFRPは,一般に一方向にそろえられた強化繊維に樹脂を染み込ませた薄い層状材料を,様々な角度で積み重ねた積層板として利用されている.そのため,積層板の厚さ方向には繊維が通っておらず,層間は比較的低い強度となるため,衝撃などが加わった場合に,層間がはがれる「層間はく離」と呼ばれる破壊現象が生じる.層間はく離は,積層板の圧縮強度を著しく低下させるため,層間のはがれにくさ(=層間破壊じん性)が重要な評価対象となっている.一方,従来の積層板の層間破壊じん性は,一方向材で評価されてきたが,上記のように,実際の構造材料では角層が様々な角度に積み重ねられている.そこで,本研究室では,繊維配向角が異なる層間における層間破壊じん性を実験的に評価し,繊維配向角が層間破壊じん性および破壊メカニズムにおよぼす影響を実験的および解析的に明らかにすることを目指している.
FRP積層板の衝撃破壊進展メカニズムの実験的および解析的アプローチによる解明
研究内容
FRPの内部で発生しうる損傷には,樹脂き裂や層間はく離,繊維/樹脂界面はく離,繊維破断など,数多くの形態が存在し,かつそれらが複合的に生じるため,損傷の発生と進展挙動を予測することは極めて困難である.特にCFRPにわずかに目視可能な程度の小さな衝撃を与えた場合でも,CFRP内部では層間はく離やトランスバースクラックなどの損傷が発生し,これらの損傷はその後の力学特性に影響を与える.過去の研究では衝撃損傷を巨視的に扱う研究が多く,トランスバースクラックや層間はく離といった微視的な損傷形態に着目し,実験的に破壊メカニズムの解明を行っている事例は多くない.そこで本研究室では,衝撃後のCFRP積層板内部の破壊を詳細に観察し,さらに数値シミュレーションと比較することにより,衝撃損傷と層間破壊モードの相関性を明らかにする.
教員紹介
斉藤博嗣 教授・博士(工学)
略歴
専門分野
専門:計算力学、材料力学、損傷力学、複合材料
学生へのメッセージ
軽くて強い繊維強化プラスチック(FRP)というものの存在を大学の講義で聞いたことが最初に現在のFRPに関する研究テーマに興味を持ったきっかけでしたが、航空機や自動車などへ適用が進む一方で、比較的新しい材料として信頼性を確保するために、明らかにすべき多くの課題に取り組むことが現在の大きな方針です。力学、化学、コンピュータ工学などを横断する複合分野として常に新しい知識や技術を取り入れることが求められ、おそらく学生の頃よりも現在の方が勉強することの本質を実感できていると思います。勉強以外にも新しいことに挑戦するのに年齢は関係ないと信じ、自分の子供に負けないようにゲームの腕前を上げることにも挑戦中です。モットーは「責任のある自由」、やるべきことをやっていれば可能な限り制約を設けず、基本的に干渉しない&干渉させない、それが自主性と独立性を確立すると信じています。
担当科目
工業力学Ⅰ 電気基礎 材料力学Ⅰ 材料力学Ⅲ 3Dモデリング プロジェクトデザインⅢ(斉藤博嗣研究室) 機械系製図Ⅱ 材料力学Ⅱ 機械設計統合演習 専門ゼミ(機械工学科) 革新的高信頼複合材料・構造システム基盤研究(斉藤博嗣) 複合材料評価技術 高信頼ものづくり専攻統合特論 複合材料数値計算
研究業績
論文
- 0°/45°層間を有するCFRP積層板におけるカップリング効果の有無がモードⅡ層間破 壊じん性におよぼす影響
- 高信頼・高機能な複合材料構造を実現する材料・成形加工技術の最前線 (D-101~D-108, D-201~D-217)
- Evaluation of effect of surface modification on correlation between permeability and capillary number of glass fiber / resin
- Effects of temperature environment on Mode II interlaminar fracture toughness in asymmetric CFRP
- Experimental evaluation of compressive strength of PAN-based carbon monofilament by Poisson's deformation in Cruciform specimen
- In-situ measurement of permeability between carbon fiber / resin
- Influence of negative Poisson’s ratio on fracture morphologies in CFRP laminates
- 界面強度評価に基づくCFRP直交積層板の破壊メカニズムの実験的および解析的評価
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