工学部 電気エネルギーシステム工学科
藤田洋司・河野昭彦 研究室
FUJITA Yoji & KONO Akihiko
LABORATORY
「蓄電技術リテラシー」:電池の動作を解析し効率的・安全に制御する技術に関する研究
電気自動車や家庭で電気を蓄える(蓄電)ためリチウムイオン電池(LIB)と呼ばれる大容量の高性能電池が使われ始め、将来的に鉄道、エレベータなど幅広い分野で LIBが導入されると考えられる。本研究室では、蓄電システムの基盤である電気工学の視点に立ちつつ電気化学理論をベースに電池の物理化学挙動を捉え、電池を安全・効率的に制御し使いこなす基盤技術の構築を目指す。
キーワード
- 蓄電技術リテラシー
- 蓄電デバイス
- 充放電制御
- 蓄電システム
- 安全性・信頼性技術
研究紹介
RESEARCH
蓄電デバイスモデルに関する研究
研究内容
リチウムイオン電池や鉛蓄電池等の蓄電デバイスは、電子やイオンが関わる化学反応によって充放電を行う精密な化学反応器です。本研究では、各種蓄電デバイスの充放電動作をモデル化し電気回路の中での蓄電デバイスの動作を解析、最終的には蓄電デバイス充放電制御技術や蓄電システム設計技術への展開を狙っています。
蓄電デバイスの過渡応答解析に関する研究
研究内容
電気回路に接続された電池は基本的には直流電源として動作しますが、電池と接続する電気機器から様々な外乱(ノイズ等)を受けます。電池を安全効率的に使いこなすためにはノイズ等のパルス的信号に対して電池がどのように応答し、電池の劣化に繋がる可能性が無いか解析する必要があります。このため化学反応器である電池を等価回路で表現しその過渡応答を解析する方法を研究しています。
蓄電デバイスの安全性・信頼性評価技術に関する研究
研究内容
電池は様々な要因により劣化し信頼性の低下をまねきます。このため電池の劣化と安全性への影響を解析する基礎技術の研究を進めています。特に高電圧パルスや機器からのノイズを模擬した信号を電池に印加し電池の劣化状態を観察して、安全性評価試験を実施する実験技術について研究して行きます。
教員紹介
TEACHERS
藤田洋司 教授・博士(工学)
略歴
専門分野
専門:過渡現象解析、AC インピーダンス測定、高電界、高電圧、リチウムイオン電池
学生へのメッセージ
スマートフォンの電源はリチウムイオン電池(Lithium Ion Batteries: 以下LIBと略)です。皆さんほぼ全員がすでにLIBを携帯しています。これは、自動車に長く使われている、鉛蓄電池に比べ、約1/10の重量で同じエネルギーを貯めることができるから起きたことです。EV(電気自動車)に搭載されているのも周知のとおりです。さらに、不安定な風力・太陽光発電による電力を安定して送るために、電力を一時的に貯めるためにLIBも利用されると考えられます。送電系の電圧は、住宅の近くの送電線でも6600Vです。LIBの電圧はわずか3.7Vです。LIBを使用するには直列・並列化による高出圧、大出力化が必要になります。LIB蓄電システムが高電圧機器化することで、LIB周辺に高電界の環境が発生したり、雷が侵入するリスクも、想定しておく必要があります。当研究室では、主にLIBが高い電位、電界に晒されたとき、LIBに高い電圧が加わった時のLIBの応答に関する研究しています。蓄電池(バッテリー)の中身を知って使い方を考えることのできること(蓄電デバイスリテラシー)を目標に教育・研究を河野先生と連携して進めています。LIB等の先進蓄電デバイスの中身をもっと知りたい、応用に将来関わりたい学生は是非当研究室での研究を検討ください。
担当科目
プロジェクトデザイン入門(実験)(電気・電子) 電気磁気学Ⅱ プロジェクトデザインⅢ(藤田洋司研究室) 電気磁気学Ⅲ 電気材料 電気電子工学専門実験A エネルギー材料・デバイス工学研究(藤田洋司) エネルギーデバイス工学特論
河野昭彦 教授・博士(工学)
略歴
専門分野
専門:デバイスモデリング、デバイスシミュレーション、充放電シミュレーション、リチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ
学生へのメッセージ
世界規模で進展する気候変動対策のために,電動モビリティや再エネの普及を支えるキーデバイスとして,物質の化学エネルギーと電気エネルギーを双方向に高効率に変換できるリチウムイオン電池の研究が注目を集めています。電池という仕組みを工夫して,物質が秘めているエネルギーを解き放とうとする試みは,社会的ニーズにマッチし,かつ科学的な発見の醍醐味を私たちに提供してくれます。
一方で,そのリチウムイオン電池の実用において,電池の動作(電気化学エネルギー変換反応)を電気工学の原理を応用して総合的にコントロールすることが,近年とても重要になってきています。もしも,この効果的な術を見出すことができれば,装置の長寿命化や小型化という重大な進歩をもたらし,電動モビリティや再エネの普及に貢献できるかもしれません。私の研究室ではこのような思想の下,“電池の物理化学”と“電気システムの工学”のバイリンガルとなる(蓄電システム工学を作る)ことを目標にして,藤田洋司先生や学外との活発な連携関係を築き,教員と学生が力を合わせて研究を推進しています。
担当科目
プロジェクトデザイン入門(実験)(電気・電子) 電気数学Ⅰ 電気回路Ⅲ プロジェクトデザインⅢ(河野昭彦研究室) 専門教養特別科目(教養としての電気電子工学) 物性工学 プロジェクトデザイン実践(実験)(電気電子工学科) エネルギーデバイス工学 エネルギー材料・デバイス工学研究(河野昭彦) エネルギー材料・デバイス統合特論
研究業績
RESEARCH RESULTS
論文
- Comparison of Rapid Charging Performance for Lithium-Ion Batteries with Various Positive Electrode Active Materials
- Estimation of Equivalent Circuit Constant of Porous Electrode by Electrochemical Impedance of Lithium Ion Battery Using Symmetrical Cell
- Estimation of Equivalent Circuit Constant of Porous Electrode by Electrochemical Impedance of Lithium Ion Battery Using Symmetrical Cell
- High-Load Characterization of Porous Electrode (Positive Electrode) for Lithium-Ion Batteries by Three-Electrode Cell
- Analysis of Current, Polarization and Lithium Concentration in the Porous Electrode of a Lithium-ion Battery during High-frequency, High-current (10,000C) Flow
- Analysis of Current, Polarization and Lithium Concentration in the Porous Electrode of a Lithium-ion Battery during High-frequency, High-current (10,000C) Flow
- Reaction kinetics inside pore spaces in lithium-ion battery porous electrodes: Coupling of equivalent-circuit models and electrochemical reactions
- Reaction kinetics inside pore spaces in lithium-ion battery porous electrodes: Coupling of equivalent-circuit models and electrochemical reactions
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