工学部 電気エネルギーシステム工学科

大澤直樹 研究室

OSAWA Naoki
LABORATORY

放電プラズマの発生・制御・応用:高電圧絶縁、プラズマ応用装置の高性能化、空気や水の浄化

電子やイオンがばらばらになった状態をプラズマといいます。固体、液体、気体に次ぐ第四の状態と呼ばれています。放電プラズマ研究の魅力は、高い反応性により様々な化学反応を起こせることです。本研究室では、放電プラズマの発生方法や制御方法の研究をもとに、放電プラズマ式オゾン発生装置の省エネルギー化、放電プラズマを使った高度浄水技術の開発、地球環境に優しい電力機器の高電圧絶縁法の開発に挑戦しています。

キーワード

  • 放電プラズマ
  • 高電圧絶縁
  • 省エネルギー技術
  • プラズマ式オゾン発生装置
  • 空気・水の浄化(環境保全)

研究紹介

RESEARCH

大気圧空気中で発生する均一な誘電体バリア放電の発生メカニズムの解明

研究内容

電極間に誘電体(ガラスやプラスチックなど)を少なくとも一枚挿入した状態で電極に交流高電圧を印加すると、電極の間にはフィラメント状(筋状)のストリーマ放電が多数にランダムに発生します。この放電は、誘電体バリア放電と呼ばれ、プラスチック材料の表面処理やオゾンの生成などに利用されています。大澤研究室では、2009年、誘電体材料を工夫することにより、大気圧空気中や酸素中でもストリーマ放電が1本も発生しない誘電体バリア放電を発生させることに成功しました[1]。このテーマでは、高速度カメラや非接触の表面電位計を用いて、放電の発光様相や、誘電体表面に蓄積される荷電粒子の様子を調べ、均一な誘電体バリア放電の発生メカニズムの解明に挑戦しています。

文献
[1] Naoki Osawa, Yoshio Yoshioka; "Generation of low-frequency homogeneous dielectric barrier discharge at atmospheric pressure", IEEE Trans. Plasma Sci., Vol. 40, No. 1, pp. 2-8 (2011)
[2] 渡部佳月,大澤直樹:「電圧印加サイクル数と大気圧空気中における均一バリア放電現象の関係」,静電気学会論文誌,Vol.47,No.2,pp.70-75 (2023)

放電式オゾン発生装置(オゾナイザ)の高性能化

研究内容

3つの酸素原子から構成されるオゾンは強力な酸化力を持っています。自然に分解して酸素に戻るという性質があります。殺菌、消臭、有機物分解などが可能であることから、上水道、工場排水処理、プールなどで利用されています。オゾンの生成には様々な方法がありますが、大容量のオゾン発生器では、誘電体バリア放電を用いる方法が一般的です。大澤研究室では、電流電圧波形観測装置、放電発光観察装置、ガス分析装置などを用いて、オゾン発生器内で発生する様々な放電現象を調べ、少ない電力で大量のオゾンを発生する方法を明らかにしています。

文献
Naoki Osawa, Takafumi Tsuji, Ryota Ogiso, and Yoshio Yoshioka, "Effect of nitrogen addition to ozone generation characteristics by diffuse and filamentary dielectric barrier discharges at atmospheric pressure", Eur. Phys. J. Appl. Phys., 78, 20804 (2017)

オゾンとパルス放電を用いた水の浄化

研究内容

水中で放電を発生させると、オゾンよりも強い酸化力を持つヒドロキシラジカル(OHラジカル)を生成することができます。OHラジカルは、ダイオキシンといった難分解性有機化合物を分解する能力があります。このテーマでは、電流電圧波形観測装置、放電発光観察装置、高速度カメラなどを用いて、パルス放電を効率よく発生させる方法や、水中有機物の分解メカニズムの解明に挑戦しています[1]。最近は、本学応用化学科の研究室と一緒に、水中微生物の殺菌にも挑戦しています[2]。

文献
[1] S. Yamaguchi, T. Oyama, R. Nakano, N. Osawa, Y. Yoshioka, "Decomposition of indigo carmine solution by ozone bubble pulsed discharge: Effect of the number of electrode pairs and injected ozone gas concentration", International Journal of Plasma Environmental Science and Technology (IJPEST), Vol.14, No.1, e01010, 11pages (2020)
[2] D. Ueda, R. Miyata, R. Tsubota, N. Osawa, I. Tanida, S. Osawa, K. Nakata, "Sterilization of Underwater Bacteria by Ozone Bubble Pulsed Discharge", IEEE Transactions on Plasma Science, Vol.51, No.2, pp.333-341 (2023)

地球環境に優しい高電圧絶縁技術の開発

研究内容

発電所で作った大電力を需要地まで効率よく輸送するために、高い電圧が利用されます。変電所や発電所にある電力流通機器を小さく製造するためには、地球環境に優しい高電圧絶縁技術が必要です。このテーマでは、多段式インパルス電圧発生装置、交流高電圧発生装置、電圧電流波形観察装置、放電発光観察装置などを利用して、地球環境に優しい高電圧絶縁技術を開発しています。

文献
[1] 大澤直樹,増井秀好,青島司幸,今井隆太,森林巧,吉岡芳夫,柳瀬博雅,岡本健次:「固体絶縁物接続部の界面における絶縁破壊特性-樹脂の種類と面圧の影響-」,電気学会論文誌A,Vol.139,No.3,pp.147-153 (2019)
[2] K. Okamoto, N. Hayakawa, M. Hikita, H. Okubo, K. Kato, N. Osawa, K. Watanabe, K. Adachi, "Distinctive Downsizing of Cone-Type Insulating Spacer for 245 kV Class GIS by Functional Insulating Materials", CIGRE Science & Engineering, No.24 (2022)

研究設備の紹介

研究内容

実験室には、放電・プラズマの研究に欠かせない高電圧電源、高速度カメラ、各種分析器があり、自由に利用することができます。

【電源】
 ◇高電圧発生用変圧器: 13kV, 15kV, 30kV, 50kV
 ◇パルスパワー電源: 30kV(立ち上がり時間:約50ns)
 ◇高速高圧アンプリファイア: 10kV/40mA, 20kV/20mA
 ◇多段式インパルス電圧発生装置: 1000kV(共用設備)
【分析器&測定器】
 ◇フーリエ変換赤外分光光度計(1回反射ATR, 長光路ガスセル(1m, 3m))
 ◇マルチチャンネル分光器
 ◇高速度カメラ
 ◇オゾン濃度計(ガス用,水用)
 ◇蛍光式光ファイバー温度計
 ◇オシロスコープ,信号発生器,データロガーなど

教員紹介

TEACHERS

大澤直樹  教授・博士(工学)

略歴

1996年
3月
石川県立加賀高等学校 卒業

2000年
3月
金沢工業大学 工学部 電気工学科 卒業

2002年
3月
金沢工業大学大学院 工学研究科 電気電子工学専攻 修士課程 修了

2004年
3月
金沢工業大学大学院 工学研究科 電気電子工学専攻 博士課程 修了

2004年
4月
株式会社日立製作所 電力・電機開発研究所 

2007年
4月
金沢工業大学 工学部 電気系 電気電子工学科 講師 

2013年
4月
金沢工業大学 工学部 電気系 電気電子工学科 准教授 

2019年
4月
金沢工業大学 工学部 電気電子工学科 教授 

専門分野

専門:高電圧工学、放電応用、大気圧プラズマ、誘電体バリア放電、大気圧タウンゼント放電、オゾン生成、ガス処理、水処理、促進酸化法、ラジカル生成、アーク放電

学生へのメッセージ

私たちの暮らしは、電気エネルギーなしには成り立ちません。近年、環境問題への関心の高まりから、電気エネルギーの効率的な利用が求められています。私の専門は、電気機器を小さくする技術である「高電圧絶縁」と、電気の力で光を放つ現象を利用した「放電プラズマ」の応用です。これらの技術は、私たちの生活を支える変電設備や様々な電気製品など、幅広い分野で活躍しています。私の研究室では、学生たちと一緒に、より安定的に電力を供給するための高性能な電気機器の開発や、環境に優しい新しい高電圧絶縁方式の開発に取り組んでいます。また、放電プラズマを応用して水や空気をきれいにするオゾン発生装置の省エネルギー技術や、全く新しい放電プラズマ現象の発見など、私たちの社会を支える革新的な技術の創出を目指しています。高電圧絶縁や放電プラズマの研究の魅力は、電気の力強さや美しさを肌で感じられることです。例えば、放電実験では、まるで雷のような迫力のある音とともに、幻想的な光を見ることができます。私たちと一緒に、放電プラズマのように光り輝く未来の創造に貢献しませんか。

その他:第三種電気主任技術者

担当科目

工学基礎Ⅰ  電気エネルギー発生工学  電気電子工学専門実験A  プロジェクトデザインⅢ(大澤直樹研究室)  専門教養特別科目(教養としての電気電子工学)  高電圧パルスパワー工学  専門ゼミ(電気電子工学科)  電力・エネルギー工学研究(大澤直樹)  電力・エネルギー統合特論  

オリジナルコンテンツ

ORIGINAL CONTENTS