メディア情報学部 心理情報デザイン学科
田中吉史 研究室
「楽しみ」と「創造性」の認知心理学
私たちは普段、音楽、映画、アニメ、小説、アート作品など、様々なものを楽しんでいます。また、単にそれらを受動的に体験するだけでなく、自分で新しいものを作ってみることもあります。私たちが普段行っているこのような小さな楽しみやクリエーションは、私たちの幸福な生活や、より大きなイノベーションの基礎にもなっています。こうした活動の基盤にある心の仕組みについて、認知科学・認知心理学的観点から研究しています。
キーワード
- 認知心理学
- 音・音声・音楽
- アート・デザイン
- 創造性・想像力
研究紹介
創造的思考に関する認知的研究
研究内容
「SFアニメを企画しているとします。宇宙に住む架空の生物を1つ考えて描いてみてください。どんなものでも良いですが、出来るだけ斬新な生物を想像してください」-皆さんはどんなものを描いただろうか?
どんなものでも良いはずだから、自由になんでも描けるはずなのだが、ほとんどの人は地球上の生物と非常に似たものを描いてしまう。このように、私たちの想像力は既に知っている事柄-知識によって制約を受けている。
ではどのようにしたらもっと斬新なアイデアを生み出すことが出来るのだろうか?このことが近年の人が考える仕組みの研究-思考研究の大きなトピックとなっている。私たちは普段の生活の中で、どのように自分の記憶や知識を利用しているのか?そのことを調べていくことで、私たちの創造性を高めるヒントが得られるだろう。
当研究室では、こうした問題に対して、認知心理学的な研究手法を用いて取り組んでいる。「こうすれば必ず新しいアイデアが浮かぶ」というほど簡単な方法は見つからないだろうが、少なくとも、こうした地道な研究の積み重ねが、私たちの創造力の源を明らかにすることにつながると考えている。
芸術の認知に関する研究
研究内容
携帯プレイヤーで音楽を聴き、街角に貼られたきれいなポスターを眺め、かっこいいデザインの製品を手に取る...芸術というと美術館やコンサートホールを想像しがちだが、私たちの日常生活には「美しいと感じさせること」を意図して作られたものが満ちあふれている。それらは常に実用的なものとは言えないにもかかわらず、私たちの生活にとってなくてはならないものになっていることが多い。
そのような「美しいもの」を私たちはどのようにとらえ、またそれらは心のはたらきにどのような影響を与えているのだろうか?またそれらのものをどのように生み出しているのか?こうした問題について、当研究室では主に心理学的な研究手法を用いて取り組んでいる。
これまでは主に音楽を題材とした実験心理学的な研究を行ってきたが、近年は美術、特にどのようにしたらより深い絵画鑑賞が可能となるのか、ということについて、研究を行っている。
メタ認知を応用したスキル獲得の支援
研究内容
メタ認知とは、自分の行っている学習、思考や身体動作の状態を、自ら振り返ってモニターする活動である。メタ認知は、効率的に作業を進めたり、学習を行ったりする上で非常に有効であることが、これまでの研究でわかっている。例えば、ピアノ演奏の技術に関して、当研究室で行なった実験では、ピアノ練習の合間に自分の学習状況がどのような状態にあるかを振り返る(メタ認知活動)条件で学習した場合は、メタ認知活動を行わなかった場合よりも、効率的に安定した技術修得が可能であることが示唆されている。生産現場での技術習得は、先輩技術者の経験や勘に基づく訓練が中心となっていることが多いと考えられるが、メタ認知活動を積極的に導入することで、ものづくりの現場で必要とされる様々な技術の修得がより効率的に進められる可能性がある。
教員紹介
田中吉史 教授・博士(心理学)
略歴
専門分野
専門:認知科学、認知心理学
学生へのメッセージ
認知心理学の知見によると、ちょうど大学に在学する20歳前後の体験の記憶は、年を取ってからもよく思い出される、ということです。人生の基盤のひとつができるのが、大学生活なのでしょう。どうぞ充実した工大ライフを!
担当科目
心理学研究法 専門教養特別科目(心理学入門) 学習・言語心理学 心理科学専門実験・演習A プロジェクトデザインⅢ(田中吉史研究室) 感性評価法 心理学基礎実験実習Ⅱ 観察法 専門ゼミ(心理科学科) エンジニアリング心理学研究(田中吉史) 認知科学