建築学部 建築学科

円井基史 研究室

MARUI Motofumi
LABORATORY

自然環境と都市・建築との関係を考える

地球温暖化とヒートアイランドにより都市の気温はこの100年間で2~3℃上昇しています。持続可能な社会に向け、自然環境と都市・建築のより良い関係について考えます。

(左図は、環境配慮型の建築設計を支援するデジタル環境カルテ)

キーワード

  • 都市熱環境
  • ヒートアイランド
  • 建築環境設計
  • 緑の活用

研究紹介

RESEARCH

雨水貯留と毛管吸水に着目した蒸発冷却舗装システム

研究内容

これまでの研究で、面的な雨水貯留と舗装体の毛管吸水に着目した「蒸発冷却舗装システム」の基本構成を提案し、屋外実験により十分な冷却性能を確認した。現在、実用化に向けて、白華(冷却性能の経年劣化)抑制、舗装ブロックの強度確保、貯留水の水質確認、降雨特性を考慮した夏期の路面温度上昇抑制の評価に取り組んでいる。降水量や気温が平均的な東京夏期(3ヶ月間)において、遮熱性舗装(日射反射率40-50%)より、蒸発冷却舗装システムの方がヒートアイランド緩和に有効であることを数値解析により確認した。今後、蒸発冷却舗装システムの実用化に向け、必要な吸水性能、強度を持ち、かつ冷却性能の経年劣化が起きない舗装ブロックの材質、形状を再選定していく。

金沢市街に残存する緑地で生成する冷気流の実態把握と都市環境気候図への展開

研究内容

近年、土地被覆の改変と人工排熱の増加によるヒートアイランドが問題となっている。その中で、市街地に残存する緑地で生成する冷気流が、ヒートアイランド、特に熱帯夜を緩和することが分かってきている。本研究では、金沢市街を対象に、夏季夜間の冷気流の実態把握と、市街地の気温低減効果、数値解析による予測評価、そして地域や街区の計画提言に取り組んでいる。環境配慮型都市の実現に向け、2017年には、それらのデータをもとに都市環境気候図(気候分析図)を作成した上で、都市計画・建築設計の専門家を対象としたワークショップを開催した。その知見をもとに、2020年には計画指針図を提案し、有識者と意見交換を行なった。また都市環境気候データをもとに、建築設計支援のためのデジタル環境カルテの作成と授業展開を進めている。

コケ植物による環境調整型の建築外部空間の創造

研究内容

コケ植物(蘚苔類)は国内に約2000種あると言われ、古くから和歌や国歌に登場するように、日本人に馴染みのある植物である。近年では、苔玉といったインテリア、建物の屋上や壁面でコケを用いた緑化も注目されている。北陸は低温多湿でコケの生育条件が良く、日本有数の壮大な苔庭も存在する。本研究室では、コケ植物の熱環境調整効果や美観性を持つ建築外皮材料としての可能性に着目し、(1)都市に生育するコケ植物の熱・水収支特性に関する屋外実験、(2)人工被覆面に生育するコケ植物に関する調査と暴露試験、(3)コケ植物の景観心理に関する分析に取り組んでいる。ここ最近では、気乾状態のスナゴケにおける日中の重量増加(水分吸着)に着目し、コケの吸放湿性能の分析を進めている。

教員紹介

TEACHERS

円井基史  教授・博士(工学)

略歴

1996年
3月
鳥取県立鳥取西高等学校 卒業

2000年
3月
東京工業大学 工学部 建築学科 卒業

2002年
3月
東京工業大学大学院 総合理工学研究科 環境理工学創造専攻 修士課程 修了

2006年
3月
東京工業大学大学院 総合理工学研究科 環境理工学創造専攻 博士課程 修了

2006年
4月
日本大学 生産工学部 ポストドクター研究員 

2011年
4月
金沢工業大学 環境・建築学部 建築系 建築都市デザイン学科 講師 

2014年
4月
金沢工業大学 環境・建築学部 建築系 建築学科 准教授 

2018年
4月
金沢工業大学 建築学部 建築学科 准教授 

2023年
4月
金沢工業大学 建築学部 建築学科 教授 

専門分野

専門:ヒートアイランド、都市熱環境、環境設計、都市の緑、蒸発冷却

学生へのメッセージ

〇研究に興味を持ったきっかけ:建築は実は環境破壊をしているのではと疑問を持ったから。
〇研究内容:自然環境と都市・建築との関係を考える。具体的には「雨水貯留と毛管吸水に着目した蒸発冷却舗装システムの実用化」「金沢市街の緑地で生成する冷気流の実態把握と都市環境気候図への展開」「環境調整型の建築外部空間創造に向けたコケ植物研究」など。
〇学生時代の思い出:設計製図で徹夜。テストは一夜漬け。長期休みは海外貧乏旅行(タイ、トルコ・ギリシャ、ネパール)。長距離ドライブ(下道・車中泊)で全国の観光地へ。オリエンテーリングに情熱(世界選手権にも参加)。
〇最近の思い出:1人でTJAR(野宿しつつ日本海~北・中央・南アルプス~太平洋を7日と19時間)。OMM(1泊2日の山岳オリエンテーリング)優勝。
〇メッセージ:何かに情熱を。本学のオリエンテーリング・トレイルランニングサークルの顧問をしています。

担当科目

建築環境学Ⅰ  建築キャリアガイド  建築エンジニアリング総合演習A  プロジェクトデザインⅢ(円井基史研究室)  専門教養特別科目(建築入門)  建築材料  プロジェクトデザイン実践(実験)(建築学科)  建築エンジニアリング総合演習B  建築環境・設備研究(円井基史)  建築環境設計演習Ⅰ  都市環境特論