工学部 電気電子工学科

金野武司 研究室

KONNO TAKESHI
LABORATORY

人のコミュニケーションに潜む仕組みの理解と応用

通信機能を持つ機械は我々の身近に溢れており,この流れは今後ますます加速する.この流れの中で,人と機械は単なる情報のやりとりから,心を伴う知識のやりとりへと進むことが期待される.しかし,機械は人が自然に行なうコミュニケーションが苦手である.我々の研究室では,情報伝送タイミングの切り替えや,記号の交換による意図の伝達といった,人の持つコミュニケーションの仕組みを機械が備えることの可能性を探求する.

キーワード

  • 意図的・記号的コミュニケーション
  • 文脈依存型情報伝送
  • 知識共創
  • 認知科学

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研究紹介

RESEARCH

仮想オブジェクトを介した二者間でのインタラクション特徴の解明

研究内容

人どうしでの自然なコミュニケーションに比べると,我々は人工物(ロボットや情報端末など)との間でのコミュニケーションに違和感を持つことが多い.人どうしでのコミュニケーションにおいて,何がその自然さをもたらしているのだろうか.飯塚ら[1]は,触角を用いたインタラクション実験を通じて,相手の人らしさを判断するコミュニケーションの特徴としてターンテイキングの重要性を指摘している.これに対し我々は,視覚的なインタラクションにおいてもターンテイキングのようなコミュニケーションパターンが生じるのかを確認するため,視覚的なインタラクション環境での実験を設計し,認知実験を実施している.この実験においては,人と計算機でのインタラクション条件を加え,様々なタイプの動き方をする計算モデルとのコミュニケーションパターンを分析することで,人どうしの「自然な」コミュニケーションの実態解明を目指している.この実験によって得られる知見は,人の人工物に対する親和性の向上に貢献すると考えられる(担当:入江, 2019).
[1] 飯塚 博幸, 安藤 英由樹, 前田太郎: 身体的相互作用におけるコミュニケーションとターンテイキングの創発, 電子情報通信学会論文誌 A, 95(1):165-174, 2012.

記号コミュニケーションにおいて人はどのように相手の意図/言外の意味を推定するか

研究内容

人のコミュニケーションで交わされることばには字義通りの意味と共に言外の意味が含まれている.人は言外の意味を推定し,他者の意図したものを正しく推定することができる.一方で,その意図を推定するメカニズムは未解明なところが多い.金野らは「実験記号論」を基にした認知実験(メッセージ付きコーディネーションゲーム)を設計・実施すると共に,その計算モデルを構築し,言外の意味を共有するための仕組みを分析している.この計算モデルを基にして,我々はその計算モデルと人間との間でのメッセージ付きコーディネーションゲームの実験を実施している.この実験により得られる知見は,情報端末に搭載されているAIエージェント等への応用を考えることができる(担当:河上, 2019).

構造依存性を持った記号システムの形成過程を観察するための実験課題の設計について

研究内容

人間の言語には,表現と意味の間を結ぶ関係に構造依存性と呼ばれる階層構造がある.構造依存性を持つ表現とは,表現は1つでも複数通りの意味でとらえることができる表現である.人はこのような言語表現に接したとき,表現の背後にある構造を推定し,状況や文脈に応じてその意味を特定することができる.このように構造依存性を持った記号コミュニケーションのシステムが,人類史的な時間スケールにおいて生じたメカニズムは未だ不明確な部分が多い.記号的コミュニケーションにおいて,その構造依存性が生じる過程をメカニズム的に解明するための実験室実験を検討し,参加者が取り組む課題の構成要件を整理して,具体的にゲーム課題を考案・設計する.また, 設計したゲーム課題に基づき,人間が扱う意味を多様化・複雑化させる過程を観察することを目的とする(担当:齊藤,2019).

道徳的問題行動の判断傾向とデフォルトモードネットワークの関係性について

研究内容

人は他者とのコミュニケーションにおいて相性を感じることがある.この相性は何に起因しているのだろうか.この問題を解く1つの鍵として,安静時の脳状態に見られる特徴的な活動パターン=デフォルトモードネットワーク(DMN)が注目されている.本研究はこのDMNを脳波測定により抽出し,人が持つ固有の脳活動パターンと,行動判断基準の関係を調査する(担当:和泉,2019).

二者間コミュニケーションにおける知性的動作とは ー認知実験課題の開発と実施による解明ー

研究内容

人間と他の生物との大きな違いは「知性」にあるのではないだろうか.同様の言葉である「知能」にはいくつかの定義があるが,「知性」については定かではない.そこで本研究では,この「知性」が持つ特徴を明らかにするために,言葉以前に他の生物と共通点のある人間の動作に着目して,知性的な行動を取り出すことを試みる(担当:塚原,2019).

ロボットの身体性を通じた言葉の意味理解に必要とされるメカニズムの探求

研究内容

近年開発されている,双方向での会話やチャットが可能なAIには,例えばGoogle社のGoogleアシスタントやMicrosoft社のりんななどがある.これらのAIに,例えば「〜はどう思う?」など自らの考えを返答させる質問をしても大概の場合はうまく答えることが出来ない.これは,AIが会話時に言葉の意味を真に理解しているわけではないことが1つの基本的な原因ではないかと考えられる.計算機が,真に言葉の意味を理解するには,身体性を通じた体験と言葉が結びつく必要があると言われている.そこで本研究では,ロボットを用いてその身体と記号を結びつけるための実験を設計・実施し,計算機が真に言葉の意味を理解するためのメカニズムを探求する(担当:堀川,2019).

性格特徴が記号的コミュニケーションの成否に与える影響の調査

研究内容

現在,世界中で開発が進む対話型人工知能(例えばiPhoneのSiriやLINEのりんな)は,情報検索や翻訳など様々な場面で利用され始めている.その中でも興味深いのは,人工知能が使用者の相談に乗るような機能を持ち始めている点である.こういった人間の相談相手になるような人工知能の開発には,人間の性格特徴を把握することが不可欠であろうと考えられる.しかし,そういった性格特徴とことばによる(記号的な)コミュニケーションの関連性は未だよくわかっていない.そこで本研究では,性格特徴を把握する各種の質問紙と,協調的な課題を通じて二者間で人工言語を作成する課題を組み合わせた実験を設計し,その両者の関係性の解明に取り組む(担当:山下,2019).

人-ロボットの二者間関係において性格および動作特徴が行動選択に与える影響の調査

研究内容

人は他者とコミュニケーションをとったとき,無意識に相手の印象を決定づけ,その印象によって自身の行動選択を大きく変える.この印象の形成と行動選択の間にはどのような関係性があるだろうか.本研究では,印象を決定する人が潜在的に持つ性格特徴と,その相手となる人の動作に表れる特徴の組み合わせによって選択される行動が決まることを仮定し,両者の間の関係性を調査するための実験を設計・実施する.性格特徴の調査は先行研究にある代表的な質問紙を用いる.動作特徴については,実験者が作り込めるようにするために,人ではなくロボットを用いる.さらに,そのロボットの動作に対する行動選択としては,お金の分配課題である独裁者ゲームおよび最後通牒ゲームを用いる(担当:藤野,2019).

ロボットとの同調動作によって,人間はロボットに感情的な非合理性を見出すか?

研究内容

ロボットが行う動作は合理的であると判断される傾向にある.それは我々が「機械だから感情的に動くはずがない」または「ロボットだからプログラムによって一番いい答えを導いているに違いない」というような先入観を持っているからではないかと考えられる.では,どのような要因があれば,人はロボットが行う動作を非合理的に見るようになるのだろうか.1つの仮説として,我々は人とロボットの共同作業において,予測困難な状態で主導権が入れ替わるようなメカニズムをロボットが持ったとき,人はロボットに対して非合理的な内面のメカニズムとして感情状態を想定するようになるのではないかと考える.そこで本研究では,ロボットと簡単な同調動作を行なう実験を設計・実施し,ロボットに導入する同調と非同調の予測困難な切り替わりによって,参加者がロボットに対して何らかの感情的判断のメカニズムを想定するようになるか明らかにすることを目的とする(担当:佐藤,2018)

視線コミュニケーションにおけるターンテイクダイナミクスの研究

研究内容

近年,人工知能が身近なものになっているが,そこで行なわれるコミュニケーションにはいまだ違和感を感じることが多い.この違和感は非言語コミュニケーションにあると我々は考えた.その中でも,視線は重要な役割を果たしているため,その人どうしのインタラクションパターンに注目した.本研究では,視線を介したコミュニケーション実験を設計・実施し,視線のやりとりにおける人らしさの動作特徴(特にターンテイキング)を調査した.結果,人どうしの視線のインタラクションには高い同調傾向が現れることが確認された.しかし,アンケートにおいて報告された主従関係の入れ替わり(ターンテイキング)を,計測したインタラクションデータから定量的に取り出す指標の作成には至ることができなかった(担当:青木, 2017).

電波によるエネルギーハーベスティングを利用したセンサネットワーク構築のための電源要件の調査

研究内容

センサネットワークを構成するセンサノードの駆動にエネルギーハーベスティング技術を用いることで,電源の問題を解決することが期待されている.しかし,エネルギーハーベスティングは発電量が非常に小さく,かつ環境状態により大きく変化してしまうという問題がある.これを解決する1つの方法として,我々は極小電力での駆動が可能なマイコンを用いて,太陽光と電波の併用による電源の多様化を検討し,センサノードの電源管理に必要な要件を調査した(担当:平, 2017).

拡張現実における仮想物体とのインタラクション環境の構築

研究内容

本研究では,人間と仮想物との間でターンテイキングを感じさせるような動作パターンを柔軟に実験・調査することのできるAR環境を構築することを目的とする.具体的には,没入型のヘッドマウントディスプレイと外界撮影用のステレオカメラを組み合わせ,現実の視覚に仮想的な物体を表示するシステムを用いて,単純な人工物とインタラクションすることができるAR環境を構築する(担当:早川, 2017).

教員紹介

TEACHERS

金野武司  講師・博士(知識科学)

東京都東京工業大学工学部付属工業高校出身

略歴

武蔵工業大学電気電子工学科卒。同大学大学院工学研究科修士課程(電気工学専攻)修了。住友重機械工業(株)勤務。2008年北陸先端科学技術大学院大学博士課程(知識科学)修了。同大学研究員、特任助教を経て、2016年本学講師就任。

専門分野

専門:認知科学(コミュニケーション,実験記号論,ロボティクス)、複雑系
論文・著書:言語的コミュニケーションシステムの創発に関する実験的アプローチ, 計測と制御, vol.53(9), pp.801-807, 2014、回帰的意図理解をめざす共同注意ロボット, 科学哲学, vol.44(2), pp.29-45, 2011.
受賞:第6回知識共創フォーラム優秀論文賞(2017)、HAIシンポジウムOutstanding Research Award(2014)、計測自動制御学会 システム・情報部門学術講演会優秀論文賞(2014)

横顔

人の人らしさとは何かを問い続けています。人が言語を使い、意図を介して他者とコミュニケーションしつつ協力によって支えられる社会を形成する生きものであることに、たまらない魅力と不思議を感じます。科学技術はその問いの中で活きるものだと考えています。

趣味

息子とレゴ、マインクラフトで遊んでいます。作る系が好きです。なかなか賢くならないロボと戯れていたりもします。体を動かすことも苦手ではなかったのですが、もう何年も全力疾走していません。

近況

ドリップしたコーヒーを飲みながら学生と議論する時間が何よりも刺激的で好きです。そんな時間が長く続くことを願っています。