バイオ・化学部 環境・応用化学科

鈴木保任 研究室

SUZUKI Yasutada
LABORATORY

簡易な化学分析装置の開発を通じて環境保全や食品・工業材料の品質管理に貢献する

様々な物質の分析には、高性能な分析装置や熟練した技術者が必要です。簡単な分析法や分析装置を開発できれば、安く、簡単に分析できるようになりますし、性能が劣っていても、正確な分析が必要かどうかを判断する「スクリーニング」に利用できます。研究室では、発光ダイオードを光源に用いる手のひらサイズの分析装置を開発し、河川や海水などの環境試料、食用油などの食品、セメントなどの工業材料の分析を試みています。

キーワード

  • 簡易分析
  • 環境分析
  • 分光分析
  • 装置開発

ニュース&トピックス

NEWS & TOPICS

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研究紹介

RESEARCH

小型で簡便な流れ分析装置の開発

研究内容

従来の分析法は、ビーカーや試験管に測定対象の試料を取り、そこに試薬や試薬溶液を添加し、振り混ぜ、加熱などをして化学反応を起こして、生じた物質の発色や質量を測定して物の量を測定します。現代では機器を用いる分析法が一般的となり、固体を溶解したり、溶液試料を濾過したりするなど、簡単な処理をした後に直接機械に導入するだけで測定できるようになっています。しかし、目的とする物質の濃度が低すぎて測定できなかったり、目的とはしていない物質 (共存物質といいます) が邪魔をして、正しく測定できないことがあります。
このような場合には、目的とする物質を濃縮したり、共存物質を分離したりする必要があり、従来の分析法と同様に煩雑な操作をしなければならないことがあります。流れ分析法は、ポンプを用いて試薬溶液をテフロン製のチューブ内に送液し、別のポンプで試料溶液を別のチューブに送液して、合流させてチューブ内で反応を起こす方法です。送液量が一定のポンプを用いれば、試薬と試料の混合比は常に一定ですから、難しい操作をしなくても正確な反応、分析が可能になります。
 フローインジェクション分析法 (Flow-Injection Analysis, FIA) は流れ分析法の一種で、キャリアーと呼ばれる溶液の流れの中に一定量の試薬溶液を注入し、反応試薬と合流して反応させ、下流で反応生成物を検出します。合流後のチューブの長さによって反応時間を決めることができ、チューブ全体を一定温度で加熱することで反応時間を短くすることもできます。
 検出器によく用いられるのは吸光度検出器です。着色した溶液に特定の波長(色)の光を照射し、溶液の色が濃いとその分透過する光の強度が減少することを利用して、物質の濃度を測定します。通常はタングステン、ハロゲン、キセノンなどのランプが光源に用いられますが、最近では様々な色のLEDが入手できますので、目的 (測定する波長) に応じてLEDを選択すれば、簡単に吸光度検出器を作ることができます。LEDは小型で低消費電力なので、通常よりもずっと小さくなります。一方、溶液を送るためのポンプも、通常は大型で送液速度が一定のものが用いられますが、最近、小指くらいの大きさで乾電池でも動かすことができる小型のポンプを入手できるようになりました。
 写真は、超小型のポンプと手のひらサイズの吸光度検出器を組み合わせた簡易なFIA装置です。途中には溶液を加熱するためのハロゲンランプを熱源とするヒーターが組み込まれています。検出器には4つのLED、470 nm (青色)、530 nm (緑色)、630 nm (赤色)、880 nm (赤外線) が組み込まれていて、様々な物質の分析に利用できます。ポンプの数、チューブの長さ、反応温度を変更し、検出する波長を選ぶことで、アンモニア、亜硝酸、リン、クロム(VI)を測定できます。
 一例として、アンモニアを測定した時のフローシグナルを示します。FIAではキャリアーに試料を注入しますので、試料部分が反応して検出器に到達すると、濃度に応じて信号強度が上昇し、通り過ぎると元の信号強度0に戻ります。

教員紹介

TEACHERS

鈴木保任  教授・博士(工学)

略歴

1986年
3月
岐阜県立加茂高等学校 卒業

1990年
3月
名古屋大学 工学部 合成化学科 卒業

1992年
3月
名古屋大学大学院 工学研究科 応用化学及び合成化学専攻 博士課程前期課程 修了

1992年
4月
三菱自動車工業株式会社 

1994年
5月
山梨大学 工学部 助手 

2010年
1月
山梨大学 機器分析センター 講師 

2014年
4月
山梨大学 生命環境学域 准教授 

2019年
4月
金沢工業大学 バイオ・化学部 応用化学科 教授 

専門分野

専門:装置開発、分光分析法、簡易分析法、環境分析化学、分析化学

学生へのメッセージ

学生時代に習得したことは、年を取っても大変役に立ちます。学生時代に恩師から習ったコンピュータープログラミングと電子回路設計の知識は、化学分析装置の開発という自身の研究に大いに役立っています。一方で、学生時代に苦手で逃げていたことが後から必要になり、後悔することもあります。金沢工業大学は夢工房をはじめ、様々な知識や技術を習得できる施設が充実しています。新しいことにチャレンジするには最適な環境です。大いに活用してください。
また、勉強や研究だけでなく、部活動やサークル活動にも打ち込むことができる期間でもあります。アルバイトやレポートなどで忙しいかと思いますが、生涯の友人と趣味を見つけることができるかもしれません。わたしは少し中断していますが、楽器演奏を続けていて、再開の機会をうかがっているところです。
色々迷う時期でもありますが、実りある学生生活になるよう応援しています。

担当科目

プロジェクトデザイン入門(実験)(応用化学科)  環境化学  バイオ・化学基礎実験・演習A3(応用化学)  地学基礎実験  プロジェクトデザインⅢ(鈴木保任研究室)  分析化学  地球環境学  応用化学専門実験・演習A3  専門ゼミ(応用化学科)  地球環境学  環境化学研究(鈴木保任)  応用化学統合特論  環境化学特論  

オリジナルコンテンツ

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