バイオ・化学部 生命・応用バイオ学科
樋口正法 研究室
脳磁計や脳波を用いた脳機能の解明およびその工学的応用
脳磁計は脳から発生する微弱な磁場を計測する装置です。本学で開発された脳磁計などを用いて脳のメカニズムを解明します。また、AIや機械学習などを活用した新たなブレイン・コンピュータ・インターフェス(BCI)の開発を目指します。現在、ビデオゲーム実施時の脳波および脳磁図の解析や脳全体の電気的活動を再現するブレイン・クローニングに関する研究などに取り組んでいます。
キーワード
- 脳磁計・脳波
- 脳機能解明
- AI・機械学習
- ゲーム依存
- BCI
研究紹介
ビデオゲーム実施時の脳波および脳磁図の解析
研究内容
近年、ビデオゲームやスマホゲームなどのゲーム依存症が社会問題となっています。本研究ではゲームが脳に与える影響を調べるため、ゲーム実施時の脳波や脳磁図を計測し、ゲーム依存防止に繋がる知見や方法を見出すことを目的とします。ゲーム依存の要因としてゲームへの過度な集中が長く続くことが考えられます。実際にどの程度集中しているか脳波を使って評価する研究を示します。評価指標として音に対する脳反応の大きさを用いました。具体的にはN100という聴覚誘発電位を計測し、その大きさの変化を調べました。上図の二つの脳波グラフはその一例を示したもので、ビデオゲーム実施時は講義ビデオ視聴時に比べN100の大きさが小さく安定していません。これはゲームに集中したため外部の音刺激に対する脳神経活動が小さくなったものと思われます。これに対して講義ビデオ視聴時は講義に集中することができず外部の音刺激に注意が向いたものと思われます。このような脳信号を検出・評価することにより、脳神経活動に基づいたゲーム依存防止付きゲーム機への応用が考えられます。
脳波・脳磁図を用いた脳腸相関に関する研究
研究内容
腸は交感神経や副交感神経によって脳と情報交換を行なっています。これは脳腸相関と呼ばれ、心理社会的ストレスによる腸の不調(過敏性腸症候群)などの発症メカニズムとなっています。脳腸相関に関しては多くの報告がなされていますが、腸運動と脳活動との直接的な相関性を示す研究例はほとんどありません。そこで本研究では脳波や脳磁図による脳活動計測とともに腸音計測による腸運動を同時計測し、両者の相関性を検証することを目的とします。上図左下は開発した腸音計測装置を用いて腹部の2箇所を同時計測したときの観測波形例です。左側の腸活動が活発で、右側はあまり動いていないことが示されています。多くの箇所を同時計測することにより腸全体の活動の様子を知ることができます。腸音計測では立ち上がりの早いパルス性の波形が断続的に出現しており、その腸音パルスを用いて脳磁図波形を加算平均した結果を右図に示します。腸音の鳴る前は脳磁図波形の振幅が大きくなり、腸音が鳴った後は振幅が小さくなっています。脳から腸への情報伝達を示唆する結果と思われます。
教員紹介
樋口正法 教授・工学博士
略歴
学生へのメッセージ
1995年より本学で脳磁計の開発に携わってきました。現在はこれを使って脳の研究を行っています。脳は私たちにとって最も身近でありながら、最も謎の多いものの一つ。神経細胞の塊からどうして意識が生まれるのか、とても壮大なテーマです。様々なアプローチがあると思いますが、私の得意分野である理工学的手法を用いて謎の一端を解明したいと思っています。脳波や脳磁図から意識の痕跡を見つけ、そのメカニズムを調べるとともに計算機上でエミュレートすることを目指しています。若い人に送る言葉は、いろいろな事に興味をもち挑戦してほしい、です。やらずに後悔するよりもやって後悔する方が良い。ただ、時には思い通りにいかない場合もあるかもしれません。この先どうなってしまうのか不安でしょうがない。そんな時には、「必ず何とかなる。思った通りではないけれど」by 松尾スズキ。勇気づけられる言葉です。
担当科目
生命と倫理 生体計測 応用バイオ専門実験・演習A プロジェクトデザインⅢ(樋口正法研究室) バイオ情報入門 感覚機能論 物理学基礎実験 専門ゼミ(応用バイオ学科) 脳情報システム研究(樋口正法) 脳情報システム特論
研究業績
論文
- A Spherical Coil Array for the Calibration of Whole-Head Magnetoencephalograph Systems
- Calibration of a Coil Array Geometry Using an X-ray Computed Tomography
- Properties of the coherence function between a sound envelope and magnetoencephalogram data in a selective listening study
- MEGによるhigh gamma activityの検出 モデル実験
- 脳磁図での高周波数律動の検出・モデルによる検証
- 脳磁図による高周波数律動(HFO)の測定―モデル実験
- 誘導コイルを用いた超低磁場におけるT1緩和時間の計測法(T1 relaxation time measurement in ultra-low magnetic field using an induction coil)
- Development of Compact Ultra-Low-Field MRI System Using an Induction Coil
詳しい研究業績はこちら