工学部 航空宇宙工学科

藤田昂志 研究室

FUJITA Koji
LABORATORY

航空機による惑星探査手法の確立へ

従来は,惑星探査といえば探査衛星や探査車で行うのが常識でした.しかし近年は,第三の惑星探査手法として航空機による探査が注目されています.航空機を用いることで,探査衛星よりも詳細なデータを,探査車よりも広範囲に取得することができます.私の研究室では,航空機による惑星探査手法の確立に向け,流れ場の解明や,高機能空力デバイスの開発,それらに基づく機体/探査ミッションの提案や,飛行試験などを行います.

キーワード

  • 惑星探査航空機
  • 昆虫や鳥やコウモリの流れ場
  • 新型人工筋肉
  • 飛行試験
  • 風洞試験

研究紹介

RESEARCH

誘電エラストマアクチュエータを用いた翼の研究

研究内容

コウモリの翼は,高い空力性能に加えて収納性も兼ね備えており,火星飛行機に適しています.コウモリの翼面は膜状の筋肉でできており,これを伸縮させることでうまく飛行を制御しています.コウモリの翼をうまく工学的に模擬できれば,高性能な火星飛行機が実現できるかもしれません.

コウモリの翼のような膜面をうまく制御する方法として,我々は誘電エラストマアクチュエータ(Dielectric Elastomer Actuator: DEA)に着目しています.DEAは近年開発された新しいアクチュエータで,人工筋肉の一種としても知られています.DEAの構造は,電気を通さないエラストマ※の膜の両面に柔軟電極を設けたものになっています.このため,電極に高電圧をかけると,電極同士が静電気力によって引き合い,エラストマ膜が潰されて薄くなりながら広がります.これにより,膜の面積や張力を電気的に制御することが可能です.

そのため私の研究室では,DEAを活用した膜翼について研究を進めています.この研究により,コウモリのように自在に飛行できる新型の翼システムを実現することを目指しています.

※弾力のある高分子材料のこと.シリコンゴムなど

火星飛行機の実現/機体の収納・展開技術

研究内容

我々は,火星飛行機の実現に向けて,JAXAや他大学と協力しながら研究を進めています.
https://www.isas.jaxa.jp/topics/003468.html

この中で私の研究室では特に,飛行機の収納・展開技術についてフォーカスしています.飛行機の収納・展開技術は,火星で飛行機を飛ばすために重要な技術です.火星に飛行機を輸送するには飛行機をロケットに搭載する必要があります.さらに,火星の大気圏に突入していくためには,はやぶさカプセルやアポロのような大気圏突入カプセルを使用する必要があり,飛行機はこの大気圏突入カプセルに収まらなければなりません.これらにより,火星へと輸送可能な物体の形状や大きさには強い制約があります.一方で,火星の大気は非常に希薄であるため,火星飛行機には大きな翼が必要となります.この,「輸送時にはコンパクトにしたい」かつ「飛行時には翼を大きくしたい」という相反する要求を叶えるのが,飛行機の収納・展開技術です.

収納・展開の方法には,折り紙のように折りたたむものや,風船のように膨らむもの,昆虫・鳥・コウモリなどの生物の羽のようなものなど,様々なタイプが考えられます.私の研究室では,様々な収納・展開機構を,空力特性や展開の確実性など種々の評価基準で,風洞試験や飛行試験を通して評価していきます.そしてそれらを通じ,火星探査に適した収納・展開の方法を明らかにします.

「惑星探査航空機学」の確立

研究内容

火星の飛行探査への期待は年々高まっています.火星飛行機は現在,我々のグループも含めて様々なタイプが世界中で検討されています.また,2021年にはNASAが火星ヘリによる世界初の動力飛行に成功しました.

しかし,飛行機やヘリが活躍できる場は火星だけではありません.木星や土星,タイタンなど,大気の存在するあらゆる星で飛行探査が可能です.また,探査機の形式も飛行機やヘリに限ったことではなく,マルチコプタや飛行船,気球など,あらゆる航空機が選択肢となります.このような惑星探査航空機を検討する際,それらに共通項はあるのでしょうか?また,その星ごとに適した航空機の特徴とは何でしょうか?

本研究では,これらの疑問に答えるために,火星に限らず様々な星に対して,探査ミッションを検討し探査航空機を提案していきます.そして,それらの知見を比較・分類・体系化していくことで,今はまだどこにも無い「惑星探査航空機学」を確立していきます.

教員紹介

TEACHERS

藤田昂志  講師・博士(工学)

略歴

2008年
3月
秋田工業高等専門学校 機械工学科 卒業

2010年
3月
東北大学 工学部 機械知能・航空工学科 卒業

2012年
3月
東北大学大学院 工学研究科 航空宇宙工学専攻 博士前期課程 修了

2015年
3月
東北大学大学院 工学研究科 航空宇宙工学専攻 博士後期課程 修了

2015年
4月
日本学術振興会 特別研究員(PD) 

2017年
10月
東北大学 流体科学研究所 助教 

2022年
4月
金沢工業大学 工学部 航空システム工学科 講師 

専門分野

専門:誘電エラストマアクチュエータ、設計、飛行力学、空気力学、探査、火星、航空機

学生へのメッセージ

みなさんは「宇宙探査」という言葉からどんな方法をイメージしますか?従来は、惑星探査といえば探査衛星や探査車を用いるのが常識でした。しかし近年は、第三の惑星探査方法として飛行機やヘリなどの航空機を活用した探査が注目されています。航空機を用いることで、探査衛星よりも詳細なデータを、探査車よりも広範囲にわたって取得することができます。

私は、大学院進学時にこの研究テーマを新たにもらい、それが面白くて研究者の道に進むことを決めました。航空宇宙の研究分野では、一口に航空宇宙といっても実際は「航空“か”宇宙」どちらかに特化した研究も多いですが、この惑星探査航空機は「航空“と”宇宙」の両方の扱うことができます。それが僕の感じているこのテーマの魅力の一つです。

学生のみなさんも、興味を持って全力で取り組める物事をぜひ見つけてください。自分の好きなことを大事にして、充実した大学生活を送ってもらえればと思います。

担当科目

プロジェクトデザイン入門(実験)(航空システム工学科)  機械力学  航空流体力学Ⅰ  航空グローバル演習  プロジェクトデザインⅢ(藤田昂志研究室)  数理モデルプログラミング  流れ学Ⅱ  プロジェクトデザイン実践(実験)(航空システム工学科)  専門ゼミ(航空システム工学科)  

オリジナルコンテンツ

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