工学部 先進機械システム工学科
中村真人 研究室
NAKAMURA Makoto
LABORATORY
先進再生医療工学:『臓器を作る・育てる・再生する』:臓器再生を工学の手で制御する挑戦!

これまで多くの再生医療の研究者が、細胞から臓器を作る研究に取り組んできました。しかし、細胞は作れても臓器はまだまだ困難です。そこで私達は、体外で臓器を育て再生することに取り組んでいます。体外で臓器再生を目指すのは、臓器再生プロセスを工学で制御するためです。DX/IoT/AI技術を用いて臓器再生行程をモニタリングし制御します。再生医療を革新し、臓器移植にたよらない未来を創出することを目指しています。
キーワード
- 再生医工学:臓器を待つ時代から作る時代へ
- 臓器再生:臓器を育て再生する新領域の開拓
- 臓器再生評価法:臓器計測・解析・機能評価
- 医工融合:DX/IoT/自動化/遠隔化/
- 未来医療:臓器移植にたよらない未来
研究紹介
RESEARCH
デジタル・ファブリケーションのさらなる発展

研究内容
デジタルファブリケーションとは、デジタル技術によるものづくりということです。Computer-aided Designing(CAD):コンピュータ上での設計、Computer-aided Manufacturing(CAM):コンピュータ上のデジタルデータを送信し、造形装置による製作加工、Computer-aided Engineering(CAE):コンピュータ上で行う工学的な解析やシミュレーションを通して設計や製造の最適化を図ること、これらCAD/CAM/CAEを活用したものづくりが行われています。
再生医療では細胞から生体組織や臓器をつくる研究が行われていますが、ここにデジタルファブリケーションの技法が使えたらよいと思いませんか?
私たちは、『臓器をつくる』テーマで、生体組織や臓器の設計(Bio-CAD)をもとに、生きた細胞や生きた組織、たんぱく質などの生体材料を材料(Bio-ink, Biomaterial-ink,Bio-parts)として、3次元の組織や臓器をデジタル出力で構築する(Bio-CAM, Bio-3D printing, Bio-assembly)ための装置と技術を開発して、デジタルファブリケーションで臓器をつくれるか?の挑戦を行ってきました。研究者や技師が手作業で行っている再生医療で細胞培養を行う過程に、デジタルファブリケーションのコンピュータと機械の手と眼を導入します。今、再生医療の中で、Bio-patterning, Bio-printing, Biofabrication、Bio-assemblyの時代が来ています。
さらに発展して『臓器を育てる、再生する』のテーマでは、臓器が育ち再生するまでの行程にもデジタル技術を応用すると、デジタルによる大きな技術革新が起きることが期待されます。
臓器レベルの再生医工学

研究内容
iPS細胞や細胞集塊(オルガノイド=ミニ臓器)の研究のおかげで、細胞レベル、小さな組織レベルでの臓器再生の研究が進んできました。しかし、臓器移植を待っている人のためには、まだまだ大きな隔たりがあり、臓器移植に代わる治療につながるためには、臓器レベルでの臓器再生が実現せねばなりません。現在、これらの組織は、体内で臓器再生することを期待して体内に移植する研究が行われています。ところが、この30年来、再生医工学研究が世界で行われてきていますが、体内で細胞任せで臓器をつくろうとすると、結局、線維性の瘢痕組織になってしまうというのが大きな壁となっており、残念ながらその解決は未だできていません。体内では増殖旺盛な線維芽細胞や白血球など集まってきて、移植した重要な細胞組織は、生存競争にさらされます。酸素を必要とする重要臓器の細胞の多くは生き残れないのです。しかも臓器に育つには時間もかかり、その間、確実に臓器に育つかの保証はありません。最新の再生医療といえども、現在地はここまでで(図参照)、臓器再生までにはまだまだ大きな隔たりがあります。ではどうしたらよいでしょうか?
そこで私たちは、小さな細胞組織が臓器に育つ行程こそが最も重要な行程で、この過程こそが科学の手で制御しなければならない鍵と考え、体外で臓器を育て、この臓器再生プロセスに介入しようと考えました。そして、体外腎臓灌流培養システムの開発、体外で腎臓を再生させる技術、そして体外で再生させる腎臓をモニタリングし制御する技術を3本柱と考え、これらを前進させ発展させることを目指しています。
先進再生医療工学が、新しい再生医療の道と時代を創ります!
体外で腎臓を集中治療で再生する「腎臓再生ICU」の研究開発

研究内容
当研究室では、臓器移植にたよらない未来社会を目指して、壊れた腎臓を体外で再生するという新しい発想の臓器再生の研究開発にチャレンジしています。
腎臓は再生医療では最も困難な臓器で、これまで細胞や細胞集塊を移植する再生医療が行われてきましたが、腎臓移植には到底かなわず、行き詰っています。そこで、壊れた腎臓を体外に取り出し、体外で強力な再生治療を集中的に行う、という新しい腎臓再生法を開拓しようと考えました。
これを実現する一番の鍵は、これを実現するための装置システムです。体外で腎臓を灌流し維持する体外腎臓灌流技術、灌流している腎臓を傷つけずに観測・モニタリングする技術、さらには腎臓の状態を検査し、分析・解析して評価・診断する技術、そしてそれに応じて最適治療を実施する治療技術が必要です。そこで、私たちは、これを実現する装置システムの研究開発に取り組んでいます。
とはいうものの、この構想を実現する装置はまだ世にありません。ではどうするか?
荒野の中、道なき道を切り拓くには、ブルドーザーやパワーショベルなどの什器や機器が必要です。そして、それらがそろえば、はるかに迅速に、どんどん道を作っていけますよね?
そこで、私たちは、これを実現する有効な装置システムを設計し、試作して、実験に取り組んでいます。この構想での研究を加速して、1日も早く、体外で臓器を再生する未来が実現することを目指しています。
*この研究は、2025年度(公)総合工学振興財団の研究助成に採択されました。https://www.fist.or.jp/2025senkoukekka.html
研究に関するQ&A
研究内容
よくある質問(Q&A)
Q1. 臓器移植を否定する研究なのですか?
A; 臓器移植で助かっている患者さんはたくさんありますので否定はしませんが、21世紀に目指すべき医療とは思えません。。しかし、臓器移植の研究は1900年頃から始まり、半世紀の苦難を経て1954年にヒトで成功、1970?80年代免疫拒絶と戦いと有効な免疫抑制剤の開発により臨床治療として確立されました。しかし、1990年代から臓器不足が叫ばれるようになりました。人工臓器や再生医療の研究が登場してきました。今はまだやむを得ず他人の臓器に依存するしかありませんが、臓器移植のために臓器を失う人が日本だけで毎年1800人おられる現実を考えると、21世紀になった今日なお目指すべき医療ではないのではないでしょうか?
Q2. 本当にできるの?
A: 体外で腎臓を再生させる技術はまだありません。それは、まだほとんど研究されていないからです。可能性はいくらでもあります。できない理由を考えるのではなく、できる理由を考えて多くの研究者たちが取り組めば、きっとできますよ!
Q3. いつ使える?
A: 臓器移植の研究は1900年頃研究が始まって、約50年経って人(一卵性双生児)で成功、80年経ってようやく医療技術として確立されました。人工心臓の研究も、50年経って臨床応用ができるようになりました。再生医療が始まったのが1990年代ですが、今なお、現在地で述べた段階です。体外で臓器を再生させる研究は今ようやく産声をあげたところです。でも、50年後、なんて言っておれませんよね?今の時代、科学技術の進歩は迅速です。20年内、いや、10年後には実現させたいものです。
Q4. 倫理的に大丈夫?
A: 臓器移植には多くの倫理問題が関わっています。他人の臓器を期待するからです。臓器売買はもちろんですが、誰かのために自分の臓器を失うことを美徳とする社会も望ましいとは思えません。臓器移植にたよらない社会を目指すべきと思います。そして、体外で臓器を再生する研究は、成功して確立されれば、自分の臓器が再生するのを待つ社会になります。
自分の臓器を体外に取り出すことですが、
Q5. 体外に腎臓を取り出すのは、侵襲が大きすぎませんか?
A: この治療の対象なる患者さんは、透析を受けている重度の腎不全の患者さんです。腎臓を取り出す手術が必要なので侵襲はありますが、2個のうち1個を取り出しても透析で生きられるので、生命上の問題はありません。また、もし、腎臓移植の手術の際に機能不全の腎臓を1個取り出すことができれば、手術の侵襲はあまり変わりません。そしてその1個を体外で再生させられれば、他の人に使えますよね?
また、現在は日本だけで生体腎移植が毎年1800件行われています。その場合、ドナーの方は、健康な方ですが、腎臓を失うというそれこそ不要な大きな侵襲を受けます。侵襲を考えるならば、こちらの侵襲こそ問題にすべきと思いますがいかがでしょうか?
Q6. 何が新しい?
A: 現在の再生医療では、移植臓器まで育てることはできません。それを可能にしようと取り組んでいます。
Q7. 誰が関われる?
A: 当研究室では、優秀で、志の高い機械工学系のエンジニア(の卵)を必要としています。もちろん、医師、医学関係者に限らず、生物、化学を専門とするエンジニアも必要です。特に、エンジニアを求める理由は、エンジニアは、今までにない装置や材料を作り産み出すことができるからです。そうすると、未だかつてなかった社会や医療が創り出されます。物が作れるというのはすごいことですね!
また、Home Page作成や管理のできる方、得意な方、学生に限らず、ボランティアで手伝ってくれる方を募集しています。一緒に情報発信のページを作っていただけませんか?
教員紹介
TEACHERS

中村真人 教授・博士(医学)
略歴
専門分野
専門:再生医療工学、臓器再生、バイオファブリケーション、生体医工学、人工臓器工学、Regenerate Medicine、再生医工学
学生へのメッセージ
エンジニアを目指す卵~ヒナたちへのメッセージ
・『エンジニアはいまだ存在しなかった世界を創り出す』(Theodor von Karman)
・必要なものを創って世に貢献する道あり。必要としている人たちに必要なものを作り届けて世に貢献する道あり。
・高い志を持って、皆さんの手で輝かしい未来を創ってください!
担当科目
プロジェクトデザイン入門(実験)(機械工学科) プロジェクトデザインⅡ 医用生体工学 プロジェクトデザインⅢ(中村真人研究室) 専門教養特別科目(バイオと機械と医療の融合:初学者のための再生医療工学) プロジェクトデザイン実践(実験)(機械工学科) 医療・ヘルスケア工学研究(中村真人) 工学のための解剖学 工学のための生理学
研究業績
RESEARCH RESULTS
論文
- 3D-Bioprinting と 3D バイオイメージング
- Mammalian-specific decellularized matrices derived bioink for bioengineering of liver tissue analogues: A review.
- Design and Fabrication of Mature Engineered Pre-Cardiac Tissue Utilizing 3D Bioprinting Technology and Enzymatically Crosslinking Hydrogel
- Functional assessment of extracorporeally perfused kidneys using drug loading tests
- Biofabrication offers future hope for tackling various obstacles and challenges in tissue engineering and regenerative medicine: A Perspective
- Inkjet micropatterning through horseradish peroxidase-mediated hydrogelation for controlled cell immobilization and microtissue fabrication.
- Value ranking for difficulties with care technology: A survey for the development of nursing-care robots as collaboration between nursing and engineering
- Biofabrication: A Guide to Technology and Terminology.
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