メディア情報学部 心理情報デザイン学科
川島朋也 研究室
ヒトが世界をどのように感じ、認識しているのかを行動実験や脳活動計測を通して明らかにする。
私たちの行動や意識はどのように形成されるのでしょうか。そしてその背後にはどのような脳の働きがあるのでしょうか。この研究室では、行動実験や脳活動の測定によって、さまざまな情報が脳内で処理され、意識となる過程を調べています。自動車の運転中の注意機能や犯罪捜査で使われる検査など、日常生活での心理的なプロセスにも焦点を当てながら、ヒトの行動を説明するロジックを提供することを目指します。
キーワード
- 認知心理学
- 認知神経科学
- 注意
- 記憶
- 脳波
研究紹介
脳のリズムは我々の視覚情報処理にどのように影響するのか?
研究内容
我々が世界を認識するとき、世界は安定して見えます。ところが最近、ヒトの視覚は連続的なものではなく、一定のリズムにしたがって情報処理をしていることがわかってきています。この背景には、脳の活動に見られる規則的なリズム活動があります。本研究室では、脳のリズムと視覚情報処理の関係を脳波の計測や行動実験で検討しています。これまで、複雑な視覚環境から特定の情報を選択する認知機能である注意にリズムが認められることを示してきました。最近は、規則的な音刺激などの感覚刺激によって脳活動を変調し、行動がどのように変わるかを調べています。
(東京大学 天野薫教授との共同研究)
自動車運転時の注意機能の探求
研究内容
自動車によってヒトはこれまでにないスピードで移動できるようになりました。自動車は誰でも扱えて便利ですが、一歩間違えば悲惨な事態を招く凶器となってしまいます。安全な交通環境の実現につなげるために、本研究室では自動車運転時の注意機能を調べることで、ヒトの情報処理の限界や特性を検証しています。これまで、車載機器としてスマートフォンなどの機器を運転時に使用することが注意を妨害することを認知心理学的な方法を用いて示しました。最近は、道路上のリスク認知について、若年者と高齢者の情報処理の違いを検証しています。
(静岡理工科大学 紀ノ定保礼准教授との共同研究)
行動指標に基づいた隠匿情報検査の開発
研究内容
隠匿情報検査は日本の犯罪捜査で実際に使用されている心理学に基づいた検査です。この検査は記憶検査の一種であり、犯人しか知り得ない情報についての記憶を生理反応の変化によって判定するものです。生理反応として皮膚電気活動や呼吸、心拍などが測定されます。本研究室では、生理指標に加え、反応する時間や正答率などの行動指標に基づいた新たな隠匿情報検査の開発を試みています。これによって犯罪捜査の精度と信頼性の向上につなげます。
(神奈川県警察科学捜査研究所 嘉幡貴至主任研究員との共同研究)
教員紹介
川島朋也 講師・博士(学術)
略歴
専門分野
専門:注意、ワーキングメモリ、認知制御、感覚引き込み、脳波、EEG、事象関連電位、MEG、神経律動、隠匿情報検査、交通安全
学生へのメッセージ
「犬や鳥と同じ生き物であるヒトとは一体何なのだろう」という疑問を持ち、心理学に興味を持ちました。大学で初めて自分で行った心理実験で、目に見えない心の働きを調べる面白さに出会い、それが私の研究への第一歩でした。
私はヒトが物を見たり記憶したりする心理過程とその背後にある脳の情報処理に関心があります。また、自動車運転や犯罪捜査など、ヒトが関わるさまざまな活動に心理学的なアプローチを適用し、実験室実験と日常生活を結びつける研究を通じて、実用的な知識を提供できることを目指しています。
ヒトを対象とする研究を行うには、実験参加者を尊重し、適切に応対することが不可欠です。研究教育活動を通して、学生の皆さんにヒトを対象とする研究の知識と技術を身につけてもらうことを研究室の目標としています。
適度な運動、バランスの良い食事、良質な睡眠を心がけ、仕事と生活の調和を図っています。皆さんも健康な学生生活を送ってください。
担当科目
心理学概論A プロジェクトデザイン入門(実験)(心理科学科) 心理学実験 心理学基礎実験実習Ⅰ 専門教養特別科目(心理学入門) 神経・生理心理学 心理学データ解析応用 脳生理データ解析演習 脳情報科学 心理科学専門実験・演習B 専門ゼミ(心理科学科)
研究業績
論文
- An attempt to detect concealed information with the spatial cueing paradigm
- The influence of peripheral information on a proactive process during multitasking
- Time course of attentional guidance by visual and verbal working memory representations
- Theoretical and Technical Issues Concerning the Measurement of Alpha Frequency and the Application of Signal Detection Theory: Comment on Buergers and Noppeney (2022)
- 思考発話法における発話量の個人差とワーキングメモリ容量の関係
- The relationship between alpha power and heart rate variability commonly seen in various mental states
- Effects of cell phone presence on the control of visual attention during the Navon task
- Interventions to reduce the negative consequences of interruptions on task performance and individual differences in working memory capacity
詳しい研究業績はこちら