私達、金沢工業大学は、新たな技術革命がそれまでの技術による成熟した文化を消滅させてしまう事例を数多く知っています。その一つがカセットテープ、CD、MD、ICメモリ等の技術により、今や消え去ろうとしているレコード文化です。なかでも、20世紀中葉のポピュラーミュージックはブームを起こしただけに鮮烈でした。そのリズムやサウンドはレコードから始まり映画や雑誌も巻き込み、世界の若者をひとつにし、しかも同時進行的に夢心地に誘い込んでくれた画期的な文化でした。
プロデューサー立川直樹氏のご提案と御寄贈により始まった、平成4年開設の「ポピュラー・ミュージック・コレクション/略称PMC」は、私達自身が夢中になったレコードをいつまでも鑑賞でき、かつ技術と文化の関係を問い続ける契機にしたいとの意図からでした。開設以来、予想以上の反響があり、全国のポピュラー・ファンから愛蔵レコードの御寄贈をいただき、20万枚以上のコレクションとなりました。現在、レコード盤の整理や演奏、発行日等のデータ入力を続けるとともに、どなたにも御鑑賞いただける設備と体制を整えました。おかげさまで、「PMC」は世界でも類例のないコレクションであるとの評価を数多くいただくことができました。
21世紀に入ったいま、レコードを体験した世代から、知らないし持っていない世代へ移りつつあります。それだけにレコードや関連図書の収集、情報としての整理、データベースの作成を完成させることが必要です。またファンに満足いただける鑑賞機会の提供にも心掛けていくつもりです。
これら「PMC」の活動は、私達だけで出来るものではなく、興味を抱いておられる皆様方の御力添えや御参加なくしては成就できません。「PMC」はそういう皆様方すべてのコレクションという気持で運営する所存ですので、よろしくご協力のほどお願い申し上げます。
水野一郎
PMC運営委員長 教育支援機構顧問、教授