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苦手な人も楽しみながら学べる
生活に役立つ「数学的思考」
苦手な人も楽しみながら学べる
生活に役立つ「数学的思考」
2020.3.18

『教科書では学べない数学的思考
 「 ウ~ン!」と「アハ!」から学ぶ』

ジョン・メイソン、リオン・バートン、
ケイ・ステイスィー/著
吉田新一郎/訳

新評論 定価2,640円(税込)
推薦
SL
西 誠 (にし まこと)
金沢工業大学
数理基礎教育課程 教授
 国語、数学、理科、社会、英語の主要5教科の一つとして、中学、高校で数学を学びます。たとえ、高校で文系を選択したとしても、数学を学ばずに済ますことはできません。そして、主要5教科の中で好き嫌いが最も激しいのが数学であるといわれています。

 皆さんは「数学」といわれると、どのようなことを思い浮かべるでしょうか。数字や文字を使って計算したり、ある仮定のもとに正しさを証明したりといったことが思い浮かぶのではないでしょうか。実際、中学、高校ではテストで成績をとるために、数学の定理や法則を理解し、計算によって問題を解くことに時間が割かれます。この段階で、計算がややこしかったり、計算方法を理解できぬまま進んでしまったりして、テストで計算間違いをすることで苦手意識が強くなった場合に数学が嫌いになるのではないかと考えられます。逆に数や文字の羅列を、公式を使って解くことに抵抗がなく、答えを導き出すことが楽しい人は数学が好きになるのだと思います。

 しかしながら、ただ計算して問題を解くだけが数学ではありません。数学は世の中に存在する様々な問題を解決する道具であり、自分と世界を理解するための助けになるものです。そんな数学の考え方を用いて問題の解決に取り組むことを、「数学的思考」と呼びます。数学的思考は、問題の本質を構成要素や状況から解析的に把握し、数字などの普遍的な形で明示する思考方法であるといわれています。実際、皆さんの生活の中や仕事において、これまで物事を数字に置き換えて説明したり、分析したりする課題解決のプロセスをつくらなければならない経験があった人もいると思います。そういう意味では、数学的思考は普段の生活で非常に重要なものといえるでしょう。

 本書は、「数学的に考える」とはどういうことなのかをわかりやすく説いた本です。ただし、『教科書では学べない数学的思考』という題名でありながら、数式は一切出てきません。全編にわたって、図解やイラストを手がかりに、ユニークに設定された例題を解きながら考え方を理解していく仕組みになっています。たとえば、本書の中で「封筒のストックがなくなってしまいました。自分でつくるとしたら、どうしますか?」など、一見すると「これが数学の問題なのか」と思うような問いかけがたくさん出てきます。このような問題を繰り返し練習することによって、「誰もが数学的思考で物事を考えることができる」ように構成されています。そのため、数学が好きな方はもちろん、数学に苦手意識のある方、数式にアレルギーのある方でも、数学的思考のプロセスをしっかりと把握することができると思います。そこには数学の好き嫌いにかかわらず、「だれでも数学的に考えることができるし、数学的思考は自分と世界を理解するとともに仕事や生活の助けになる」という著者たちの思いが感じられます。

 小・中・高校時代に算数や数学で挫折してコンプレックスになっている方、もちろん大の算数・数学好きの方にも、楽しみながら数学的思考の肝を理解し、身につけてもらえるのではないかと確信しています。
PERSON
推薦
SL
金沢工業大学
数理基礎教育課程 教授

西 誠 (にし まこと)
金沢大学工学部精密工学科卒。同大学大学院修士課程(精密工学)修了。同大学助手、講師を経て、1997年金沢工業大学講師。助教授を経て、2007年教授。専門は工学教育、機械加工。
PERSON
推薦
SL
西 誠
(にし まこと)
金沢工業大学
数理基礎教育課程 教授

金沢大学工学部精密工学科卒。同大学大学院修士課程(精密工学)修了。同大学助手、講師を経て、1997年金沢工業大学講師。助教授を経て、2007年教授。専門は工学教育、機械加工。
「KIT Book Review」では、金沢工業大学ライブラリーセンターのサブジェクト・ライブラリアン(SL)が本を推薦します。SLは、ライブラリーセンターにおいて膨大な専門情報の内容や質を選択判断し、その収集や利用を立案実行する中枢機能です。本学の教授陣によって構成されており、自己の専門分野はもちろん、関連分野まで質の高い最新情報を把握しています。

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