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自分の意志を正確に伝えるために
世代を問わず語彙力チェックのススメ
自分の意志を正確に伝えるために
世代を問わず語彙力チェックのススメ
2020.10.5

『超一流 できる大人の語彙力』
安田正/著
プレジデント社
定価1,540 円(税込)
推薦
SL
高原 利幸 (たかはら としゆき)
金沢工業大学
環境土木工学科 准教授
 図書紹介の依頼があったのは7月初旬。そろそろ学期末の試験が近づき、学生さんの質問も多くなってきた頃でした。自らの学生時代を振り返っても、決してまともに質問できていたとは思えませんが、何事も「やばい」で済ませる様子には、老婆心ながら危機感を抱かずにはいられませんでした。「先生の試験、やばくないですか?」はたぶん、“難しい”という意味ですよね?

 推薦図書を物色している頃、『KIT Progress』の原稿用に学生に実施したアンケート結果を、並行してまとめておりました。すると、オンライン授業の利点も多くあるものの、授業終わりにちょっとした質問ができないことに対してストレスを感じている学生さんが多くいることがわかってきました。わざわざメールでアポイントをとってまで質問するような内容とは思えないものの、ぼんやりとした疑問なので文字にすることもできず、チャットやメールでは質問しにくいということを、1、2年生全体の30%以上の学生が感じているという結果でした。前任校でも同様のことは感じていましたが、やはりしっかりとした日本語ができないと、自分のわからないところが表現できませんし、ひいてはしっかりとしたコミュニケーションもとれないことにつながりますので、ここは実践的な言葉の本にしようと探してみることにしました。

 今回紹介させていただく本の著者・安田正さんは元営業マンで、現在はコミュニケーションに関する会社を立ち上げ、多くの企業や官公庁の研修を担当されているそうです。ご本人が営業マン時代、言葉の大切さに気づいてから営業成績がアップしたという経験から、日本語には“損する言葉”と“得する言葉”が存在することを認識し、相手を気遣いながら、“得する言葉”を使ってこちらの意志を正確に伝えることが重要であると述べています。また、私が気になっていた「やばい」(本書では「ヤバい」と表記)の変換語も紹介されていました。“美味しい”や“とてもたくさん”、“よくない状況”などをすべて「『ヤバい』というひと言で済ませることで、相手に何をどのように理解してほしいかを放棄している」態度であると述べており、とても共感できました。

 一方で、我々も学生や若者に同じことをしているのでは……とも考えさせられました。本書に出てくるフレーズは正直に言って、年を重ねた自分には当たり前の言葉ばかりです。「あながち」「早急に」「割愛する」「さぞかし」「圧巻」――どれをとっても、ごく普通に使っている言葉としか思えません。しかしこれを、話し方の講師をしておられる著者がまとめたということは、私の話すことが若者に届いていない可能性が大いにあると気づかされました。

 本書は、「ワンフレーズで好印象」「考えていることがストレートに伝わる『便利な言葉』」「大人の『挨拶』『敬語』」など、場面に応じた章立てになっており、各章がフレーズごとにまとめられているため、大変読みやすくなっています。また、2020年7月に発行されたばかりで、エビデンスやテレワークといった新しいカタカナ語についても紹介されています。よく使っている言葉でも、類義語の微妙なニュアンスの違いについても説明されており、大変勉強になりました。1時間もあればすぐに読めてしまいますし、後から辞書代わりに調べてもよいでしょう。在宅勤務が長くなりそうなこの時期にぜひご一読を。そして、周囲の若者に勧めることもお忘れなく。
PERSON
推薦
SL
金沢工業大学
環境土木工学科 准教授

高原 利幸 (たかはら としゆき)
北海道大学工学部土木工学科卒。同大学工学研究科修士課程修了。同大学同研究科博士後期課程修了。応用地質(株)入社。金沢大学工学部土木建設工学科助手、シンガポール国立大学招待研究員、金沢大学理工研究域環境デザイン学系助教を経て、2019年金沢工業大学准教授。専門は土質力学、地盤工学、地盤防災。
PERSON
推薦
SL
高原 利幸
(たかはら としゆき)
金沢工業大学
環境土木工学科 准教授

北海道大学工学部土木工学科卒。同大学工学研究科修士課程修了。同大学同研究科博士後期課程修了。応用地質(株)入社。金沢大学工学部土木建設工学科助手、シンガポール国立大学招待研究員、金沢大学理工研究域環境デザイン学系助教を経て、2019年金沢工業大学准教授。専門は土質力学、地盤工学、地盤防災。
「KIT Book Review」では、金沢工業大学ライブラリーセンターのサブジェクト・ライブラリアン(SL)が本を推薦します。SLは、ライブラリーセンターにおいて膨大な専門情報の内容や質を選択判断し、その収集や利用を立案実行する中枢機能です。本学の教授陣によって構成されており、自己の専門分野はもちろん、関連分野まで質の高い最新情報を把握しています。

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