ものづくりの技術、
伝統とその裏にある規格の
素晴らしさと”ざんねん”さを知るものづくりの技術、
伝統とその裏にある規格の
素晴らしさと”ざんねん”さを知る
伝統とその裏にある規格の
素晴らしさと”ざんねん”さを知るものづくりの技術、
伝統とその裏にある規格の
素晴らしさと”ざんねん”さを知る
2021.12.17
『ざんねんな日本のものづくり 
ゼロからの知財戦略』
日本知財標準事務所/著
総合法令出版 定価1,430 円(税込)
ゼロからの知財戦略』
日本知財標準事務所/著
総合法令出版 定価1,430 円(税込)
推薦
SL
SL
林 晃生
(はやし あきお)
金沢工業大学
機械工学科 准教授
金沢工業大学
機械工学科 准教授
日本のものづくりの何が残念なのだろうか。表紙に巻かれている帯には「なぜ、日本人に『iPhone』がつくれなかったのか」と書かれています。日本の各社がケータイ・スマートフォンを出してきた中で、iPhoneが主流となったことは私がまさに身をもって体験してきたことであり、これが日本の「ざんねんな」部分であるということはもちろん思い当たる。ものづくりに対する研究をするうえで、企業の開発から知財戦略も含めて、そう言われる理由が気になり、本書を手に取ってみました。
本書の「はじめに」では、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』という映画のシリーズのワンシーンから、日本の製品が米国や世界に「良いもの」として、1980年代には広く認識されるようになったことを述べています(この映画も、「若い方はご存知ないかもしれませんが」と書かれていますが、ぜひとも観てほしい作品です。タイムマシンと空飛ぶクルマ、誰もが夢見る)。そこから、「ものづくり大国」として発展して「メイド・イン・ジャパン」を誇ってきた日本が、実は「ガラパゴス化」しており、「ざんねんな」ものづくりをしているということを、この本では警鐘しています。
第1章では「ざんねんな日本の法律と規格」として、JIS(日本)やISO(国際)の説明がされています。私の所属する機械工学科でも両者はよく見る規格です。著者はこの2つの規格を国内基準でまず考えてしまう日本に問題があるといいます。
第2章では「素晴らしくもざんねんな日本の伝統」として、柔道と剣道が例に挙げられています。伝統と武道が、ものづくりに関係あるのかと思われるかもしれません。剣道に比べて、国際ルールをつくり上げた柔道が世界に広まった理由としています。第1章で述べられた、世界基準のルールづくりということです。さらには茶道の流派や、日本製品の規格の例としては畳、紙のサイズなどが挙げられています。紙のA版サイズはISOの国際規格、B版は江戸時代から続く日本の独自規格で、FAXが登場したときに切り替わりました。
柔道のようにものづくりにおいても、国際化にむけて「伝統」にとらわれきらないこと、本質からずれない、そして日本人以外の人にも受け入れられるルールや仕様が求められているようです。
第3章では「技術力が高くもざんねんな日本のものづくり」として、様々な“もの”の事例が書かれています。工業製品ではスマートフォンや電車、国産ジェット機、また食品開発ではいちご、サツマイモ、シャインマスカットも紹介されており、日本産の“もの”の性能が世界で認められるなかで「ガラパゴス化」していると言わしめる理由が、どれもなるほどと思うばかりでした。
第4章は「日本の国力を底上げするルール作り」として、日本の技術が世界基準になりつつある製品が紹介されます。生体認証やEV、そしてQRコードなどです。1994年にデンソー(現・デンソーウェーブ)が開発し、近年急に身近になったQRコードですが、普及の背景には、世界規格と商標登録によるブランド化があったということです。
第5章は「無形資産こそ財産 ルールを作って稼いでいく力をつける」として、これまでのものづくりの話から、日本が国際的ルールをつくっていく必要性と、ルールをつくったとしても、判定する人材が少ないのが日本の現状で、これからその育成も重要であると述べられています。
以上、本書の内容をかいつまんでみましたが、日本の技術そのものが残念だといわれているのではなく、様々な日本の技術だけでなく文化・伝統を交えた紹介があり、非常に興味を持って読むことができました。そのうえで、日本が今後、世界各国と渡り合っていくためには、技術力だけでなく、世界をリードするものづくりが必要であるということです。そこには世界共通となりうるルールや基準を、自らつくり出していく積極性が求められているようです。
私も特許の出願などをすることもありますが、この本を読んだことで、日本人としての技術力のアピールと技術大国としての日本が生き残っていくためには……ということを改めて考えさせられました。これを読まれている皆さんも様々な分野で活躍されている、またはこれから活躍されることと思いますが、ぜひ世界を相手にこれからの日本を背負って立つ身となって考えていただき、世界に通ずるルールと規格を産み出し、羽ばたいていただきたいと思います。
本書は、最終的には企業の知財戦略・ビジネスモデルを示唆するものではありますが、一方で日本の素晴らしい技術や製品、伝統を改めて知るとともに、その裏にある(一部、日本のざんねんな)規格といったものを知ることができるので、学生諸君にもお薦めです。
本書の「はじめに」では、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』という映画のシリーズのワンシーンから、日本の製品が米国や世界に「良いもの」として、1980年代には広く認識されるようになったことを述べています(この映画も、「若い方はご存知ないかもしれませんが」と書かれていますが、ぜひとも観てほしい作品です。タイムマシンと空飛ぶクルマ、誰もが夢見る)。そこから、「ものづくり大国」として発展して「メイド・イン・ジャパン」を誇ってきた日本が、実は「ガラパゴス化」しており、「ざんねんな」ものづくりをしているということを、この本では警鐘しています。
第1章では「ざんねんな日本の法律と規格」として、JIS(日本)やISO(国際)の説明がされています。私の所属する機械工学科でも両者はよく見る規格です。著者はこの2つの規格を国内基準でまず考えてしまう日本に問題があるといいます。
第2章では「素晴らしくもざんねんな日本の伝統」として、柔道と剣道が例に挙げられています。伝統と武道が、ものづくりに関係あるのかと思われるかもしれません。剣道に比べて、国際ルールをつくり上げた柔道が世界に広まった理由としています。第1章で述べられた、世界基準のルールづくりということです。さらには茶道の流派や、日本製品の規格の例としては畳、紙のサイズなどが挙げられています。紙のA版サイズはISOの国際規格、B版は江戸時代から続く日本の独自規格で、FAXが登場したときに切り替わりました。
柔道のようにものづくりにおいても、国際化にむけて「伝統」にとらわれきらないこと、本質からずれない、そして日本人以外の人にも受け入れられるルールや仕様が求められているようです。
第3章では「技術力が高くもざんねんな日本のものづくり」として、様々な“もの”の事例が書かれています。工業製品ではスマートフォンや電車、国産ジェット機、また食品開発ではいちご、サツマイモ、シャインマスカットも紹介されており、日本産の“もの”の性能が世界で認められるなかで「ガラパゴス化」していると言わしめる理由が、どれもなるほどと思うばかりでした。
第4章は「日本の国力を底上げするルール作り」として、日本の技術が世界基準になりつつある製品が紹介されます。生体認証やEV、そしてQRコードなどです。1994年にデンソー(現・デンソーウェーブ)が開発し、近年急に身近になったQRコードですが、普及の背景には、世界規格と商標登録によるブランド化があったということです。
第5章は「無形資産こそ財産 ルールを作って稼いでいく力をつける」として、これまでのものづくりの話から、日本が国際的ルールをつくっていく必要性と、ルールをつくったとしても、判定する人材が少ないのが日本の現状で、これからその育成も重要であると述べられています。
以上、本書の内容をかいつまんでみましたが、日本の技術そのものが残念だといわれているのではなく、様々な日本の技術だけでなく文化・伝統を交えた紹介があり、非常に興味を持って読むことができました。そのうえで、日本が今後、世界各国と渡り合っていくためには、技術力だけでなく、世界をリードするものづくりが必要であるということです。そこには世界共通となりうるルールや基準を、自らつくり出していく積極性が求められているようです。
私も特許の出願などをすることもありますが、この本を読んだことで、日本人としての技術力のアピールと技術大国としての日本が生き残っていくためには……ということを改めて考えさせられました。これを読まれている皆さんも様々な分野で活躍されている、またはこれから活躍されることと思いますが、ぜひ世界を相手にこれからの日本を背負って立つ身となって考えていただき、世界に通ずるルールと規格を産み出し、羽ばたいていただきたいと思います。
本書は、最終的には企業の知財戦略・ビジネスモデルを示唆するものではありますが、一方で日本の素晴らしい技術や製品、伝統を改めて知るとともに、その裏にある(一部、日本のざんねんな)規格といったものを知ることができるので、学生諸君にもお薦めです。
推薦
SL
金沢工業大学SL
機械工学科 准教授
林 晃生 (はやし あきお)
推薦
SL
林 晃生SL
(はやし あきお)
金沢工業大学
機械工学科 准教授
神戸大学工学部機械工学科卒。同大学大学院自然科学研究科機械工学専攻博士前期課程修了。同大学大学院工学研究科機械工学専攻博士後期課程修了。神奈川大学工学部特別助教を経て、2017年金沢工業大学講師就任。2021年准教授。専門は工作機械。
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