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今の若者たちに伝えたい
自分を鍛えるための実践的な方法
今の若者たちに伝えたい
自分を鍛えるための実践的な方法
2023.12.11

『自分を鍛える!』
ジョン・トッド/著
渡部昇一/訳

三笠書房 定価1,320円(税込)
推薦
SL
津田 敏宏 (つだ としひろ)
金沢工業大学
電気電子工学科 准教授
 大学を卒業して社会に出ていくと、多くのエンジニアやビジネスマンが、大学で学んだことに限らず、新しい知識を得るために日々悪銭苦闘しているものと思います。もしくは、組織の上下関係の間に入って、自分がどのように立ち振る舞うべきか、日々頭を悩ませることもあると思います。

 本書は1835年にアメリカのジョン・トッドさんによって書かれた書籍『Todd's Self-Improvement Manual』を上智大学名誉教授の渡部昇一先生が翻訳して出版されたものです。若い学生やビジネスマンが自らをどのように鍛えていくべきかが記載されています。私は若くはないのですが、今改めて本書を手に取ってみると、その内容に納得できることもあります。

 この本との出会いのきっかけは、私が修士1年の頃、金沢工業大学のライブラリーセンターの本棚にたまたま並んでいたのを見たことでした。第一印象としては、よくある自己啓発本の一つであり、しかもタイトルがそんなに格好良くないと感じたのを覚えています。当時は大学院で発電機の研究に取り組んでおり、解析や機内の電磁現象の解明に頭を悩ませている頃だったと思います。国内外の大学、企業が発行する論文を読みつつも、知識不足を痛感しており、なんとか新しい知識を上手に身に付けられないかと感じていたこともあり、この本のタイトルに目を奪われたものと思います。

 本書は著作家で牧師でもあるジョン・トッドさんが、人間観察及び数々の文献をもとに、記述され、読書の仕方、よい習慣をつくることの大事さ、他人との話し方など、著者の洞察に基づいて記述されたものです。さらには、体の鍛え方とその意味、健康について具体的に書かれており、学術的というよりもほぼ実践的な内容です。

 本書の内容はというと、初めて知るような内容ではないのですが、単純だけどとても重要なことが書かれています。たとえば本書の第2章には「然るべき義務や本来の仕事をおろそかにしている人間は、なんとか自分の愚かさを忘れさせてくれるようなことで頭をいっぱいにし、やらなければいけない仕事はそっちのけで、自分の得になることだけに一生懸命になっているものである」と書かれています。書評を書いていてギクッとするような記述ですが、本来はもっと高度で大事な仕事があるのに、これは自分の仕事だと殻を破らずに忙しそうにしている状況もあると思います。

 また、心身ともに健康で頭脳の働きを活発にする方法として、「散歩」を挙げています。その理由は手軽で道具がいらないからだそうです。現代おいても散歩の効果を説明した記事を多く見ますが、目や耳を使って、はつらつとした気分になるのは散歩以外ないと書かれています。著者自身、若い頃から病弱で体が弱い方だったということもあり、散歩を初めとする「訓練法」は具体性があります。「散歩とかそんな時間なんてないよ」とおっしゃる方もいると思いますが、安心してください、本書にはそのための時間のつくり方が記載されています。

 その他、「人に語ることで、その本のエッセンスは確実にものにできる」や「何時間勉強しなければならない、ということは絶対にない」など、学生に伝えたい内容が記述されています。

 現在からおおよそ200年前に発行された本ですが、現代社会においても十分通じる内容だと思います。私の研究室の大学院生が卒業する際、社会で打ちのめされることなく活躍することを祈念して全員にプレゼントしています。社会人だけでなく、学生にもお勧めしたい本です。ごく当たり前の内容が多く書かれていますが、皆さんの心に刺さる内容もあると思います。そういう私は、本書の内容を全て実践できているかというとそうではありません。皆さんとともに本書を片手に取り、改めて自分のことを振り返ってみたいと思います。
PERSON
推薦
SL
金沢工業大学
電気電子工学科 准教授

津田 敏宏 (つだ としひろ) 博士(工学)
金沢工業大学工学部電気工学科卒。金沢工業大学大学院工学研究科電気電子工学専攻博士後期課程修了。東芝三菱電機産業システム株式会社で勤務した後、2018年金沢工業大学講師就任。2023年准教授。専門は発電機、電動機、電気機器。
PERSON
推薦
SL
津田 敏宏
(つだ としひろ)
金沢工業大学
電気電子工学科 准教授

金沢工業大学工学部電気工学科卒。金沢工業大学大学院工学研究科電気電子工学専攻博士後期課程修了。東芝三菱電機産業システム株式会社で勤務した後、2018年金沢工業大学講師就任。2023年准教授。専門は発電機、電動機、電気機器。
「KIT Book Review」では、金沢工業大学ライブラリーセンターのサブジェクト・ライブラリアン(SL)が本を推薦します。SLは、ライブラリーセンターにおいて膨大な専門情報の内容や質を選択判断し、その収集や利用を立案実行する中枢機能です。本学の教授陣によって構成されており、自己の専門分野はもちろん、関連分野まで質の高い最新情報を把握しています。

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