6学部17学科に“ダイナミックに進化”
大澤学長に聞く金沢工業大学の未来6学部17学科に“ダイナミックに進化”
大澤学長に聞く金沢工業大学の未来
大澤学長に聞く金沢工業大学の未来6学部17学科に“ダイナミックに進化”
大澤学長に聞く金沢工業大学の未来
2024.12.23
2025年4月、金沢工業大学は「文理の枠を超えて共創する社会実装型総合大学へ!」、従来の4学部12学科から新たに6学部17学科体制へと進化する。“文理の枠を超える”ことの意味とは? “社会実装型総合大学”がめざすものとは? 工業大学から大きく進化することになった背景と、これからの金沢工業大学が描く未来について、大澤敏学長に話をうかがった。
金沢工業大学
学長
大澤 敏 (おおさわ さとし) 教授・理学博士
東京理科大学理学部化学科卒。同大学大学院理学研究科博士課程(化学)修了。マサチューセッツ大学博士研究員を経て、1996年金沢工業大学講師。助教授を経て、2004年教授。学生部、教務部、研究部、進路部などの副部長、バイオ・化学部学部長、教務部長を経て、2015年副学長。この間、米国パデュー大学、スウェーデン王立工科大学、ドイツカールスルーエ大学等で工学教育の視察・研究に従事。2016年第6代学長(現在3期目)。大学院工学研究科研究科長、地方創生研究所所長、基礎教育部部長を兼務。専門は環境調和材料、生体材料、生分解性高分子。
学長
大澤 敏 (おおさわ さとし) 教授・理学博士
大澤 敏
(おおさわ さとし) 教授・理学博士
金沢工業大学
学長
(おおさわ さとし) 教授・理学博士
金沢工業大学
学長
東京理科大学理学部化学科卒。同大学大学院理学研究科博士課程(化学)修了。マサチューセッツ大学博士研究員を経て、1996年金沢工業大学講師。助教授を経て、2004年教授。学生部、教務部、研究部、進路部などの副部長、バイオ・化学部学部長、教務部長を経て、2015年副学長。この間、米国パデュー大学、スウェーデン王立工科大学、ドイツカールスルーエ大学等で工学教育の視察・研究に従事。2016年第6代学長(現在3期目)。大学院工学研究科研究科長、地方創生研究所所長、基礎教育部部長を兼務。専門は環境調和材料、生体材料、生分解性高分子。
新たなイノベーションを起こすには
文理の枠を超えた共創が必要
文理の枠を超えた共創が必要
高度な技術力によって“ものづくり大国”として長く世界を席巻してきたわが国だが、近年はIT分野をはじめ多くの分野で国際的な競争力が低下。それが長期的な日本経済の低迷にもつながっている。しかも世界トップの速さで進行する少子高齢化によって、あらゆる産業においてその成長を担う人材の不足が深刻化しつつある今、わが国の未来を支える人材の育成が高等教育の場である大学にとっても急務となっている。
「内閣総理大臣を座長とする教育未来創造会議の第一次提言では、2030年に先端IT人材が54.5万人も不足すると指摘されています。ところがわが国の理工系学部への入学者の割合はとても低く、OECD平均27%に対して17%、女性に限るとOECD平均15%に対してわずか7%しかありません。
加えて、今や世の中の流れはデジタル技術やデータを活用してビジネスに変革を起こすDX(デジタル・トランスフォーメーション)、地球温暖化対策と経済成長を両立させて産業構造を変革させるGX(グリーン・トランスフォーメーション)、企業活動と持続可能な社会の両立を実現するSX(サスティナビリティ・トランスフォーメーション)へと完全にシフトしつつあり、このままではこれからの成長分野といわれるDX、GX、SXを担える人材が不足するのは明らかです。
事実、すでにDXを推進するためのデジタル人材の不足は顕著であり、さらにカーボンニュートラルの部分を担うグリーン人材も圧倒的に不足することがわかっています。産業界をはじめとする社会からの要請を受けて、本学では3年前から学部・学科の改編を検討してきました。そして2025年4月からは体制を6学部17学科へと進化させることで、持続可能でグローバルに活躍できる高度専門人材を育成することになりました」
「内閣総理大臣を座長とする教育未来創造会議の第一次提言では、2030年に先端IT人材が54.5万人も不足すると指摘されています。ところがわが国の理工系学部への入学者の割合はとても低く、OECD平均27%に対して17%、女性に限るとOECD平均15%に対してわずか7%しかありません。
加えて、今や世の中の流れはデジタル技術やデータを活用してビジネスに変革を起こすDX(デジタル・トランスフォーメーション)、地球温暖化対策と経済成長を両立させて産業構造を変革させるGX(グリーン・トランスフォーメーション)、企業活動と持続可能な社会の両立を実現するSX(サスティナビリティ・トランスフォーメーション)へと完全にシフトしつつあり、このままではこれからの成長分野といわれるDX、GX、SXを担える人材が不足するのは明らかです。
事実、すでにDXを推進するためのデジタル人材の不足は顕著であり、さらにカーボンニュートラルの部分を担うグリーン人材も圧倒的に不足することがわかっています。産業界をはじめとする社会からの要請を受けて、本学では3年前から学部・学科の改編を検討してきました。そして2025年4月からは体制を6学部17学科へと進化させることで、持続可能でグローバルに活躍できる高度専門人材を育成することになりました」
「教育付加価値日本一」を掲げる金沢工業大学では、学生に時代の最前線の学問や研究を学んで卒業してもらうために、これまでも入学時と卒業時の社会情勢の変化を見越して基本的なカリキュラムを組み、それを常にアップデートさせながら4年間の教育プログラムを作ってきた。しかし、特に進化のスピードが速いDXの分野においては大幅なアップデートが必要という現実を踏まえて、今回の学部・学科の再編を決めたと大澤学長は話す。
「本学では高度経済成長の時代から技術を深掘りする教育を行ってきたので、技術力や研究成果には自信があります。しかし、これからはその技術をどんな分野に応用できるのか、それがどんなニーズに対する問題解決につながるのかという、社会実装まで考える必要があります。そのためには工業大学が持っている工学技術という底力は残しつつ、新しいイノベーションを起こすために文系志向の学生も積極的に受け入れていく必要性があります。もはや技術者だけの集団でイノベーションを起こせる時代ではなくなっているのです。
私は機械や電気といった工学の現場に足を運ぶことも多いのですが、これからはどんなに機械の性能や技術が優れていても、それだけでは商品になりません。そこにAIやデータサイエンスといった“新しい情報技術”を活用したシステムが付随していなければ、本当に売れる商品にはなり得ません。
こうした情報技術を活用するために企業側が求めているのは単なる工学技術者的な学生ではなく、GXのマインドを持ってサステナブルな社会を創っていく構想力と実行力がある学生であり、多くの人とコミュニケーションできる人材なのです。このような人材なしにはもはや新しい事業を起こせないということを、急速に進むDX、GX、SXへの対応に迫られている現場では痛感しており、そのための人材育成を求める社会からの声は年々大きくなっています」
「本学では高度経済成長の時代から技術を深掘りする教育を行ってきたので、技術力や研究成果には自信があります。しかし、これからはその技術をどんな分野に応用できるのか、それがどんなニーズに対する問題解決につながるのかという、社会実装まで考える必要があります。そのためには工業大学が持っている工学技術という底力は残しつつ、新しいイノベーションを起こすために文系志向の学生も積極的に受け入れていく必要性があります。もはや技術者だけの集団でイノベーションを起こせる時代ではなくなっているのです。
私は機械や電気といった工学の現場に足を運ぶことも多いのですが、これからはどんなに機械の性能や技術が優れていても、それだけでは商品になりません。そこにAIやデータサイエンスといった“新しい情報技術”を活用したシステムが付随していなければ、本当に売れる商品にはなり得ません。
こうした情報技術を活用するために企業側が求めているのは単なる工学技術者的な学生ではなく、GXのマインドを持ってサステナブルな社会を創っていく構想力と実行力がある学生であり、多くの人とコミュニケーションできる人材なのです。このような人材なしにはもはや新しい事業を起こせないということを、急速に進むDX、GX、SXへの対応に迫られている現場では痛感しており、そのための人材育成を求める社会からの声は年々大きくなっています」
確かに大手メーカーをはじめとする多くの製造業の現場では、いまや理系人材と文系人材を混在させなければ新たなイノベーションは起こせないという考えが主流だ。この考え方は工業大学においても当てはまることで、文理の枠を超えて共創していかなければ、もはや新しいものは生み出せないと大澤学長は強調する。
「そもそも学びの領域や学部を、理系か文系で分けて考えること自体がおかしな話なのです。世の中は男女半々で成り立っているというのに、理工系の学部を志望するのは男子だけで、女子の比率が相変わらず低いままというのでは現実の“社会のありよう”から大きくかけ離れていると言わざるを得ません。
教育未来創造会議の提言でも女性活躍を掲げていますが、本学では早い時期から女子学生比率20%をめざして改革に取り組んできました。現状では全学生の15%、約800人の女子学生がいますが、これでもまだ少ないので学部学科の再編でなんとか30~40%まで増やしたいと考えています」
「そもそも学びの領域や学部を、理系か文系で分けて考えること自体がおかしな話なのです。世の中は男女半々で成り立っているというのに、理工系の学部を志望するのは男子だけで、女子の比率が相変わらず低いままというのでは現実の“社会のありよう”から大きくかけ離れていると言わざるを得ません。
教育未来創造会議の提言でも女性活躍を掲げていますが、本学では早い時期から女子学生比率20%をめざして改革に取り組んできました。現状では全学生の15%、約800人の女子学生がいますが、これでもまだ少ないので学部学科の再編でなんとか30~40%まで増やしたいと考えています」
情報系3学部と基幹3学部の体制で
“工業大学”の既成概念から脱却へ
“工業大学”の既成概念から脱却へ
2025年4月から、学部は「情報デザイン学部」「メディア情報学部」「情報理工学部」「バイオ・化学部」「工学部」「建築学部」の6つに再編される。前者の3学部は情報系学部として新設されるのだが、その中の「情報デザイン学部」と「メディア情報学部」は“文理探究型学部”と位置づけられ、文系志向の学生も積極的に受け入れていくことになるという。
「社会問題を解決していくには技術だけでなく、文化や芸術、生活などを網羅する“文系の視点”も重要になります。文理探究の2学部ではこれまでの本学の教育の枠を超えて文系志向の学生を積極的に受け入れることで、技術を深掘りする傾向が強い理工系志向の学生と、幅広い知見を活用する傾向が強い文系志向の学生が共に学ぶキャンパス環境を創出します。
文系と理系の学生が一緒の場と空間(フィジカル、サイバー)で学ぶことによって、理系の人が文系的な教養(リベラルアーツ)を身に付けることができれば、そこから得られる新たな着想が優れた研究成果につながる可能性が広がるわけです。こうしてイノベーションを生むための“素地”を形成することが、私たちがめざす社会実装型総合大学の姿だと思います。
文理探究型学部での学びは、もちろん文系志向の学生にも大きなメリットをもたらします。というのも、これからの社会ではあらゆるビジネスの分野でデジタル、AI、生成AI、データサイエンスといった情報技術の知識が不可欠であり、それをどう活用できるのか、それによってどんな社会が構築できるのかという“デザイン力”を持つことが非常に重要になってきますから、漠然と自分は文系かなと考えている高校生にとっても、文理の枠を超えて新しいことをより多様に深く学ぶことは、将来の職業選択の幅を広げることにつながるということを知ってほしいですね」
「社会問題を解決していくには技術だけでなく、文化や芸術、生活などを網羅する“文系の視点”も重要になります。文理探究の2学部ではこれまでの本学の教育の枠を超えて文系志向の学生を積極的に受け入れることで、技術を深掘りする傾向が強い理工系志向の学生と、幅広い知見を活用する傾向が強い文系志向の学生が共に学ぶキャンパス環境を創出します。
文系と理系の学生が一緒の場と空間(フィジカル、サイバー)で学ぶことによって、理系の人が文系的な教養(リベラルアーツ)を身に付けることができれば、そこから得られる新たな着想が優れた研究成果につながる可能性が広がるわけです。こうしてイノベーションを生むための“素地”を形成することが、私たちがめざす社会実装型総合大学の姿だと思います。
文理探究型学部での学びは、もちろん文系志向の学生にも大きなメリットをもたらします。というのも、これからの社会ではあらゆるビジネスの分野でデジタル、AI、生成AI、データサイエンスといった情報技術の知識が不可欠であり、それをどう活用できるのか、それによってどんな社会が構築できるのかという“デザイン力”を持つことが非常に重要になってきますから、漠然と自分は文系かなと考えている高校生にとっても、文理の枠を超えて新しいことをより多様に深く学ぶことは、将来の職業選択の幅を広げることにつながるということを知ってほしいですね」
新設される「情報デザイン学部」では、文理の枠を超え、データサイエンス力×デザイン力×マネジメント力で多様な社会課題に応えられる人材育成をめざす
同じく新設される「メディア情報学部」も文理の枠を超え、情報技術×デザイン力×心理情報で、社会への新しい価値の創出をめざす
一方、これまで工業大学で中核を担っていた「工学部」「建築学部」「バイオ・化学部」については、産業を支える“基幹3学部”と位置づけて、専門領域の学びと情報技術を浸透させていくという。
「すべてを情報系学部に変えるのではなく、基幹となる理工系の学部はしっかり残します。そのうえで、それぞれの専門分野に加えて新しい情報技術を学べるようにカリキュラムも大きく変えていくことで、全学的に“情報に強い金沢工業大学”をめざしたいと考えています。
情報系3学部と基幹3学部が一体化する形でプロジェクトを進めていくことで、本学はさらに進化していきます。そのためにも常に社会との往還を意識しながら、いま社会で何が起こっているのか、そして5年後には何が起こるのかを私たちはしっかりウォッチしなければなりません。そして10年先を見据えて、常に何が必要なのかをアップグレードさせながら教育を行っていきたいと考えています」
金沢工業大学では以前から、学部を超えて協働しながら研究成果を社会に実装していくプロジェクト型の教育を重視してきたが、来年度からはすべての学部で「イノベーション基礎」という授業を必須にするという。
これはイノベーションを起こすにはどうすればいいのかという方法論や技術を学ぶ授業で、そのベースとなっているのが「デザインシンキング」という思考法だ。デザインシンキングとは相手の立場に立って共感することでニーズや課題を見つけ出し、それを解決するためのアイデアや発想をみんなで出し合いながら協創していくというもので、数年前から全教員参加のもとでデザインシンキングに関する研修会を重ねたきたそうだ。
「すべてを情報系学部に変えるのではなく、基幹となる理工系の学部はしっかり残します。そのうえで、それぞれの専門分野に加えて新しい情報技術を学べるようにカリキュラムも大きく変えていくことで、全学的に“情報に強い金沢工業大学”をめざしたいと考えています。
情報系3学部と基幹3学部が一体化する形でプロジェクトを進めていくことで、本学はさらに進化していきます。そのためにも常に社会との往還を意識しながら、いま社会で何が起こっているのか、そして5年後には何が起こるのかを私たちはしっかりウォッチしなければなりません。そして10年先を見据えて、常に何が必要なのかをアップグレードさせながら教育を行っていきたいと考えています」
金沢工業大学では以前から、学部を超えて協働しながら研究成果を社会に実装していくプロジェクト型の教育を重視してきたが、来年度からはすべての学部で「イノベーション基礎」という授業を必須にするという。
これはイノベーションを起こすにはどうすればいいのかという方法論や技術を学ぶ授業で、そのベースとなっているのが「デザインシンキング」という思考法だ。デザインシンキングとは相手の立場に立って共感することでニーズや課題を見つけ出し、それを解決するためのアイデアや発想をみんなで出し合いながら協創していくというもので、数年前から全教員参加のもとでデザインシンキングに関する研修会を重ねたきたそうだ。
「これから何か新しいものを作ろうとする場合、すでにある問題を解決するための方法を考える改善型の思考法に加えて、変化し続けるユーザーの隠れたニーズを見つけ出して、本当に必要なものは何なのかを導き出すというアプローチが必要になります。これがデザインシンキングの基本的な考え方であり、これからの社会ではデザインシンキングの考え方がないとイノベーションは起こらないと言われるほど重要な考え方です。
ユーザー視点に立って課題の本質を見つけることは、DXを推進するうえでも基本となる思考プロセスとして多方面から注目されていますが、こうした思考法には理系も文系もないので、デザインシンキングの考え方を学ぶことはイノベーションを起こすうえでとても大切なことなのです」
ユーザー視点に立って課題の本質を見つけることは、DXを推進するうえでも基本となる思考プロセスとして多方面から注目されていますが、こうした思考法には理系も文系もないので、デザインシンキングの考え方を学ぶことはイノベーションを起こすうえでとても大切なことなのです」
大学院もコーオプ教育も進化させ
KITの建学綱領を新しい形で具現化
KITの建学綱領を新しい形で具現化
資源の少ないわが国が再び技術大国ニッポンとして復活するためには、より高度な理工系人材の育成も不可欠であり、そこを担うのが大学院ということになる。2025年に入学した学生が大学院に進学するのは4年先になるが、大学院でも改編は進むのだろうか。
「情報工学科、知能情報システム学科、ロボティクス学科からなる情報理工学部を新設したので、大学院についてもイノベーションを創出できる高度情報専門技術者・研究者の育成をめざして再編する予定です。大学院の高度化にはどうしても研究所が必要になりますが、本学には海外も含めると34もの研究所があるので、そこと一体化して再編を進めていくことになります。
研究所には生活環境研究所や地方創生研究所、デザインアートラボといった融合領域を対象にしたものもいくつかあるので、文理探究型学部の学生も自分の専門領域を深めていくことができます。
また、大学院の研究やプロジェクトには学部生も参加しますし、さらに本学が以前から積極的に進めてきた企業との産学協同の取り組みもあるので、重層的で実践的な学びが可能になります。ただ、要素技術としてここをブレークスルーしないと産業が次の段階に発展していかないという、例えば量子コンピュータのような基礎研究については、これまでどおりにしっかりと深掘りしていくことも大切だと考えています」
そしてもう一つ、金沢工業大学ではこれまで以上に「コーオプ教育」も積極的に進めていくという。これは学生が企業での業務を通して学ぶ就業体験型学修プログラムのことで、学生は大学の教員と企業の実務家教員が作ったプログラムに沿って給料をもらいながら働くというものだ。もちろん、専門知識を社会実装することも、働くことで大学の単位を取得することもできる。
「情報工学科、知能情報システム学科、ロボティクス学科からなる情報理工学部を新設したので、大学院についてもイノベーションを創出できる高度情報専門技術者・研究者の育成をめざして再編する予定です。大学院の高度化にはどうしても研究所が必要になりますが、本学には海外も含めると34もの研究所があるので、そこと一体化して再編を進めていくことになります。
研究所には生活環境研究所や地方創生研究所、デザインアートラボといった融合領域を対象にしたものもいくつかあるので、文理探究型学部の学生も自分の専門領域を深めていくことができます。
また、大学院の研究やプロジェクトには学部生も参加しますし、さらに本学が以前から積極的に進めてきた企業との産学協同の取り組みもあるので、重層的で実践的な学びが可能になります。ただ、要素技術としてここをブレークスルーしないと産業が次の段階に発展していかないという、例えば量子コンピュータのような基礎研究については、これまでどおりにしっかりと深掘りしていくことも大切だと考えています」
そしてもう一つ、金沢工業大学ではこれまで以上に「コーオプ教育」も積極的に進めていくという。これは学生が企業での業務を通して学ぶ就業体験型学修プログラムのことで、学生は大学の教員と企業の実務家教員が作ったプログラムに沿って給料をもらいながら働くというものだ。もちろん、専門知識を社会実装することも、働くことで大学の単位を取得することもできる。
「教育・人材育成における社会実装のいちばん進んだ形が、コーオプ教育ではないでしょうか。実際に企業の現場で数カ月働いてそこでどのようなことが行われているのかを肌で感じることで、学生の意識やものの考え方が全然違ってきます。
最初は企業側も『え? お金を払うの?』という感じで、コーオプ教育の仕組みを理解してもらうのに時間がかかりましたが、現在は理解もだいぶ進んで大手メーカーなど40社以上で本学の学生が働きながら学んでいます。
アメリカでは毎年30万人の学生がコーオプ教育に参加していることからもわかるように、人手不足のなかで新しい技術を持った学生を自社の進化の枠組みの中に組み込めるというのは、企業にとってもメリットです。日本にはまだこうした文化が根づいていませんが、本学がこのコーオプ教育を牽引していけるようにさらに力を入れていきたいと考えています」
少子化の影響による定員割れや3大都市圏の大学への学生の集中など、地方の私立大学を取り巻く環境は確実に厳しさを増している。そんななか、常に新しい取り組みにチャレンジしてきた金沢工業大学は、2025年4月にいよいよ工科系単科大学から社会実装型総合大学へと生まれ変わる。果たしてそこにはどのようなキャンパスの風景が広がっているのか?そして5年後、10年後に金沢工業大学はどのような大学へと変貌を遂げているのか?大いに楽しみであり、期待はふくらむばかりだ。
最初は企業側も『え? お金を払うの?』という感じで、コーオプ教育の仕組みを理解してもらうのに時間がかかりましたが、現在は理解もだいぶ進んで大手メーカーなど40社以上で本学の学生が働きながら学んでいます。
アメリカでは毎年30万人の学生がコーオプ教育に参加していることからもわかるように、人手不足のなかで新しい技術を持った学生を自社の進化の枠組みの中に組み込めるというのは、企業にとってもメリットです。日本にはまだこうした文化が根づいていませんが、本学がこのコーオプ教育を牽引していけるようにさらに力を入れていきたいと考えています」
少子化の影響による定員割れや3大都市圏の大学への学生の集中など、地方の私立大学を取り巻く環境は確実に厳しさを増している。そんななか、常に新しい取り組みにチャレンジしてきた金沢工業大学は、2025年4月にいよいよ工科系単科大学から社会実装型総合大学へと生まれ変わる。果たしてそこにはどのようなキャンパスの風景が広がっているのか?そして5年後、10年後に金沢工業大学はどのような大学へと変貌を遂げているのか?大いに楽しみであり、期待はふくらむばかりだ。
26号館Challenge Lab(クラスター研究室)
「今回の学部・学科の再編は、社会からの要請に応じて社会の期待に応える人材を育てるためではありますが、前述した教育未来創造会議の提言に本学の『高邁な人間形成』『深遠な技術革新』『雄大な産学協同』という3つの建学綱領を当てはめてみると、その基本的な考え方は一致しているのです。
社会実装に向けて多様な人とコミュニケーションするための『人間形成』、技術者集団だけでは乗り越えられない壁を破るための『技術革新』、成長分野であるグリーン、デジタルを強化するための『産学協同』。こうした考え方は、すなわち建学綱領を新しい形で具現化しているということを、卒業生の皆様にはご理解いただけるのではないでしょうか。
文理の枠を超えた社会実装型総合大学へと進化していく金沢工業大学が、社会実装を通して技術革新を起こしていくためには、産業界で活躍されている卒業生の皆様の知見がとても大切だと考えていますので、ぜひお力を貸していただければ幸いです。また、本学では社会人のための学び直しの場であるリカレント教育のプログラムなども用意していますので、卒業生の皆様にはお気軽にキャンパスに足を運んでいただきたいと考えています。
最後になりますが、金沢工業大学では未来に向けて教育と研究を進化させていきますので、卒業生の皆様の息子さんや娘さん、あるいはお孫さんの進学先として本学を選んでいただければ、これほど嬉しいことはありません」
社会実装に向けて多様な人とコミュニケーションするための『人間形成』、技術者集団だけでは乗り越えられない壁を破るための『技術革新』、成長分野であるグリーン、デジタルを強化するための『産学協同』。こうした考え方は、すなわち建学綱領を新しい形で具現化しているということを、卒業生の皆様にはご理解いただけるのではないでしょうか。
文理の枠を超えた社会実装型総合大学へと進化していく金沢工業大学が、社会実装を通して技術革新を起こしていくためには、産業界で活躍されている卒業生の皆様の知見がとても大切だと考えていますので、ぜひお力を貸していただければ幸いです。また、本学では社会人のための学び直しの場であるリカレント教育のプログラムなども用意していますので、卒業生の皆様にはお気軽にキャンパスに足を運んでいただきたいと考えています。
最後になりますが、金沢工業大学では未来に向けて教育と研究を進化させていきますので、卒業生の皆様の息子さんや娘さん、あるいはお孫さんの進学先として本学を選んでいただければ、これほど嬉しいことはありません」
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