できないと思われていた“レンジでチン”を
可能にした「電子レンジ対応ペットボトル」できないと思われていた“レンジでチン”を
可能にした「電子レンジ対応ペットボトル」
可能にした「電子レンジ対応ペットボトル」できないと思われていた“レンジでチン”を
可能にした「電子レンジ対応ペットボトル」
2025.1.20
寒い季節、コンビニエンスストアなどで購入できるホットドリンクはありがたい存在だ。だが、時間が経つとぬるくなることを残念に思っている人もいるだろう。伊藤園の「電子レンジ対応ペットボトル」は、そんな消費者の声から生まれた。同社マーケティング本部副本部長 兼 緑茶ブランドグループ ブランドマネジャーの安田哲也氏に開発の経緯を聞いた。
株式会社伊藤園
1966(昭和41)年に前身のフロンティア製茶株式会社を静岡県静岡市に設立し、1969(昭和44)年に商号を株式会社伊藤園に変更した。1979(昭和54)年に中国土産畜産進出口総公司と日本で初めてウーロン茶の輸入代理店契約を締結し、ウーロン茶(茶葉)の販売を開始。翌1980(昭和55)年には世界初の「缶入りウーロン茶」開発し、販売を開始した。1985(昭和59)年に缶内の酸素除去により、緑茶の品質を保持する「T-Nブロー製法」を確立し、「缶入り煎茶」の開発に成功。1985(昭和60)年に「缶入り煎茶」の販売を開始し、1989(平成元)年に「缶入り煎茶」を「お~いお茶」に名称変更した。2024年には欧州での「お~いお茶」の生産を開始するなど、「世界のティーカンパニー」の実現に向けた様々な商品・サービスを展開している。
株式会社伊藤園
1966(昭和41)年に前身のフロンティア製茶株式会社を静岡県静岡市に設立し、1969(昭和44)年に商号を株式会社伊藤園に変更した。1979(昭和54)年に中国土産畜産進出口総公司と日本で初めてウーロン茶の輸入代理店契約を締結し、ウーロン茶(茶葉)の販売を開始。翌1980(昭和55)年には世界初の「缶入りウーロン茶」開発し、販売を開始した。1985(昭和59)年に缶内の酸素除去により、緑茶の品質を保持する「T-Nブロー製法」を確立し、「缶入り煎茶」の開発に成功。1985(昭和60)年に「缶入り煎茶」の販売を開始し、1989(平成元)年に「缶入り煎茶」を「お~いお茶」に名称変更した。2024年には欧州での「お~いお茶」の生産を開始するなど、「世界のティーカンパニー」の実現に向けた様々な商品・サービスを展開している。
缶入り煎茶のCMから生まれた
「お~いお茶」
「お~いお茶」
お茶が中国から日本へ伝えられたのは、平安時代初期とされる。当初は僧侶や武士など限られた人々だけの楽しみだったが、江戸時代になる頃には庶民の間にも嗜好品として広まった。
いつしか家族が集まる部屋は「お茶の間」と呼ばれるようになり、お茶は団らんやくつろぎの象徴として親しまれるようになった。
1966年、茶葉を小分けにして梱包した「パック茶」が販売された。それまで茶葉は専門店での量り売りが一般的だったが、パック茶の誕生により一般の食料品店やスーパーマーケットでも購入できるようになった。開発・販売したのは「フロンティア製茶株式会社」。今や誰もが知るお茶のリーディングカンパニーとなった伊藤園の前身だ。
1969年に名称変更した伊藤園は、1980年に世界初の「缶入りウーロン茶」、続いて1985年に世界初の「缶入り煎茶」を発売した。急須と湯吞みがある場所でしか味わえなかったお茶が、この時からいつでもどこでも楽しめる飲料となった。ただ発売当時のことを、伊藤園マーケティング本部副本部長であり、緑茶ブランドグループ ブランドマネジャーの安田哲也氏はこう振り返る。
いつしか家族が集まる部屋は「お茶の間」と呼ばれるようになり、お茶は団らんやくつろぎの象徴として親しまれるようになった。
1966年、茶葉を小分けにして梱包した「パック茶」が販売された。それまで茶葉は専門店での量り売りが一般的だったが、パック茶の誕生により一般の食料品店やスーパーマーケットでも購入できるようになった。開発・販売したのは「フロンティア製茶株式会社」。今や誰もが知るお茶のリーディングカンパニーとなった伊藤園の前身だ。
1969年に名称変更した伊藤園は、1980年に世界初の「缶入りウーロン茶」、続いて1985年に世界初の「缶入り煎茶」を発売した。急須と湯吞みがある場所でしか味わえなかったお茶が、この時からいつでもどこでも楽しめる飲料となった。ただ発売当時のことを、伊藤園マーケティング本部副本部長であり、緑茶ブランドグループ ブランドマネジャーの安田哲也氏はこう振り返る。
「でも、『缶入り煎茶』は当時あまり人気が出ませんでした。当時“煎茶”という言葉は馴染みが薄く、“ぜんちゃ”とか“まえちゃ”と誤読する人も多かったそうです。世間に認知され始めたきっかけは1989年、コマーシャルで使っていたフレーズの『お~いお茶』を商品名にしたことです」
「お~いお茶」に名を変えた翌年の1990年には、1.5ℓペットボトルを発売した。これまた世界で初めてとなるペットボトル入り緑茶飲料だ。さらに、1996年に500㎖ペットボトルを発売したところ、持ち運びしやすい便利さから人気はいっそう高まった。2024年現在「お~いお茶」の累計販売本数は400億本を超えている。
「お~いお茶」に名を変えた翌年の1990年には、1.5ℓペットボトルを発売した。これまた世界で初めてとなるペットボトル入り緑茶飲料だ。さらに、1996年に500㎖ペットボトルを発売したところ、持ち運びしやすい便利さから人気はいっそう高まった。2024年現在「お~いお茶」の累計販売本数は400億本を超えている。
「お~いお茶」の専用茶園・契約茶園を全国各地に設置。1976年から「茶産地育成事業」を展開し、安心・安全で高品質な緑茶原料の安定調達と、高齢化や後継者不足などが進む国内農業の課題解決の両立に取り組んでいるという
課題は酸素を通しにくくすることと
購入後すぐにぬるくなること
購入後すぐにぬるくなること
冷たい「お~いお茶」も需要は高いが、もともと緑茶は急須で淹れる温かい飲み物だ。伊藤園は「温めて飲みたい」というお客様の声にも応えたかった。だが、コールド用のペットボトルは温めると酸素を通しやすくなる。酸素には食品や飲料を劣化させる性質があり、繊細な味と香りが求められるお茶にとっては大敵だ。そこで伊藤園は、温めても酸素を通しにくい「ホット用ペットボトル」を開発した。
2000年に発売したホット用ペットボトルは、3枚のペット樹脂の間に2枚の酸素吸収膜を挟んだ5層構造にして販売した。現在は改良が加えられ、ペット樹脂の内側に炭素膜が貼られた、5層よりもさらに酸素を通しにくいペットボトルが使われている。
2000年に発売したホット用ペットボトルは、3枚のペット樹脂の間に2枚の酸素吸収膜を挟んだ5層構造にして販売した。現在は改良が加えられ、ペット樹脂の内側に炭素膜が貼られた、5層よりもさらに酸素を通しにくいペットボトルが使われている。
現在のホット用・電子レンジ対応ペットボトルの断面図。炭素膜を採用し、酸素を通しにくい構造になっている
ホット飲料用の加温器は、今でこそ多くのコンビニやスーパーで見かけるが、ホット用ペットボトルの発売当時はほとんど存在しなかった。そのため、伊藤園が全国の店舗に加温器を無償で支給し、設置させてもらった。その甲斐あって、多くの店で気軽にホットドリンクが買えるようになった。一方で、ライフスタイルの変化によって、ホットドリンクを少しずつ、時間をかけて飲む方が徐々に増えていった。そこで問題が出てくる。ホットドリンクは買った時に温かくても、徐々にぬるくなってしまうことだ。
ぬるくなったお茶を温めるには、電子レンジが便利だ。だが、ペットボトルを電子レンジで加温した場合、コールド用・ホット用ともに、過度に温めてしまうと容器が変形するおそれがある。底面が膨張してボトルが倒れたりすれば、熱くなったお茶がこぼれ出て危険だ。そのため、電子レンジで温める時は耐熱容器に移し替えなければならない。伊藤園のお客様相談室には「そのまま温められたらいいのに」という声が多く寄せられた。
ぬるくなったお茶を温めるには、電子レンジが便利だ。だが、ペットボトルを電子レンジで加温した場合、コールド用・ホット用ともに、過度に温めてしまうと容器が変形するおそれがある。底面が膨張してボトルが倒れたりすれば、熱くなったお茶がこぼれ出て危険だ。そのため、電子レンジで温める時は耐熱容器に移し替えなければならない。伊藤園のお客様相談室には「そのまま温められたらいいのに」という声が多く寄せられた。
幾多の実験を重ねてできた
“レンチン”可能なペットボトル
“レンチン”可能なペットボトル
消費者の期待に応えるべく、長年にわたって研究を重ねた。ひとくちに電子レンジといっても、機種によってワット数が異なる。家庭用だけでも500W、600W、800Wなどがあり、業務用も1500Wから2000Wまで様々だ。あらゆるシチュエーションを想定し、数えきれないほどの実験を繰り返した。
「電子レンジ対応ペットボトルの開発の際は、底面のくぼみの形も何度も変えて実験を重ねた」という安田氏
そして2016年、ついに今の時代にあった「電子レンジ対応ペットボトル」が誕生した。ボトル底のくぼみを深く、底面の幅を広くし、ボトルの高さとのバランスも調整して、加温によって膨張しても倒れにくい構造になっている。また、電子レンジの特性上、粘性の高い液体は突沸しやすいため、濁りの少ない茶葉を使用して安全性を高めた。ただし、安田氏によれば、電子レンジ対応ボトルでも注意すべき点がある。
「電子レンジ対応ペットボトル」。ラベルに温め方や注意点も書かれている
「温める際、キャップは外す必要があります。また、電子レンジの使用は1度だけにしてください。何度も温めるとボトルがやわらかくなり、膨張・変形のリスクが高まります。飲みかけのお茶を温める場合は、残量ごとの温め時間の目安がラベルに表示されているので、参考にしてください」
伊藤園が実施した調査では、消費者の4~5割が電子レンジ対応ペットボトルを好意的に評価してくれているという。
「特に女性から『うれしい』『これがほしかった』という感想を多くいただきました。女性は温かいお茶を、少しずつ時間をかけて飲む傾向があり、温め直しの需要が高かったようです」と安田氏。また、高齢者にも温かいお茶を好む人が多く、「常温で買ってストックしておけば、飲みたい時に温められて便利だ」といった声も聞くという。
伊藤園が実施した調査では、消費者の4~5割が電子レンジ対応ペットボトルを好意的に評価してくれているという。
「特に女性から『うれしい』『これがほしかった』という感想を多くいただきました。女性は温かいお茶を、少しずつ時間をかけて飲む傾向があり、温め直しの需要が高かったようです」と安田氏。また、高齢者にも温かいお茶を好む人が多く、「常温で買ってストックしておけば、飲みたい時に温められて便利だ」といった声も聞くという。
新たに開発された冷凍専用ボトル(左)と、ヨーロッパでの展開を視野に開発されたキャップ付き紙パックの「お~いお茶」
他社に先駆ける源となっている
「STILL NOWの精神」
「STILL NOWの精神」
伊藤園は他にも、持ちやすい取っ手付きボトルや冷凍専用ボトルなど、消費者から「こういうものがほしかった」と言われる様々な商品を、いずれも他社に先駆けて開発している。時代を読み、ニーズをとらえ、新しいことにチャレンジする企業風土の根底にあるのは、創業時から伝わる「STILL NOWの精神」だ。
STILL NOWとは、「今でもなお、お客様は何を不満に思っているか」を問い続けること。お客様から寄せられる不満の声に対して真摯に耳を傾け、解決に向けて努力する姿勢を大切にしている。伊藤園が世に送り出してきた数々の「世界初」は、すべて「STILL NOWの精神」から生まれたと言っていいだろう。
今後の課題は「環境負荷の軽減」だと安田氏は語る。「世界のティーカンパニー」をめざすグローバル企業の伊藤園にとって、環境問題は避けて通れない。
STILL NOWとは、「今でもなお、お客様は何を不満に思っているか」を問い続けること。お客様から寄せられる不満の声に対して真摯に耳を傾け、解決に向けて努力する姿勢を大切にしている。伊藤園が世に送り出してきた数々の「世界初」は、すべて「STILL NOWの精神」から生まれたと言っていいだろう。
今後の課題は「環境負荷の軽減」だと安田氏は語る。「世界のティーカンパニー」をめざすグローバル企業の伊藤園にとって、環境問題は避けて通れない。
「ペットボトルはリサイクル率の高い素材ではありますが、より環境に配慮するなら、ペットボトルに代わるまったく新しい容器の開発が求められます。環境への負荷が低く、かつ、お茶の味を損なわない容器を生み出したいと思っています。非常に難しい課題ではありますが、やるからにはやはり、他社に先駆けてやりたい」
おいしさも便利さもそのままに、環境にやさしい新容器。伊藤園ならいつか生み出してくれるのではないかと、期待せずにはいられない。
おいしさも便利さもそのままに、環境にやさしい新容器。伊藤園ならいつか生み出してくれるのではないかと、期待せずにはいられない。
東京都渋谷区にある本社ビル。国内には静岡相良・神戸・浜岡・福島・沖縄名護の各工場と、静岡に中央研究所を設けている
前の記事
次の記事