デジタルからバイオの時代へ
新しい芸術の世界を切り拓くデジタルからバイオの時代へ
新しい芸術の世界を切り拓く
新しい芸術の世界を切り拓くデジタルからバイオの時代へ
新しい芸術の世界を切り拓く
2026.1.23
「龍肉」って何? 耳慣れないワードを検索すると、AIはそれを驚くほど饒舌に紹介してくれる。「私たちが創り出す前は『龍肉』の情報もなければ、検索する人もいなかった。今ではまるで元々この世界に在ったもののように、認知が広がっています」と語るのは、「生命の誕生」をテーマにバイオアートを制作するクリエイティブ集団LOM BABYだ。想像上の生物である龍の肉を生命科学で再現した「龍肉」や、世界初のDNAフィギュア「人工宇宙人AA(ArtificialAlien)」などの革新的な作品で注目を集め、今年開催された大阪・関西万博への出展も果たした。彼らが放つ<アート×科学>の光は、どんな未来を照らし出すのか。LOM BABYの浪岡拓也氏と青木寛和氏、バイオチーム責任者の田所直樹氏に伺った。

浪岡 拓也
(なみおか たくや)
サイエンティストコレクティブ
「LOM BABY」主宰
2019年 Transeeds Inc.設立。「生命の誕生」をテーマに「人工生命=ALife」の研究・開発。最先端バイオテクノロジーを駆使した作品や製品の展開を国内外で手掛ける。Forbes「NEXT100」2025 選出。
サイエンティストコレクティブ
「LOM BABY」主宰

浪岡 拓也
(なみおか たくや)
サイエンティストコレクティブ
「LOM BABY」主宰
サイエンティストコレクティブ
「LOM BABY」主宰
2019年 Transeeds Inc.設立。「生命の誕生」をテーマに「人工生命=ALife」の研究・開発。最先端バイオテクノロジーを駆使した作品や製品の展開を国内外で手掛ける。Forbes「NEXT100」2025 選出。

青木 寛和
(あおき ひろかず)
サイエンティストコレクティブ
「LOM BABY」主宰
2019年 Transeeds Inc.設立。生命・テクノロジー・芸術・など幅広い領域を往来する。さまざまなブランドやミュージシャンのアートディレクションなども担当。Forbes「NEXT100」2025 選出。
サイエンティストコレクティブ
「LOM BABY」主宰

青木 寛和
(あおき ひろかず)
サイエンティストコレクティブ
「LOM BABY」主宰
サイエンティストコレクティブ
「LOM BABY」主宰
2019年 Transeeds Inc.設立。生命・テクノロジー・芸術・など幅広い領域を往来する。さまざまなブランドやミュージシャンのアートディレクションなども担当。Forbes「NEXT100」2025 選出。

田所 直樹
(たどころ なおき)
サイエンティストコレクティブ
「LOM BABY」メンバー
再生医療や培養肉など、生命を再生・再構築する技術に関心を持ち、大手化粧品会社に勤めながら細胞培養や組織再生に関する実験研究を行っている。細胞レベルでの再生メカニズムを探ることで、生命の可能性を拡張する科学の発展に寄与することを目指す。
サイエンティストコレクティブ
「LOM BABY」メンバー

田所 直樹
(たどころ なおき)
サイエンティストコレクティブ
「LOM BABY」メンバー
サイエンティストコレクティブ
「LOM BABY」メンバー
再生医療や培養肉など、生命を再生・再構築する技術に関心を持ち、大手化粧品会社に勤めながら細胞培養や組織再生に関する実験研究を行っている。細胞レベルでの再生メカニズムを探ることで、生命の可能性を拡張する科学の発展に寄与することを目指す。
万博で「一番万博らしい」作品
SFを現実にする圧倒的な先進性
SFを現実にする圧倒的な先進性
――2024年8月に「龍肉」を初公開した国立新美術館での個展が大きな話題となり、2025年は万博への参加と、快進撃が続いています。
浪岡 88歳になる私のおばあちゃんには、国立新美術館で個展をやったとか、ビジネス誌『Forbes』に取材されたといっても分かってもらえないのですが、万博に出ると言ったらめちゃくちゃ喜んでくれました。それだけでも頑張った甲斐がありました。おそらく一生に一度の自国開催だし、出られるならもう全精力を傾けようと思ったら、傾けすぎてしまい、会社の資金が結構ヤバイ状態になりました(笑)。
私たちのブースでは、会場そのものが人の行動・表情・感情をリアルタイムで感知するインタラクティブな空間を実現。その空間を媒介として、来場者と展示されたDNAフィギュア「人工宇宙人AA」が知的交信を行うという、かつてないイマ―シブな感動体験を提供できたと自負しています。他にも「龍肉」はもちろん、歩行による摩耗や損傷を自ら感知して修復再生するスニーカー「HealSneaker」など、最新のプロジェクトもお披露目しました。そんな私たちの世界観が「一番万博らしい」という評価も多くいただいて、そこは素直に誇らしいですね。最近は万博といっても、10年後ぐらいには実現しそうな未来が並ぶ時代ですが、私たちが見据えているのは、もっともっと先です。今はまだSFの中にしか存在しえない未来になります。
浪岡 88歳になる私のおばあちゃんには、国立新美術館で個展をやったとか、ビジネス誌『Forbes』に取材されたといっても分かってもらえないのですが、万博に出ると言ったらめちゃくちゃ喜んでくれました。それだけでも頑張った甲斐がありました。おそらく一生に一度の自国開催だし、出られるならもう全精力を傾けようと思ったら、傾けすぎてしまい、会社の資金が結構ヤバイ状態になりました(笑)。
私たちのブースでは、会場そのものが人の行動・表情・感情をリアルタイムで感知するインタラクティブな空間を実現。その空間を媒介として、来場者と展示されたDNAフィギュア「人工宇宙人AA」が知的交信を行うという、かつてないイマ―シブな感動体験を提供できたと自負しています。他にも「龍肉」はもちろん、歩行による摩耗や損傷を自ら感知して修復再生するスニーカー「HealSneaker」など、最新のプロジェクトもお披露目しました。そんな私たちの世界観が「一番万博らしい」という評価も多くいただいて、そこは素直に誇らしいですね。最近は万博といっても、10年後ぐらいには実現しそうな未来が並ぶ時代ですが、私たちが見据えているのは、もっともっと先です。今はまだSFの中にしか存在しえない未来になります。




大阪・関西万博では「宇宙×生命(細胞)」をテーマに、3Dプリンターで造成されたAI搭載ドームを展示。ドームの中に足を踏み入れると、来場者の動きをリアルタイムで感知し、瞬時に映像を生成。映像は来場者の表情や動き、感情に応じて変化するというものだ。アメリカ、フランスなどで作品を発表しており、グラン・パレ(パリ)での展示は2日間で約4500人を動員するなど海外でも評価されている
「Heal Sneaker」は再生医療技術を搭載。素材自体が細胞のように再生し、履くたびに新品同様の状態を保つという、環境や人にやさしい革新的なプロダクトだ
――そんなLOM BABYが結成された経緯を教えてください。
浪岡 LOM BABY自体は、2019年に青木と私が共同創業した会社Transeeds Inc.が主宰するユニットで、アーティストや科学者、建築家、映像作家など幅広いメンバーから構成されています。青木と私は大学の同級生ですが、厳密に言うと入学式直前にSNSでつながって「同じ大学だね」ということで、2人で活動を始め、在学中も個展を開いて、賞を獲ったりしていました。Transeedsを立ち上げたのは大学を卒業して1年後ぐらいですかね。今の世界では想像もできない、新しいものをつくりたいという志は当時から変わっていません。
マズローの「欲求5段階説」は生理的欲求から始まって5段階の最上位は自己実現欲求ですが、これも生成AIの進化で実現性が高まってきています。実際、ChatGPTがあれば誰でも絵が描けるし、音楽も作れます。叶えたい夢はたいてい叶ってしまいます。だとすると、次はどうなるのか。マズローは亡くなる直前に言い遺しているんです。「人間はついに自己を超えて、他の誰かのために何かをしたいという自己超越欲求に行き着く」と。その未知なる欲求を満たすものを、自分たちもつくりたい。自己を超越(Transcend)する面白さに目覚めた人の心に種(Seed)をまきたいという思いから、社名を「Transeeds」としました。
とはいえ、創業した途端のコロナ禍には参りました。企業のクリエイティブデザインなどのビジネス案件が、一時はみんな吹っ飛んでしまったので……。そこから何とか盛り返して、会社が落ち着いてきたのが3年ほど前。いよいよアートに本腰を入れようということで、LOM BABYの活動をスタートさせました。
浪岡 LOM BABY自体は、2019年に青木と私が共同創業した会社Transeeds Inc.が主宰するユニットで、アーティストや科学者、建築家、映像作家など幅広いメンバーから構成されています。青木と私は大学の同級生ですが、厳密に言うと入学式直前にSNSでつながって「同じ大学だね」ということで、2人で活動を始め、在学中も個展を開いて、賞を獲ったりしていました。Transeedsを立ち上げたのは大学を卒業して1年後ぐらいですかね。今の世界では想像もできない、新しいものをつくりたいという志は当時から変わっていません。
マズローの「欲求5段階説」は生理的欲求から始まって5段階の最上位は自己実現欲求ですが、これも生成AIの進化で実現性が高まってきています。実際、ChatGPTがあれば誰でも絵が描けるし、音楽も作れます。叶えたい夢はたいてい叶ってしまいます。だとすると、次はどうなるのか。マズローは亡くなる直前に言い遺しているんです。「人間はついに自己を超えて、他の誰かのために何かをしたいという自己超越欲求に行き着く」と。その未知なる欲求を満たすものを、自分たちもつくりたい。自己を超越(Transcend)する面白さに目覚めた人の心に種(Seed)をまきたいという思いから、社名を「Transeeds」としました。
とはいえ、創業した途端のコロナ禍には参りました。企業のクリエイティブデザインなどのビジネス案件が、一時はみんな吹っ飛んでしまったので……。そこから何とか盛り返して、会社が落ち着いてきたのが3年ほど前。いよいよアートに本腰を入れようということで、LOM BABYの活動をスタートさせました。
青木 新たな概念や価値観を作り出したいという、言語化できない衝動から浪岡との創作活動はスタートしました。LOM BABYの原初は、より社会システムに密接な形式で作品展開をしようという思いで打ち出しました。
芸術史の以前・以後を画する
「生命の誕生」をアートで表現
「生命の誕生」をアートで表現
――LOM BABYは「生命の誕生」をテーマに掲げています。そこにはどんな思いがあるのですか。
浪岡 紀元前・紀元後ではありませんが、LOM BABY以前とLOM BABY以降で芸術の歴史を画するような、かつてない作品をつくりたい。今までアートが超えられなかった壁を突破したい。私たちは本気でそう思って動いているんです。これは過去の芸術を否定するという意味ではなく、そこにはむしろリスペクトしかありません。特に影響を受けたのが、イギリスの現代美術家のダミアン・ハースト。彼は「死」をテーマに選び、動物の死体をホルマリン漬けにして展示するシリーズで議論を巻き起こしました。彼が作品を発表する以前は、死そのものの“展示”は倫理に反し、美学の範疇にも入らないという暗黙のタブーがあったわけですが、科学では許容されるホルマリン漬けという手法をとることで、その壁を壊しにかかったんですね。死は作品化できないとされた時代から、それができる時代へと変わりました。ハーストを超えて、芸術の歴史がシフトしたといっていいでしょう。
死と同様に、「生命の誕生」も芸術がいまだに超えられていない難題の一つ。私たちがそれをテーマに選ぶのは必然でした。ただ、クローン人間を生み出して展示すればいいかというと、やはり倫理的に許されないし、私たちもそれがしたいわけじゃない。今までにない形で「生命の誕生」を実現し、芸術史に“自分たち以前・以降”を刻むことが活動のモチベーションになっています。
――そのための手法がバイオアートということですか。
浪岡 以前はブロックチェーンの技術を使ったアートトレカなどデジタル作品も手がけていましたが、一方で、展示というリアルな表現を続けてきました。だからこそ、人はやはりフィジカルな要素に感動してくれるんだなと、あらためて強く思うようになったんです。ただ、先祖返りしても意味がありません。逆にデジタルよりも新しい手法で、フィジカルを表現するにはどうすればいいか。バイオテクノロジーだろうと。同じ頃、ニューヨークで出会ったキュレーターとの対話もヒントになりました。彼は世界的に影響力のあるアートギャラリーのオーナーで、デジタルアートの世界ではカリスマ的存在ですが、その彼が言ったのです。「デジタルアートなんてもう終わりだ。これからはバイオアートが来るよ」と。国立新美術館で個展を開いた2年前の秋のことです。
浪岡 紀元前・紀元後ではありませんが、LOM BABY以前とLOM BABY以降で芸術の歴史を画するような、かつてない作品をつくりたい。今までアートが超えられなかった壁を突破したい。私たちは本気でそう思って動いているんです。これは過去の芸術を否定するという意味ではなく、そこにはむしろリスペクトしかありません。特に影響を受けたのが、イギリスの現代美術家のダミアン・ハースト。彼は「死」をテーマに選び、動物の死体をホルマリン漬けにして展示するシリーズで議論を巻き起こしました。彼が作品を発表する以前は、死そのものの“展示”は倫理に反し、美学の範疇にも入らないという暗黙のタブーがあったわけですが、科学では許容されるホルマリン漬けという手法をとることで、その壁を壊しにかかったんですね。死は作品化できないとされた時代から、それができる時代へと変わりました。ハーストを超えて、芸術の歴史がシフトしたといっていいでしょう。
死と同様に、「生命の誕生」も芸術がいまだに超えられていない難題の一つ。私たちがそれをテーマに選ぶのは必然でした。ただ、クローン人間を生み出して展示すればいいかというと、やはり倫理的に許されないし、私たちもそれがしたいわけじゃない。今までにない形で「生命の誕生」を実現し、芸術史に“自分たち以前・以降”を刻むことが活動のモチベーションになっています。
――そのための手法がバイオアートということですか。
浪岡 以前はブロックチェーンの技術を使ったアートトレカなどデジタル作品も手がけていましたが、一方で、展示というリアルな表現を続けてきました。だからこそ、人はやはりフィジカルな要素に感動してくれるんだなと、あらためて強く思うようになったんです。ただ、先祖返りしても意味がありません。逆にデジタルよりも新しい手法で、フィジカルを表現するにはどうすればいいか。バイオテクノロジーだろうと。同じ頃、ニューヨークで出会ったキュレーターとの対話もヒントになりました。彼は世界的に影響力のあるアートギャラリーのオーナーで、デジタルアートの世界ではカリスマ的存在ですが、その彼が言ったのです。「デジタルアートなんてもう終わりだ。これからはバイオアートが来るよ」と。国立新美術館で個展を開いた2年前の秋のことです。
科学の知見からDNAをデザイン
架空の存在に人工の生命を宿す
架空の存在に人工の生命を宿す
――「生命の誕生」をバイオアートとして作品化するのに、“龍の肉” というモチーフを選ぶところが斬新というか、奇抜というかですね。
浪岡 DNA をデザインする「DNA合成」という技術があることを知り、架空の存在に人工の生命を宿してみたいと思い立ったんです。架空のキャラクターで一番有名なもの、インパクトのあるものというと、やっぱり断トツで「龍」、ドラゴンでしょう。しかも、食べられる龍の“肉” という形に落とし込めば、フィジカルな感動はより強まるに違いないと考えました。そこで、化粧品会社で再生医療を研究するかたわら、趣味でも培養肉の開発に取り組んでいる田所さんを、バイオチームのリーダーとして迎えたわけです。
田所 浪岡さんたちと話していて、アートも科学も本来は100年後をめざすべきだという考え方にすごく共感できたんです。研究者は今、大学でも企業でも目先の成果に追われがちですからね。「龍肉」や一連のプロジェクトにぜひ協力したいと思いました。
――DNA合成技術で架空の存在に生命を宿すシステムとは、具体的にどういうものなのでしょう。もう少し詳しく教えてください。
浪岡 「龍肉」でいうと、まず「龍とは何か」を考え、神話や伝承から龍のモデルとなった実在の生物を特定し、その特徴を洗い出すところから始まりました。
田所 今回、爪は猛禽類、角はシカ、胴体はワニなど、龍に見立てた複数の動物や細菌のDNAを合成しました。人間や動物のDNAデータはすでにオープンソース上にあるので、そこから必要な情報を集めて「龍のDNA」を設計。それをアメリカのバイオ企業に依頼して化学的に合成し、できた龍のDNAを植物由来の万能細胞に注入すると、活発に細胞分裂が起こり、「龍肉」へと成長します。通常のシャーレに入るサイズなら1カ月程度でしょうか。動物実験はしないのがLOM BABYのポリシーなので、動物性の細胞は使いたくない。動物由来の合成DNAに、植物細胞の培養技術を組み合わせて肉にするプロセスが、今思うと一番の難関だったかもしれません。
浪岡 DNA をデザインする「DNA合成」という技術があることを知り、架空の存在に人工の生命を宿してみたいと思い立ったんです。架空のキャラクターで一番有名なもの、インパクトのあるものというと、やっぱり断トツで「龍」、ドラゴンでしょう。しかも、食べられる龍の“肉” という形に落とし込めば、フィジカルな感動はより強まるに違いないと考えました。そこで、化粧品会社で再生医療を研究するかたわら、趣味でも培養肉の開発に取り組んでいる田所さんを、バイオチームのリーダーとして迎えたわけです。
田所 浪岡さんたちと話していて、アートも科学も本来は100年後をめざすべきだという考え方にすごく共感できたんです。研究者は今、大学でも企業でも目先の成果に追われがちですからね。「龍肉」や一連のプロジェクトにぜひ協力したいと思いました。
――DNA合成技術で架空の存在に生命を宿すシステムとは、具体的にどういうものなのでしょう。もう少し詳しく教えてください。
浪岡 「龍肉」でいうと、まず「龍とは何か」を考え、神話や伝承から龍のモデルとなった実在の生物を特定し、その特徴を洗い出すところから始まりました。
田所 今回、爪は猛禽類、角はシカ、胴体はワニなど、龍に見立てた複数の動物や細菌のDNAを合成しました。人間や動物のDNAデータはすでにオープンソース上にあるので、そこから必要な情報を集めて「龍のDNA」を設計。それをアメリカのバイオ企業に依頼して化学的に合成し、できた龍のDNAを植物由来の万能細胞に注入すると、活発に細胞分裂が起こり、「龍肉」へと成長します。通常のシャーレに入るサイズなら1カ月程度でしょうか。動物実験はしないのがLOM BABYのポリシーなので、動物性の細胞は使いたくない。動物由来の合成DNAに、植物細胞の培養技術を組み合わせて肉にするプロセスが、今思うと一番の難関だったかもしれません。
浪岡 龍のDNAをデザインすることが、実質的に龍の生命を創ることだと解釈すれば、外側のボディは動物の肉でなくても構わない。植物性たんぱく質で表現できますからね。万博で発表した「人工宇宙人」も、3Dプリンターで作った約2mのフィギュアの中に、「宇宙空間での生存を想定したヒトDNA」が封入されたカプセルを、宇宙人の“生命” と見立てて埋め込んだ作品です。
田所 放射線耐性があるとか、無酸素でも生きられるとか、宇宙人であるための諸条件を満たすDNAを設計するのは、パズルを解くみたいで楽しかったです。
田所 放射線耐性があるとか、無酸素でも生きられるとか、宇宙人であるための諸条件を満たすDNAを設計するのは、パズルを解くみたいで楽しかったです。
SFやアニメに登場する架空の宇宙人を、DNA合成技術により再現した「人工宇宙人AA」。本体には宇宙人のDNAを特殊保存液に封入したカプセルが埋め込まれている
宇宙人も、綾波レイも“つくれる”
<アート×科学>で未来を明るく
<アート×科学>で未来を明るく
――生命とは何か、その本質や定義を問い直すことにもつながっていきそうですね。
浪岡 実際、アメリカでは「DNA だけでも生命と認められるのか」というような議論が始まっています。「生命の誕生を人工的にデザインする」と聞くと、眉をひそめる向きもあるかもしれませんが、自分たちとしては別に突飛なことがしたいわけではなく、未知の感動やワクワクを伝えるために、現在の社会の倫理やルールの中でできる最大限のことは全部やりたい。それが一貫したスタンスです。「こんな面白い世界が待っているよ」と、アートがバイオテクノロジーの未来をプロモートすることで実際に技術が発展し、法整備なども進みます。製品化・産業化に至れば、社会変革にもつながるでしょう。
田所 科学者側としてもそれは大歓迎です。かつて鉄腕アトムやドラえもんに憧れたように、テクノロジーはやはり未来を明るくするためのものですから。
――今後の展開が楽しみです。LOM BABY 自身の未来についても聞かせてください。
青木 生命とは、単に物質が集まって形作られたもの以上の何かだと思っています。そこには意識や意思、あるいは目には見えないエネルギーや「念」のような何かが宿っているように思います。そうした形なき生命と世の核心に、創作を通じて近づいていきたいです。
浪岡 龍や宇宙人に限らず、漫画やアニメの登場人物などあらゆる架空のキャラクターのDNA を合成できる技術はすでに完成しました。例えば、綾波レイや初音ミクのDNAもつくれますし、“推しキャラ” のDNAを埋め込んだDNAフィギュアに、今回の万博で発表した「Heal Sneaker」の自己修復機能を付加すれば、単なるグッズではない、生命体に限りなく近いフィギュアを生み出すことも可能です。そうした商品開発も含めて、生命のないものにどれだけ生命を吹き込めるかというテーマを、バイオアートでもっと追求していきたい。LOM BABY以降の芸術が、世界が、それ以前と比べて圧倒的に面白くなっている未来を、私たちは確信しています。
浪岡 実際、アメリカでは「DNA だけでも生命と認められるのか」というような議論が始まっています。「生命の誕生を人工的にデザインする」と聞くと、眉をひそめる向きもあるかもしれませんが、自分たちとしては別に突飛なことがしたいわけではなく、未知の感動やワクワクを伝えるために、現在の社会の倫理やルールの中でできる最大限のことは全部やりたい。それが一貫したスタンスです。「こんな面白い世界が待っているよ」と、アートがバイオテクノロジーの未来をプロモートすることで実際に技術が発展し、法整備なども進みます。製品化・産業化に至れば、社会変革にもつながるでしょう。
田所 科学者側としてもそれは大歓迎です。かつて鉄腕アトムやドラえもんに憧れたように、テクノロジーはやはり未来を明るくするためのものですから。
――今後の展開が楽しみです。LOM BABY 自身の未来についても聞かせてください。
青木 生命とは、単に物質が集まって形作られたもの以上の何かだと思っています。そこには意識や意思、あるいは目には見えないエネルギーや「念」のような何かが宿っているように思います。そうした形なき生命と世の核心に、創作を通じて近づいていきたいです。
浪岡 龍や宇宙人に限らず、漫画やアニメの登場人物などあらゆる架空のキャラクターのDNA を合成できる技術はすでに完成しました。例えば、綾波レイや初音ミクのDNAもつくれますし、“推しキャラ” のDNAを埋め込んだDNAフィギュアに、今回の万博で発表した「Heal Sneaker」の自己修復機能を付加すれば、単なるグッズではない、生命体に限りなく近いフィギュアを生み出すことも可能です。そうした商品開発も含めて、生命のないものにどれだけ生命を吹き込めるかというテーマを、バイオアートでもっと追求していきたい。LOM BABY以降の芸術が、世界が、それ以前と比べて圧倒的に面白くなっている未来を、私たちは確信しています。
東京・渋谷にある秘密基地のようなラボで、バイオテクノロジーの技術を使った作品が次々と生み出されている
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