教育DXで実現する
学生一人ひとりへの修学支援教育DXで実現する
学生一人ひとりへの修学支援
学生一人ひとりへの修学支援教育DXで実現する
学生一人ひとりへの修学支援
2026.7.17
少子高齢化や生産年齢人口の減少に加えAIやロボットなどデジタル技術の急速な進展により、わが国の理系人材は今後確実に不足することがわかっている。経済産業省の推計によると、大卒・大学院卒の理系人材は2040年に約120万人不足する一方、文系人材は約80万人の余剰が生じるという。金沢工業大学では高度理工系人材の育成を通じて地域経済の発展に貢献してきたが、そのベースとなっているのが他大学に先駆けて取り組んできた〝教育DX〟だ。その中心的な役割を担ってきた山本知仁教授に、金沢工業大学が考える「学生一人ひとりの学びに応じた教育」とは何かをうかがった。

金沢工業大学 情報理工学部
学部長
知能情報システム学科 主任
山本 知仁 (やまもと ともひと)
教授・博士(工学)
東京工業大学工学部電気電子工学科卒。同大学大学院総合理工学研究科知能システム科学専攻博士後期課程修了。2004年金沢工業大学講師。その後准教授を経て、2016年から工学部情報工学科教授。2025年より現職。専門はデータサイエンス、ヒューマンコンピュータインタラクション、ヒューマンインターフェイス、ヒューマンコミュニケーション。
学部長
知能情報システム学科 主任
山本 知仁 (やまもと ともひと)
教授・博士(工学)

山本 知仁
(やまもと ともひと)
教授・博士(工学)
金沢工業大学 情報理工学部
学部長
知能情報システム学科 主任
(やまもと ともひと)
教授・博士(工学)
金沢工業大学 情報理工学部
学部長
知能情報システム学科 主任
東京工業大学工学部電気電子工学科卒。同大学大学院総合理工学研究科知能システム科学専攻博士後期課程修了。2004年金沢工業大学講師。その後准教授を経て、2016年から工学部情報工学科教授。2025年より現職。専門はデータサイエンス、ヒューマンコンピュータインタラクション、ヒューマンインターフェイス、ヒューマンコミュニケーション。
HCIで解き明かす
対話と教育のメカニズム
対話と教育のメカニズム
人とコンピュータの関わり合いや相互作用を研究する、ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)を専門とする山本教授は、人の対話などを解析し、コミュニケーションのメカニズムを明らかにすることを主要なテーマに、これまでさまざまな研究に取り組んできた。
「コンピュータに代表される人工システムが、人間のように情報のやりとりを行えるようになれば、ユーザーインターフェースは飛躍的に使いやすくなるはずです。私は20年前から、音楽の共同演奏を人のコミュニケーションに見立て、ジャズのインプロビゼーション(即興演奏)における演奏リズムと脳活動の関係の解析や、人の発話タイミングを考慮した音声対話システムの構築などを通じて、コミュニケーションのメカニズムを明らかにする研究を行ってきました。人と人との関係を明らかにすることが人間の理解に近づくと思うので、その延長として、人に近い情報システムである人工知能を工学的に応用したいという気持ちが、私のベースの部分にあります」
そのような背景があるなかで、山本教授が教育というフィールドでも、こうした解析をやってみようと考えたのは2015年頃のことだった。そのきっかけのひとつが、金沢工業大学が1995年から取り入れている「アクティブラーニング」という教育システムだった。
「これは、従来のように教員が前に立ち、学生が講座形式で話を聞くスタイルとは違い、グループワークを通じて対話的に研究テーマを深めていくものです。教員が一方的に教えるのではなく、インタラクティブに学んでいくという、現在では主流となっているやり方です。従来の1対1のコミュニケーションが複数人によるものへと変化するなかで、どういうグループワークや対話に教育的な価値があるのかについて、解析を進めました。
そして2020年頃から、グループワークによる教育手法の解析をさらに発展させ、本学において適切な教育が行われているのかを、データに基づくエビデンスによって検証したいと考えるようになりました」
「コンピュータに代表される人工システムが、人間のように情報のやりとりを行えるようになれば、ユーザーインターフェースは飛躍的に使いやすくなるはずです。私は20年前から、音楽の共同演奏を人のコミュニケーションに見立て、ジャズのインプロビゼーション(即興演奏)における演奏リズムと脳活動の関係の解析や、人の発話タイミングを考慮した音声対話システムの構築などを通じて、コミュニケーションのメカニズムを明らかにする研究を行ってきました。人と人との関係を明らかにすることが人間の理解に近づくと思うので、その延長として、人に近い情報システムである人工知能を工学的に応用したいという気持ちが、私のベースの部分にあります」
そのような背景があるなかで、山本教授が教育というフィールドでも、こうした解析をやってみようと考えたのは2015年頃のことだった。そのきっかけのひとつが、金沢工業大学が1995年から取り入れている「アクティブラーニング」という教育システムだった。
「これは、従来のように教員が前に立ち、学生が講座形式で話を聞くスタイルとは違い、グループワークを通じて対話的に研究テーマを深めていくものです。教員が一方的に教えるのではなく、インタラクティブに学んでいくという、現在では主流となっているやり方です。従来の1対1のコミュニケーションが複数人によるものへと変化するなかで、どういうグループワークや対話に教育的な価値があるのかについて、解析を進めました。
そして2020年頃から、グループワークによる教育手法の解析をさらに発展させ、本学において適切な教育が行われているのかを、データに基づくエビデンスによって検証したいと考えるようになりました」
入学時の学力と入学後の成績や
就職先には強い相関がない
就職先には強い相関がない
金沢工業大学では文部科学省の「大学教育再生加速プログラム(AP事業)」(2014年)の支援を受けて開発した、大学独自のLMS(Learning Management System=学修支援)である「KITナビ」「e-シラバス」「自己成長シート」といった修学データに関わるシステムを構築し、教育の質を高めてきた。しかし、学生が週単位で目標設定と進捗管理を行い、振り返りや気づきを記入するポートフォリオの運用が定着する一方で、学生の意識や学びの姿勢が多様化するなか、教員が学生一人ひとりの状況を的確に理解して個別支援することが難しくなっていたのだ。
その様な中、新型コロナウイルス感染症の拡大期だった2020年12月、絶妙のタイミングで、文部科学省は高等教育機関のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する「デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン(Plus-DX)」の公募を開始した。これには『取り組み①学修者本位の教育の実現』と『取り組み②学びの質の向上』という2つのテーマの募集枠があり、①はLMSの導入と、ログ解析を通じて習熟度に応じた学修支援を行う取り組みが対象。②はVRなどを用いた遠隔授業によって、これまで困難と考えられていた実験や実習を実現する取り組みが対象とされた。
「私が教育データの解析を研究テーマとしていたことに加えて、大学教育のDX化に関わる立場だったので、Plus-DXの公募はまさに渡りに舟という感じでした。金沢工業大学では他大学に先駆けて、学生の学びの質の向上と教学業務の効率化のために、独自の学修支援システムを構築し、いわゆる教育DXを進めてきました。こうしたアドバンテージを活かして取り組み①と②、両テーマでの採択を目指すことになりました」
その様な中、新型コロナウイルス感染症の拡大期だった2020年12月、絶妙のタイミングで、文部科学省は高等教育機関のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する「デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン(Plus-DX)」の公募を開始した。これには『取り組み①学修者本位の教育の実現』と『取り組み②学びの質の向上』という2つのテーマの募集枠があり、①はLMSの導入と、ログ解析を通じて習熟度に応じた学修支援を行う取り組みが対象。②はVRなどを用いた遠隔授業によって、これまで困難と考えられていた実験や実習を実現する取り組みが対象とされた。
「私が教育データの解析を研究テーマとしていたことに加えて、大学教育のDX化に関わる立場だったので、Plus-DXの公募はまさに渡りに舟という感じでした。金沢工業大学では他大学に先駆けて、学生の学びの質の向上と教学業務の効率化のために、独自の学修支援システムを構築し、いわゆる教育DXを進めてきました。こうしたアドバンテージを活かして取り組み①と②、両テーマでの採択を目指すことになりました」
学生の入学から卒業までのデータを統合し、それらを分析することで、人と共にAI がアドバイスできるシステムを構築
山本教授が担当した取り組み①「DXによる学生一人ひとりの学びに応じた教育実践」だけでなく、取り組み②「DXによる時間と場所の制約を超えた学びの場の創出」も採択となった。応募総数252件に対して採択されたのはわずか54件。さらに2テーマの両方で採択された大学は、金沢工業大学を含めても9大学のみというかなりの狭き門だった。
Plus-DXでの採択を受けた2021年4月から、山本教授はこれまで大学内の各システムに蓄積されてきたデータを統合し、新たに入試の成績データなども取り込んで、データサイエンスの手法を使って学びのプロセスをより詳しく解析する取り組みを開始した。
「本学では2004年度以降に入学した約3万人の学生について、GPA(成績平均値)や出席状況、面談時の記録などのデータを蓄積していました。しかし、入学前の学習歴や面接、学力試験といった入試情報に関するデータや、就活の期間や活動内容などのデータは別々に管理されていたため、これらを全部つなげて分析する必要がありました。
そこで学内にある複数のデータベースを統合し、クラウド上に保存して約半年で分析用のデータベースを構築しました。各データはさまざまな人が活用できるように匿名化し、学生IDに多彩なデータを関連づけることで幅広い観点での解析が可能になりました。このデータベースは日々更新されるので、教職員はLMSを通して解析結果をリアルタイムに共有できます」
Plus-DXでの採択を受けた2021年4月から、山本教授はこれまで大学内の各システムに蓄積されてきたデータを統合し、新たに入試の成績データなども取り込んで、データサイエンスの手法を使って学びのプロセスをより詳しく解析する取り組みを開始した。
「本学では2004年度以降に入学した約3万人の学生について、GPA(成績平均値)や出席状況、面談時の記録などのデータを蓄積していました。しかし、入学前の学習歴や面接、学力試験といった入試情報に関するデータや、就活の期間や活動内容などのデータは別々に管理されていたため、これらを全部つなげて分析する必要がありました。
そこで学内にある複数のデータベースを統合し、クラウド上に保存して約半年で分析用のデータベースを構築しました。各データはさまざまな人が活用できるように匿名化し、学生IDに多彩なデータを関連づけることで幅広い観点での解析が可能になりました。このデータベースは日々更新されるので、教職員はLMSを通して解析結果をリアルタイムに共有できます」
データベースの統合、データの解析と整理、学生の修学プロセスの明確化、AI用学習データの生成などを実施
入試情報(入学前の学習歴や面接・学力試験など)、修学情報(出席やGPA・ポートフォリオなど)、就職情報(就活期間や活動内容など)が統合されたデータベースの構築によって、「学生が能動的な学習に転換したきっかけや学びを深めるポイントは何だったのか?」、あるいは「修学につまずいた要因や学習意欲をなくしたポイントは何だったのか?」といった学生一人ひとりについての学びのプロセスを可視化。こうしたデータをもとに教職員が学生の修学状況に適したアドバイスを行うだけでなく、2022年度に導入したアダプティブラーニングではAIが数理系科目の習熟度に応じて演習問題を提示することで、授業の学習でつまずきやすいポイントを繰り返し学習できるという。まさに教職員とAIとのタッグで、学生の修学を支援するというわけだ。
こうした学生の成功のための修学支援や大学運営円滑化のためのデータの解析には、〝インスティテューショナル・リサーチ(IR)〟という専門的な知見を持つ専任の教員を配置するのが一般的であり、山本教授のように専門のIR職ではない教員が担当するケースは少数派だという。しかし、データ解析だけやるIR職とは違い、データを活用したあとにAIを使って支援するところまでカバーできるのが、システムの開発も行う山本教授の研究の真骨頂。急速に進化し、使い勝手が向上し続けるAIを活用することで、学生データの分析・活用の幅もどんどん厚みを増し、着実に広がっているという。
「このデータベースを使えば、さまざまなことが解析できます。たとえばGPAの推移に着目すると、1年次から4年次まで学年ごとのGPAには高い相関がみられる一方で、入学時の学力と1年次のGPAとの間には強い相関はありません。つまり、高校までの学力と大学での成績は必ずしもつながっているわけではないのです。さらに、卒業時のGPAと就職先の企業規模(従業員数)との間にも、まったく相関がないことがわかりました。一般には成績がいいほど大企業に就職するイメージがあるかもしれませんが、大学での成績が必ずしも就職先の規模と結びついているわけではありません」
こうした学生の成功のための修学支援や大学運営円滑化のためのデータの解析には、〝インスティテューショナル・リサーチ(IR)〟という専門的な知見を持つ専任の教員を配置するのが一般的であり、山本教授のように専門のIR職ではない教員が担当するケースは少数派だという。しかし、データ解析だけやるIR職とは違い、データを活用したあとにAIを使って支援するところまでカバーできるのが、システムの開発も行う山本教授の研究の真骨頂。急速に進化し、使い勝手が向上し続けるAIを活用することで、学生データの分析・活用の幅もどんどん厚みを増し、着実に広がっているという。
「このデータベースを使えば、さまざまなことが解析できます。たとえばGPAの推移に着目すると、1年次から4年次まで学年ごとのGPAには高い相関がみられる一方で、入学時の学力と1年次のGPAとの間には強い相関はありません。つまり、高校までの学力と大学での成績は必ずしもつながっているわけではないのです。さらに、卒業時のGPAと就職先の企業規模(従業員数)との間にも、まったく相関がないことがわかりました。一般には成績がいいほど大企業に就職するイメージがあるかもしれませんが、大学での成績が必ずしも就職先の規模と結びついているわけではありません」
高校までの学力や、大学での成績、就職という3つの要素が、必ずしも一直線につながっていないという事実は非常に興味深いが、子どもを大学に送り出す保護者としては、それでは何が就職に影響を及ぼすのかが気になるところだ。
「データからわかってきたのは、課外活動に積極的に参加している学生ほど、平均年収の高い企業に就職しているという傾向です。金沢工業大学はロボットやフォーミュラカー、データサイエンスといった課外でのプロジェクト活動が充実しています。なかでも複数の学科のメンバーで構成されるプロジェクトに参加し、チーム活動を通して成果を上げている学生は、だいたい就職状況が良好です。こうしたチーム活動は就職後も絶対に必要になります。いろいろな人と関わりながらコミュニケーションを図り、プロジェクトを進めていくことで非認知能力が養われ、それが最終的に就職時の評価へとつながるのです。
さらに興味深いことに、普通高校出身者よりも工業高校出身の学生のほうが、就職ではいい結果が出ているというデータもあります。工業高校は一般的には普通科高校より学力は低く見られがちですが、入学後の修学データでは伸びしろが大きく、就職面でもいい結果を残しています」
「データからわかってきたのは、課外活動に積極的に参加している学生ほど、平均年収の高い企業に就職しているという傾向です。金沢工業大学はロボットやフォーミュラカー、データサイエンスといった課外でのプロジェクト活動が充実しています。なかでも複数の学科のメンバーで構成されるプロジェクトに参加し、チーム活動を通して成果を上げている学生は、だいたい就職状況が良好です。こうしたチーム活動は就職後も絶対に必要になります。いろいろな人と関わりながらコミュニケーションを図り、プロジェクトを進めていくことで非認知能力が養われ、それが最終的に就職時の評価へとつながるのです。
さらに興味深いことに、普通高校出身者よりも工業高校出身の学生のほうが、就職ではいい結果が出ているというデータもあります。工業高校は一般的には普通科高校より学力は低く見られがちですが、入学後の修学データでは伸びしろが大きく、就職面でもいい結果を残しています」
基礎教育の見直しが生んだ
学力向上と退学者減少
学力向上と退学者減少
今回のデータ解析によって、もうひとつ明らかになったのが退学者に関する実態だった。面倒見のよさで知られる金沢工業大学だが、データ解析によって退学者が多いことに気づいた山本教授は、退学者を減らすために〝退学者の予測〟を開始した。
「予測のベースとなるのは、必修科目の点数と出席率のデータです。過去のデータに基づけば9割前後の推定率で退学者を予測できます。具体的にはSHAP(シャップ)という機械学習モデルの予測結果を説明する手法を使うことで、どの科目が退学に影響したのかが特定できます。そこで明らかになったのが、1年次に開講されている数学の科目が最も退学に影響しているという事実でした。
大学全体の単位取得率は平均で85~90%ですが、以前は数学科目だけ70%ほどにとどまっていたのです。そこで大澤学長にも呼びかけていただき、数学の合格率を引き上げるための取り組みを進めました。具体的には、難易度を下げて基礎的な内容に重点を置いたことで、単位取得率はほかの科目と同程度まで改善しています。こうした取り組みの成果により、1年次で単位を落とす学生が減ったことで退学者も年々減少しています」
一部の数学の教員からは1~2年次に数学の基礎的なことができていないと、より専門的な応用を学ぶ3~4年次についていけないと指摘する人もいたそうだが、ここでドロップアウトさせてしまうことは決して学生のためにはならないというのが山本教授の考えだ。
「1~2年次のときは成績が下位層だった学生が、3~4年次になって専門分野への興味が深まり、もう一度数学を学び直して研究を深めていったケースも少なくありません。事実、ある大学では1~2年次の科目を学びやすいものにしたところ、3~4年次に下位層が伸びただけでなく1~2年次に上位層にいた学生の成績も伸びたそうです。つまり、上位層の学生は単位を取っていたものの、実はあまり理解が進んでいなかったということです。
本学でも1~2年次を緩やかにしてしっかり学べるようにしたことで、下位層も上位層も成績がよくなって退学者が減り、就職もずっといい状況が続いているので、学生全員のメリットにつながっています」
2020年12月から進めてきた教育DXが6年という年月をかけて着実に成果を出しつつあるなか、金沢工業大学は2026年に2月に国内大学としては9校目となるNVIDIAとの学術連携協定を締結した。情報理工学部長であり教育DX推進の中心的な役割を担ってきた山本教授は、今後の抱負について次のように語る。
「これからのフィジカルAI時代に必要とされる人材を育てていくためにも、NVIDIAのような世界的な企業との連携は心強いですね。2040年にはAIやロボット活用人材が約340万人不足するという経済産業省の推計が出され、文部科学省では今年2月に専門高校の機能強化や普通科の在り方の転換による高度専門職人材の育成などを柱とする『N-E.X.T.ハイスクール構想』のグランドデザインを示しました。こうした〝追い風〟をうまくつかまえて、より質の高い教育を提供できるように修学のプラットフォームを進化させていきたいと思います」
大学全体の単位取得率は平均で85~90%ですが、以前は数学科目だけ70%ほどにとどまっていたのです。そこで大澤学長にも呼びかけていただき、数学の合格率を引き上げるための取り組みを進めました。具体的には、難易度を下げて基礎的な内容に重点を置いたことで、単位取得率はほかの科目と同程度まで改善しています。こうした取り組みの成果により、1年次で単位を落とす学生が減ったことで退学者も年々減少しています」
一部の数学の教員からは1~2年次に数学の基礎的なことができていないと、より専門的な応用を学ぶ3~4年次についていけないと指摘する人もいたそうだが、ここでドロップアウトさせてしまうことは決して学生のためにはならないというのが山本教授の考えだ。
「1~2年次のときは成績が下位層だった学生が、3~4年次になって専門分野への興味が深まり、もう一度数学を学び直して研究を深めていったケースも少なくありません。事実、ある大学では1~2年次の科目を学びやすいものにしたところ、3~4年次に下位層が伸びただけでなく1~2年次に上位層にいた学生の成績も伸びたそうです。つまり、上位層の学生は単位を取っていたものの、実はあまり理解が進んでいなかったということです。
本学でも1~2年次を緩やかにしてしっかり学べるようにしたことで、下位層も上位層も成績がよくなって退学者が減り、就職もずっといい状況が続いているので、学生全員のメリットにつながっています」
2020年12月から進めてきた教育DXが6年という年月をかけて着実に成果を出しつつあるなか、金沢工業大学は2026年に2月に国内大学としては9校目となるNVIDIAとの学術連携協定を締結した。情報理工学部長であり教育DX推進の中心的な役割を担ってきた山本教授は、今後の抱負について次のように語る。
「これからのフィジカルAI時代に必要とされる人材を育てていくためにも、NVIDIAのような世界的な企業との連携は心強いですね。2040年にはAIやロボット活用人材が約340万人不足するという経済産業省の推計が出され、文部科学省では今年2月に専門高校の機能強化や普通科の在り方の転換による高度専門職人材の育成などを柱とする『N-E.X.T.ハイスクール構想』のグランドデザインを示しました。こうした〝追い風〟をうまくつかまえて、より質の高い教育を提供できるように修学のプラットフォームを進化させていきたいと思います」
スマートフォンのセンサ、モーションキャプチャ(3次元動作計測装置)を用いて、身体動作を計測・推測。適切にファシリテーションを行うAIエージェントの開発などを行っている
※AldebaranのNAOを活用し、金沢工業大学・山本研究室が独自に実施しています
※AldebaranのNAOを活用し、金沢工業大学・山本研究室が独自に実施しています
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