フィジカルAIの最前線を
やさしく解き明かす一冊フィジカルAIの最前線を
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2026.7.17

『基盤モデルとロボットの融
合』
河原塚健人 松嶋達也/著
講談社 定価3,630円(税込)
合』
河原塚健人 松嶋達也/著
講談社 定価3,630円(税込)
推薦
SL
SL
出村 公成
(でむら こうせい)
金沢工業大学 情報理工学部
ロボティクス学科 教授
金沢工業大学 情報理工学部
ロボティクス学科 教授
講談社から2025年8月に刊行された本書は、近年急速に発展しているAIの新しいパラダイムであるフィジカルAIについて、AI・ロボット研究の歴史を俯瞰しつつ、その意義を明らかにし、背景から最新のモデルまでを紹介し、さらに今後の研究の方向性を示している。初学者にも理解できる形で丁寧に解説しているので、AIの教育・研究に力を入れている本学の全学生諸君にとって、自信をもってお勧めできる一冊である。
フィジカルAIの根幹にある考え方自体は新しいものではなく、1960年から80年代の記号処理に基づいた古典的AIが現実世界で使い物にならなかった反省から、1980年代以降、「身体と環境との相互作用から知能が生まれる」という身体性の考え方が提唱され、それに基づくロボット研究が注目された。さらに1990年代以降は、人間の発達過程に着目し、「身体・脳・環境の相互作用によって知能が形成される」という身体性知能の研究へと発展した。2010年代には深層学習のブレークスルーにより、AIは画像認識や自然言語処理において飛躍的な進展を遂げ人間と同等な能力を持つに至ったが、身体を持たない知能であり、その多くはサイバー空間に閉じた知能であった。2020年代になると、ChatGPTやGeminiに代表される大規模言語モデルが登場し、テキストに加えて画像、音声、動画など複数のモダリティを扱える基盤モデルに進化した。さらにフィジカルAIでは、入力がロボットのセンサ情報、出力がロボットのアクチュエータ制御情報へと拡張され、AIが身体を通して現実の物理世界(フィジカルワールド)に影響を与える段階にまで至っている。すなわちフィジカルAIとは、身体性に基づき人間のように環境と相互作用しながら知能を発揮するAI研究の最先端分野である。
本書の特色は、基盤モデル以前のロボット研究から現在のフィジカルAIに至るまでの流れを一貫して理解できる点にある。従来の深層学習などのAIではタスクごとに多くのデータを収集して学習する必要があったが、基盤モデルは事前学習により汎用的な知識を獲得しているため、追加学習なし、あるいは、少数データの追加学習でも多様なタスクに対応できる。本書は研究の潮流とパラダイムシフトを明確に示しており、読者は基盤モデルの意義を自然に理解できる。
また、2025年5月頃までに登場した多様な基盤モデルが網羅的に整理されている点も魅力である。大規模言語モデルや視覚言語モデルといった基盤モデルが、ロボットの知覚・判断・行動にどのように応用されるかが具体例とともに示されている。しかも数式を用いず平易に説明されているため、専門外の学生でも無理なく読み進めることができる。巻末に165件の参考文献が挙げられている点も、さらに学習を進めるうえで有益である。
一方で、本分野の進展は極めて速く、本書刊行後も新たなモデルや手法が次々に登場している。そのため読者自身が継続的に情報を更新する必要がある。最新のモデルを網羅した改定第2版の出版を期待したい。
なお、本年7月に韓国で開催されるRoboCup世界大会のRoboCup@Homeリーグでは、生活支援ロボットに要求される様々な能力に関する競技があり、洗濯物の取り出しや折り畳みといった、従来の手法では困難である非常に高度な能力が求められている。これらの課題に対し、多くのチームが基盤モデルの活用を進めると考えられる。さらに、RoboCupでは今後、競技に使用するロボットをヒューマノイドにする方針が示されており、フィジカルAIの実証実験の場としても熱い戦いが繰り広げられるであろう。本学では、情報理工学部ロボティクス学科筆者の研究室Happy Robotチームが世界大会の資格審査に合格し、フィジカルAIなどの最新技術をロボットに実装して大会に参加する予定である。夢考房では、筆者が指導責任者を務めるRoboCup@HomeプロジェクトがフィジカルAIに取り組む予定である。
以上より、本書は「AIに強い金沢工業大学」を実現するための教養書であるとともに、フィジカルAI研究への入門書として、全学生が読むべき必読書である。本書を手に取り、これから自分がAIにどのように関わるのか、AIが切り拓く未来を思い描いてみて欲しい。
フィジカルAIの根幹にある考え方自体は新しいものではなく、1960年から80年代の記号処理に基づいた古典的AIが現実世界で使い物にならなかった反省から、1980年代以降、「身体と環境との相互作用から知能が生まれる」という身体性の考え方が提唱され、それに基づくロボット研究が注目された。さらに1990年代以降は、人間の発達過程に着目し、「身体・脳・環境の相互作用によって知能が形成される」という身体性知能の研究へと発展した。2010年代には深層学習のブレークスルーにより、AIは画像認識や自然言語処理において飛躍的な進展を遂げ人間と同等な能力を持つに至ったが、身体を持たない知能であり、その多くはサイバー空間に閉じた知能であった。2020年代になると、ChatGPTやGeminiに代表される大規模言語モデルが登場し、テキストに加えて画像、音声、動画など複数のモダリティを扱える基盤モデルに進化した。さらにフィジカルAIでは、入力がロボットのセンサ情報、出力がロボットのアクチュエータ制御情報へと拡張され、AIが身体を通して現実の物理世界(フィジカルワールド)に影響を与える段階にまで至っている。すなわちフィジカルAIとは、身体性に基づき人間のように環境と相互作用しながら知能を発揮するAI研究の最先端分野である。
本書の特色は、基盤モデル以前のロボット研究から現在のフィジカルAIに至るまでの流れを一貫して理解できる点にある。従来の深層学習などのAIではタスクごとに多くのデータを収集して学習する必要があったが、基盤モデルは事前学習により汎用的な知識を獲得しているため、追加学習なし、あるいは、少数データの追加学習でも多様なタスクに対応できる。本書は研究の潮流とパラダイムシフトを明確に示しており、読者は基盤モデルの意義を自然に理解できる。
また、2025年5月頃までに登場した多様な基盤モデルが網羅的に整理されている点も魅力である。大規模言語モデルや視覚言語モデルといった基盤モデルが、ロボットの知覚・判断・行動にどのように応用されるかが具体例とともに示されている。しかも数式を用いず平易に説明されているため、専門外の学生でも無理なく読み進めることができる。巻末に165件の参考文献が挙げられている点も、さらに学習を進めるうえで有益である。
一方で、本分野の進展は極めて速く、本書刊行後も新たなモデルや手法が次々に登場している。そのため読者自身が継続的に情報を更新する必要がある。最新のモデルを網羅した改定第2版の出版を期待したい。
なお、本年7月に韓国で開催されるRoboCup世界大会のRoboCup@Homeリーグでは、生活支援ロボットに要求される様々な能力に関する競技があり、洗濯物の取り出しや折り畳みといった、従来の手法では困難である非常に高度な能力が求められている。これらの課題に対し、多くのチームが基盤モデルの活用を進めると考えられる。さらに、RoboCupでは今後、競技に使用するロボットをヒューマノイドにする方針が示されており、フィジカルAIの実証実験の場としても熱い戦いが繰り広げられるであろう。本学では、情報理工学部ロボティクス学科筆者の研究室Happy Robotチームが世界大会の資格審査に合格し、フィジカルAIなどの最新技術をロボットに実装して大会に参加する予定である。夢考房では、筆者が指導責任者を務めるRoboCup@HomeプロジェクトがフィジカルAIに取り組む予定である。
以上より、本書は「AIに強い金沢工業大学」を実現するための教養書であるとともに、フィジカルAI研究への入門書として、全学生が読むべき必読書である。本書を手に取り、これから自分がAIにどのように関わるのか、AIが切り拓く未来を思い描いてみて欲しい。

推薦
SL
金沢工業大学 SL
情報理工学部
ロボティクス学科 教授
出村 公成 (でむら こうせい) 博士(工学)

推薦
SL
出村 公成SL
(でむら こうせい) 博士(工学)
金沢工業大学
情報理工学部
ロボティクス学科 教授
防衛大学校理工学部電気工学科卒業。慶應義塾大学大学院理工学研究科計算機科学専攻後期博士課程修了後、1997年金沢工業大学講師。助教授を経て、2007年金沢工業大学教授。専門は生活支援ロボット、フューチャーコンビニエンスストアチャレンジ、RoboCup、ロボティクス。
「KIT Book Review」では、金沢工業大学ライブラリーセンターのサブジェクト・ライブラリアン(SL)が本を推薦します。SLは、ライブラリーセンターにおいて膨大な専門情報の内容や質を選択判断し、その収集や利用を立案実行する中枢機能です。本学の教授陣によって構成されており、自己の専門分野はもちろん、関連分野まで質の高い最新情報を把握しています。
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