工学部 先進機械システム工学科
加藤秀治 研究室
人工心臓部品などの小型化を実現するヒトと環境に優しい微細加工技術と難削材の新規高能率加工技術の開発
携帯電話などの機器は小型化と高性能化が同時に進められている.そのため,部品加工には微細加工技術だけでなく部品材料の難削化に伴う高精度・高能率加工が不可欠である.医療分野でも人工関節部品や人工心臓部品など部品には高い精度が要求されます.研究室では,高速かつ高精度で部品供給を可能とする加工技術の構築をめざし,工具材料の開発や加工法の開発を実践し,これらを用いた新しい加工技術の研究を推進しています.
キーワード
- 切削加工
- 高能率・高精度加工
- 新素材工具
- 微細加工技術
- 医療用インプラント
ニュース&トピックス
- 2023.10.24「物語の始まりへ」に成木忠明さんが紹介されました
- 2023.08.18「物語の始まりへ」に上田菜緒さんが紹介されました
- 2022.03.25中沢留偉さんが「日本機械学会 北陸信越支部 2022年合同講演会」で学生賞を受賞
- 2022.01.02「物語の始まりへ」に吉川平良さんが紹介されました
- 2021.09.08「物語の始まりへ」に鈴木健一さんが紹介されました
- 2020.06.29「物語の始まりへ」に吉田圭織さんが紹介されました
- 2020.05.25「物語の始まりへ」に瀧本桃子さんが紹介されました
- 2019.03.04「物語の始まりへ」に中村風人さんが紹介されました
- 2018.07.11渡邉賢太郎さんが精密工学会ベストプレゼンテーション賞を受賞
- 2018.05.15伊勢田将嗣さんと坪口凌吾さんが日本機械学会北陸信越支部賞学生賞を受賞
研究紹介
難削材の高精度・高能率加工に関する研究
研究内容
人工関節や人工歯根などのインプラント材料には細胞毒性の少ないチタニウム合金が使用されるが、これらの材料は縦弾性係数が骨と大きく違うため弾性率が人骨(20-40GPa)に比べ 100GPa 程度と高く、応力遮蔽に起因する破骨細胞の作用によってインプラント周囲の骨吸収が生じる問題がある。の成形加工を目指しており、これには人骨に近い低弾性率(約 60GPa)や低熱膨張率を有す超弾塑性型ベータチタニウム合金やニオブチタン合金などの低ヤング率を有する合金素材が有効と考えられる。しかしながら、熱伝導率が低いことや著しい溶着性を示すことから加工が極めて難しく、インプラント部品の成形に支障をきたしている。本研究ではこれらの難加工材料の高能率加工を実現することを目的としている。
超硬合金材料を対象とした高精度・高能率磨き加工法の開発
研究内容
超硬合金工具を用いてポリベンズイミダゾール材料の高速加工を行った場合に工具が急速摩耗することに着目し、逆転の発想でポリベンズイミダゾール材料を研磨工具として超硬合金材料の高精度・高能率表面仕上げ法の可能性を検討してきた。ポリベンズイミダゾール材料と超硬合金材料を17m/s 以上の条件で高速摺動させることにより、超硬合金材料の高精度・高能率表面仕上げが可能である(図1 参照)。また、この特異な現象はポリベンズイミダゾール材料の分子構造の一部が切れ、数十ナノオーダーの微細な摩耗粉が生じることと、分子構造の一部が切れた際に摩耗粉が活性状態になることと、高速摺動による発熱に伴う化学的な作用が付加され高能率な研磨が実現されている。今後はポリベンズイミダゾール材料を用いた超硬合金金型の研磨条件の最適化と応用(図2 参照)を目指している。
新規加工法の開発
研究内容
焼入れ鋼は耐摩耗性に優れていることから,金属同士の摩擦や繰り返し荷重が加わる自動車用エンジン部品などに使用されている.焼入れ鋼の仕上げ加工はcBN焼結体工具やTiAlN被膜工具などの耐摩耗性に優れた工具材料の開発により,汎用性の高い切削加工に代替されてきているが,十分な高能率化は実現できていない.本研究では,(Ti, Al)N/(Ti, Si)N被膜工具を用いてたロータリー工具を用いて駆動型ロータリ加工を行い,送り量を増加させることにより3-5倍の高能率加工を可能としてきた.
高能率加工を可能とする切削環境の最適化
研究内容
難削材の加工においては切削温度の上昇や溶着性が工具寿命に直接的に影響を及ぼす場合が多くみられる。また、資源保護の観点や廃液処理に起因する環境問題の解決のため,加工のドライ化や二アドライ化が進みつつある.中でも,極微量切削液供給(MQL加工)が汎用性の高い二アドライ加工として普及している.MQL加工では,油剤に含まれるエステルが金属新生面に吸着し潤滑作用のある吸着膜を生成するため工具と切りくず間の凝着の改善が期待できることや,加工点にマイクロドライアイスパウダーを供給する加工方法(DIPS加工)が冷却効果やドライアイスが昇華した際の二酸化炭素による工具の酸化抑制に効果があることが報告されている.本研究では切削環境をコントロールすることにより難削材の高能率加工の実現を試みる.
教員紹介
加藤秀治 教授・博士(工学)
略歴
専門分野
専門:難削材加工、みがき加工、微細加工、高速・高精度加工、切削加工
学生へのメッセージ
本学機械工学科の20期生。大学時代に自動車競技を始め、整備を行う中でエンジンの構成部品がどのように製作され、高い精度を得ているのか興味を抱くようになりました。そのころから、真面目に機械技術者を意識するようになり、現在ではものづくりの根幹を担う加工技術のイノベーションを夢見て研究活動を行っています。趣味は筋トレと自転車(ロードバイク)に乗ることで体形がこれ以上大きくならないようにすることと、念願かなって入手した愛車で直列6気筒のエンジンの音色を楽しみながらのドライブです。また、将来はヨーロッパサッカー観戦ツアーを慣行したいと夢見ています。新たな加工技術の構築は簡単ではありませんが、あきらめないでやりきることを己に言い聞かせ活動しています。若い学生の皆さんと一緒にワクワクしながら新たな取り組みに挑戦していきたいと考えています。
担当科目
機械工学入門 機械工作法 工業概論 機械加工学 プロジェクトデザインⅢ(加藤秀治研究室) 修学基礎B プロジェクトデザイン実践(実験)(機械工学科) 機械工学専門実験・演習B 専門ゼミ(機械工学科) 生産システム工学研究(加藤秀治) 先端切削加工学特論 ファインセラミックス特論 生産システム工学特論
研究業績
論文
- Effect of Different Feed Rates on Chip Evacuation in Drilling of Lead-Free Brass with a Small-Diameter Drill
- Milling of TiB2 Particle Reinforced High-Modulus Steel
- 焼入れ鋼を対象とした駆動型ロータリ加工の高能率化に関する研究(高速条件下におけるAl含有量と切削環境の違いが工具寿命に及ぼす影響)
- High-efficiency machining of titanium alloy using combined machining method of driven rotary tool and hale machining
- High-efficiency machining of titanium alloy using combined machining method of driven rotary tool and hale cutting
- Effect of Al content of TiAlN coating on cutting performance in driven rotary cutting of hardened steel
- C6932の細穴ドリル切削に及ぼす焼鈍の影響
- Cutting performance of coated cemented carbide tool in driven rotary cutting of hardened steel
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