工学部 機械工学科
田中基嗣 研究室
TANAKA Mototsugu
LABORATORY
自由な発想と折れないチャレンジ精神で複合材料の信頼性向上・新機能創製と生体組織・細胞の力学を探究する

「壊れにくい」「地球環境にやさしい」「再生医療に使える」「自分で治る」など、複合材料システムにおける高信頼性の確保と新機能の創製をめざすとともに、複合材料構造を高強度に一体成形する新しい技術の確立に挑む。また、力学的な観点から生体組織・細胞の機能発現メカニズムを学び、生体組織・細胞機能を複合材料に還元する研究をすすめている。
キーワード
- 複合材料
- 材料機能創製
- 計算力学
- バイオマテリアル
- バイオメカニクス
ニュース&トピックス
NEWS & TOPICS
- 2025.01.20機械工学科・田中基嗣教授へのインタビューがWEBサイト「学びの地図」に掲載
- 2023.05.09清水大稀さんが日本材料学会北陸信越支部支部奨学賞を受賞
- 2018.07.31「物語の始まりへ」に大橋成規さんが紹介されました
- 2018.05.15桶潤一郎さんが平成29年度日本材料学会支部奨学賞を受賞
研究紹介
RESEARCH
先進複合材料の構造信頼性評価
研究内容
自動車・航空機・宇宙機器構造へのCFRPの適用に必要となる構造信頼性の観点から、各種材料試験のノウハウを有している。引張・圧縮・3点曲げ・4点曲げ試験、有孔試験片を用いた引張および圧縮の静的試験および疲労試験、面外衝撃付与に対する損傷許容性評価、温度環境下(高温・低温)や吸水試験片の疲労試験、初期損傷発生時の寸止め試験、層間破壊じん性試験時のその場観察など、非常に重要な評価項目でありながらも難易度の高い試験や特殊な工夫の付与が必要な試験を実施することができる.このように、種々のCFRP積層板の構造信頼性評価と破壊プロセス・メカニズムの解明に取り組んでおり、以上により構築されるデータベースをフィードバックすることにより、CFRP積層板の損傷許容性・構造信頼性の予測・設計を可能とすることを目指している。
新しい複合材料構造の成形方法の構築

研究内容
複合材料のメリットのひとつは、複雑な構造を一体成形できる点である。大型CFRP構造物の一体成形に向いている真空補助樹脂含浸(VaRTM)法を適用することを念頭に置いているが、成形後のCFRPの収縮にともなって型が抜けなくなることを防ぐために、ロストコア成形法を併用することを検討している。この際に、成形物の構造健全性・表面性状・寸法精度などを一定水準以上に保つために必要なスキル・ノウハウの構築を目指している。特に、次世代超音速旅客機主翼に特徴的な隣接する多数の空洞部と多数の角部を持つ構造物を一体成形する技術を確立することを目指して、混入した気泡を超音波付与により効率的に破泡する技術の構築に取り組んでいる。
また、主に熱可塑性樹脂を用いたCFRPの3Dプリンティングに対する期待・関心が、自動車・航空宇宙産業においても急速に高まっている。コストのかかる金型や治具などを必要とせずに既存技術では成形が難しい複雑な3次元形状を容易に造形できる点が、大きなメリットである。しかし、現状のCFRPの3Dプリンティングは熱溶解積層(FDM)造形が主流であり、特に短繊維を用いた場合にフィラメント間の接着強度が最終的に課題になることが考えられる。すでに射出されたフィラメントとこれから射出されるフィラメントの間の温度差を小さくすることでフィラメント間接着強度を向上させることができると考えられ、ホットベッドおよびペンシル型ヒーターを用いた加熱を組み合わせて最適な方法を構築することを目指している。
微視構造制御による先進複合材料の高性能化と新機能付与

研究内容
複合材料においては、素材の組み合わせやその組み合わせ方を工夫することにより、素材単体では持ち得なかった機能を付与することが可能である。例えば、光ファイバでは、クラッド材に比べてコア材の屈折率を高く設計することで全反射を生じさせ、光をコア材内部に閉じ込めている。我々は、微視構造を最適に設計することで、従来には無かった新しい機能を持った複合材料を創製することを目指している。我々の研究室で開発に取り組んでいる新しい機能を持った複合材料のひとつは、「繰返し自己修復可能な複合材料」である。現在、自己修復可能な材料の創製は、世界中で取り組まれている最先端の材料開発のひとつである。特に、マイクロカプセルや中空繊維の内部に修復材を注入しておき、これらをあらかじめ材料内に配しておくことで、材料の損傷時にこれを自動的に感知し修復できる材料システムを開発する取組みが盛んになされている。我々は、マイクロカプセルに着目し、応力によって適切に開閉する「応力開閉型マイクロチャネル」を付与することにより、繰返し修復材を漏出できる材料システムの創製に取組んでいる。
また、材料の寿命後の廃棄問題が深刻化しつつある。特に、炭素繊維強化プラスチックス(CFRP)の母材として現在主に使用されているエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂は、再利用できない上に燃やすと有害なガスを発生することがあるため、使用後は埋立により廃棄するしかない。しかし、今後より広い分野にCFRPが適用されることを考慮すると、地球環境改善の観点から、廃棄問題の解決が期待される。その解決方法のひとつとして、ケナフ繊維などの天然繊維でポリ乳酸などの生分解性樹脂(加水分解と酵素分解により水と二酸化炭素にまで分解される樹脂のこと)を強化した「グリーンコンポジット」の開発・改良がおこなわれている。我々は、この分野におけるもっとも重要な課題である「加水分解制御機能」の創製に取組んでいる。つまり、使用時は加水分解を抑制し廃棄時に加水分解を促進することができる「地球環境に優しい方法」の創製を目指している。具体的には、生分解性樹脂の代表格であるポリ乳酸の末端カルボキシル基に、弱い紫外線照射により脱保護できる光解離性保護基を導入することで、「加水分解制御機能」を実現可能であることをこれまでに示し、その効率の最適化に取組んでいるところである。
高性能な骨再生医療用複合材料の創製

研究内容
骨腫瘍や事故にともなう骨欠損に対する現在の主要な治療法は、生体親和性材料(チタン合金など)を骨の代替物として欠損部に埋殖することである。将来的には、人工骨として骨の機能を代替するだけでなく、骨芽細胞(骨をつくる細胞)の活動の「足場」となってその周囲に新しい骨組織を再生させ、なおかつ最適な速度で自分自身が生体内に吸収されて消失する機能を持たせることができれば、骨組織自体を再生させる治療が可能となると期待されている。そのための有力な候補のひとつが、骨組織の主成分のひとつであるハイドロキシアパタイト(HAp)粒子と生体吸収性材料であるポリ乳酸(PLA)からなる複合材料である。我々は、HAp/PLAの界面における接着状態を、生体に優しい方法で飛躍的に改善する方法(「ハイブリッド界面制御法」)を提案している。この手法がHAp/PLA複合材料の破壊特性や加水分解特性に及ぼす影響の評価とそのメカニズムの解明に取組むだけでなく、初期力学特性と加水分解特性を高度に両立する最適な制御状態の探索とそれにともなう新しい機能発現の可能性の探求にも取組んでいる。
さらに将来的には、骨欠損部にもともと存在していた骨組織を人工的につくりだし、これを「骨カートリッジ」として欠損部にそのまま埋殖することができれば、治療に要する期間を飛躍的に短縮することが可能となると期待される。そこで我々は、実際の骨組織の微視構造に着目した。骨は、コラーゲン線維にハイドロキシアパタイト粒子が複合化された複合材料様単位構造からなり、これが複雑に階層化された構造を持っている。我々の研究室では、コラーゲン線維合成→ハイドロキシアパタイトとの複合化→単位構造の階層化というボトムアップ式のアプローチに基づいて、試行錯誤的探索と微小力学試験により骨組織の微視構造を再現する試みをおこなっている。
生体組織・細胞におけるバイオメカニクスの解明

研究内容
人工材料を生体内で用いる場合には、その周囲の細胞がどのように反応するか、それはなぜか,といったことを正しく・深く理解し、生体に対する悪影響を極限までなくさなければならない。逆に、人工材料に対する細胞挙動とそのメカニズムを明らかにすることができれば、人工材料の構造・特性を制御することによって、その周囲の細胞の活動をコントロールすることができるようになるかもしれない。たとえば、ポリ乳酸を母材として用いた骨再生医療用足場材料においては、その力学特性を改善する必要があるだけでなく、生体内で吸収される速度が遅いことも大きな課題のひとつである。このため、破骨細胞(骨をとかす細胞)の助けを適切に得ることができれば、生体吸収速度を改善することが可能となると期待されるが、破骨細胞がポリ乳酸をとかすことができないことがすでに明らかとなっている。そこで、母材をポリカプロラクトンなどに変え、足場上での骨芽細胞の骨形成活動と足場をとかす破骨細胞の活動を両立させ、そのうえで骨形成完了後には破骨細胞の活動を停止させるような制御が可能かどうか、トライしている。現在は、足場材料の剛性を変化させたときに破骨細胞の挙動がどのように変化するか、そのメカニズムはどのようになっているか、といったことを検討しながら,破骨細胞の挙動を制御し得る傾斜機能を持った基質の創製と有効性の検討をおこなっているところである。
このように、我々の専門である「機械工学」は、さまざまな病気の治療を支援し、その効率・速度・精度を飛躍的に向上させることに寄与することが可能であると考えられる。たとえば、10万人に1人くらいの割合で発生すると言われている「頭蓋骨早期癒合症」(本来脳組織の成長が落ち着くまで癒合すべきではない頭蓋骨縫合が早期に癒合することにより、脳組織の成長を妨げてしまう病気)においては、頭蓋骨のどの部分に外科的な処置を施せば良いか、成長にともなって組織が大きくなることまで考慮して予測することができれば、きわめて効率の良い治療が可能になると考えられる。そのために、我々の研究室では、有限要素法を駆使して拘束を受けた脳組織の応力分布が成長にともなってどのように変化するかシミュレートする方法の構築に取組んでいる。
教員紹介
TEACHERS

田中基嗣 教授・博士(工学)
略歴
専門分野
専門:バイオミメティクス、計算力学、材料力学、バイオマテリアル、バイオメカニクス、複合材料
学生へのメッセージ
F1エンジニアに憧れたのが、機械工学を専攻したきっかけです。その後、研究室に所属して研究活動を開始するときに、2種類以上の素材を組み合わせて新しい特性をもった材料を産み出す「複合材料」に興味を持ちました。ですので、もともとは、先進複合材料のミクロな破壊メカニズムの実験的・解析的研究が専門でした。金沢工業大学にやってきてからは、細胞・生体組織のバイオメカニクスにも本格的に取り組みはじめ、複合材料分野とバイオマテリアル・バイオメカニクス分野の知見を融合することにより、新しい学問体系を構築することを目指して研究活動を続けています。具体的には、丈夫で長持ちするだけでなく廃棄時にはすみやかに分解吸収される機能をもった地球環境に優しい複合材料の創製、骨欠損部機能を高度に代替するだけでなく骨形成速度に応じて体内で安全に分解吸収される骨再生医療用複合材料の創製、繰返し完全に自己修復可能な複合材料の創製、大型で複雑な複合材料構造を一体成型できる成形技術の確立、骨組織そのものを人工的に創り出す技術の構築、などに取り組んでいます。また、これまでの複合材料研究の経験を活かして、様々なナショナルプロジェクトに参加して、日本における複合材料の発展と実用化に寄与することに取り組んでいます。本質を捉えた研究テーマの設定と、誰にも真似できないアプローチを通して、みなさんと一緒に地球と人類の存続に貢献したいと考えていますので、興味のある人・熱意のある人は是非コンタクトしてください。
担当科目
工業力学Ⅰ 材料力学Ⅰ 3Dシミュレーション プロジェクトデザインⅢ(田中基嗣研究室) 工業力学Ⅱ 材料力学Ⅱ 革新的高信頼複合材料・構造システム基盤研究(田中基嗣) 複合材料評価技術 高信頼ものづくり専攻統合特論 複合材料工学特論 分子シミュレーション
研究業績
RESEARCH RESULTS
論文
- Influence of Fiber Orientation on Failure of Welded Single-lap Joint with Welding Technology of Thermoset FRP
- CF/PP複合材料の繊維直角方向引張強度に及ぼす大気圧プラズマ処理条件の影響
- 電気泳動により形成したHAp/コラーゲン複合線維束の引張強度に及ぼす泳動電流の影響
- Trial to Control Osteoclastic Metabolic Behavior Using Biodegradable Functional Gradient Substrates
- 高信頼・高機能な複合材料構造を実現する材料・成形加工技術の最前線 (D-101~D-108, D-201~D-217)
- Influence of Surface Modification Ratio on Tensile Strength of Hybrid-interface-controlled HAp/PLA Composite Materials
- Influence of Coating with Adhesive Protein on Tensile Strength of HAp/collagen Composite Fibers
- Influence of Alternate Dipping Condition on Tensile Strength of HAp/collagen Composite Fibers
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