ロボコンの世界大会「ABUロボコン」(ABUアジア・太平洋ロボットコンテスト)は2002年に第1回大会が東京で開催されました。NHK大学ロボコンは2002年以降、「NHK大学ロボコン~ABUアジア・太平洋ロボコン代表選考会~」として実施されています。
「NHK大学ロボコン2013~ABUアジア・太平洋ロボコン代表選考会~」は2013年6月9日(日)に国立オリンピック記念青少年総合センター大体育室で開催されました。
今大会の競技名は「THE GREEN PLANET」。参加チームは、手動ロボット、自動ロボットの計2台のロボットを作成し、地球が描かれたフィールドを進みます。フィールド奥には月に見立てた台が設けられています。2台のロボットが地球を緑の「木の葉」で埋めた後、自作の「苗木」を約4m先の月に向かって飛ばし、見事着地させれば「グリーンプラネット」達成となり勝利します。競技時間は3分間。赤チームと、青チームの対戦形式で行なわれます。
優勝カップを手にして世界大会へと挑む
全国の大学から応募があった46チームのうち、事前審査を通過した21チームが出場しました。
金沢工業大学は全試合で「グリーンプラネット」を達成し優勝しました。
金沢工業大学は予選リーグ1位で決勝トーナメントに進出し、準々決勝では名古屋工業大学、準決勝は電気通信大学に勝利し、決勝に駒を進めました。
決勝は、金沢工業大学 対 東京大学という昨年と同じ顔合わせとなり、金沢工業大学は37秒という今大会最速タイムで東京大学を破り、雪辱を果たしました。両チームともミスのない、ベストタイム。近年まれにみる名勝負となりました。
金沢工業大学はNHK大学ロボコンにおいて2002年の準優勝以降、決勝戦へ進出した割合は5割を超え、今回の優勝は3年ぶり3回目。金沢工業大学の日本代表選出・ABUロボコン出場は5回目で、日本の大学では最多となります。
「ABUロボコン2013」は8月18日(日)にベトナム中部のダナン市にあるTIEN SON SPORTS COMPLEXで開催され、18の国・地域から集まった19チームが熱戦を繰り広げました。
【「ABUロボコン2013」出場国・地域】
ブルネイ、エジプト、フィジー、香港、インド、インドネシア、イラン、日本、カザフスタン、韓国、マレーシア、モンゴル、ネパール、パキスタン、ロシア、スリランカ、タイ、ベトナム(開催国のベトナムからは2チーム)
今回のベトナム大会では競技コートや「木の葉」の材質が日本と異なり、苦戦しました。
特に競技コートと「木の葉」の摩擦は思いのほか大きかったため、自動ロボットが「木の葉」を滑らせながら瞬時に掴んでいく戦法が通用せず、絶体絶命の窮地に立たされました。
しかし夢考房チームは諦めず、残されたわずかな時間での問題解決に全力を尽くしました。
苦戦しながらも念願の初優勝を獲得。カップを手にして喜び合う選手達。
[予選リーグ]
金沢工業大学はシード校(シード校は7チーム)に選ばれ、予選リーグGグループでカザフスタン、ブルネイと対戦しました。
この時点で自動ロボットが「木の葉」を掴むことができない問題は解決していましたが、コートの材質が日本と異なることから自動ロボットの車輪が滑り、車輪の回転数から正確な距離を計測することができず、予選リーグでは2試合とも「木の葉」を置く位置がわずかにずれ、リトライを余儀なくされました。
それでもカザフスタン戦では119秒で「グリーンプラネット」を達成し勝利しましたが、ブルネイ戦では試合直前に行なったテスト走行で自動ロボットの苗木反転用モータの破損というトラブルも加わり、「グリーンプラネット」は達成できず、30点差で辛くも勝利。決勝トーナメント進出は予選順位5位と苦戦を強いられました。
[決勝トーナメント]
決勝トーナメントはべトナムB(予選順位1位)、インドネシア(同2位)、ベトナムA(同3位)、香港(同4位)、日本(同5位)、フィジー(同6位)、ロシア(同7位)、エジプト(ワイルドカード)の8チームのトーナメント方式で行なわれました。
[準々決勝]
金沢工業大学は香港との対戦となりました。自動ロボットが「木の葉」を置く位置がずれる問題はミリ単位で分析を行い改良に取り組んだ結果、この時点では解決していました。
ところが決勝トーナメント直前に行なったテスト走行で今度は手動ロボットが破損しました。準々決勝試合開始までの僅かな時間でメンバーはパーツを作って修理。香港には54秒で「グリーンプラネット」を達成し勝利しましたが、手動ロボットは試合の最中に又もや破損してしまいました。
[準決勝]
予選順位1位の強豪ベトナムBとの対戦となりました。
準々決勝の際に破損した手動ロボットの修理が間に合わず、“当て木”による応急処置で試合に臨みました。
そして48秒で見事「グリーンプラネット」を達成してベトナムBに勝利しました。
[決勝]
手動ロボットの破損箇所を予備パーツに交換してベトナムAとの決勝に臨みました。
金沢工業大学は51秒で「グリーンプラネット」を達成。念願の初優勝を果たしました。
夢考房チームは昨年10月からロボットの製作をスタートさせていました。
前年度のNHK大学ロボコン2012決勝で東京大学に敗れた反省から、夢考房チームは2013年大会優勝を目標に定め、高い数値目標を設定してチーム全体の活動目標として掲げることにしました。
そしてフィールドの走行距離とロボットの加速度から「グリーンプラネット」達成の計算上の目標値を21秒とし、その目標実現に向けて活動に取り組みました。
その結果、夢考房チームはNHK大学ロボコン直前の練習で30秒台をコンスタントに出せるまでチームスキルを高め、決勝では37秒という今大会国内最速タイムで東京大学に勝利し優勝しました。
夢考房チームはNHK大学ロボコン優勝・日本代表選出後もロボットの改良を進め、7月下旬にベトナムにむけてロボットを搬送する直前までに、自らが達成した今大会国内最速タイムの37秒から、さらに平均で7秒、最速では10秒も短縮しました。
ベトナムではさまざまなトラブルが立て続き、一時は予選敗退も覚悟するほどの苦戦を強いられましたが、夢考房チームは、メンバー全員で問題発見・解決に取り組み、ロボコン世界一の座を自らの力でつかみ取りました。
代表メンバーインタビュー
[北國アクタス
2013年12月号掲載]